ラベル ADPKD の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ADPKD の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2020/07/20

ADPKDに対する尿路結石、トルバプタン使用でどうなるのか?

今回、この話題に触れるのはあまり自分が考えたことがなかったためである。
まず、一般的にADPKDと結石に関して取り上げてみる。
・ADPKDにおける結石の割合:10-36%程度と言われる(Urol Ann 2012

・結石の成分:尿酸結石(40-60%)かシュウ酸カルシウム結石が多い(AJKD 1988)これは、一般の尿路結石に比べて明らかに尿酸結石の割合が高い。

・ADPKDにおける結石を有している場合の特徴:嚢胞が大きく、全腎容積量が非常に大きい。加えて、低クエン酸尿、高シュウ酸尿、高尿酸尿、アンモニア排泄が低く尿中pHが低いという特徴がある(CJASN 2009

このようにADPKDでは結石症は合併しやすいことがわかる。

我々は、ADPKDの治療にトルバプタンを選択する場合がある。このトルバプタンを使用することで尿路結石はどうなるのであろうか?増えるのか、減るのか?

今回、これを見た研究がCJASN 2020で出ている。
今回の研究では18歳以上でRavine criteria(LANCET 2014)でADPKDと診断された125人の患者を対象にしている。
治療投与前のベースラインと年のフォローアップの際に24時間蓄尿検査を行っている。
125人の患者で38人がトルバプタン治療・87人が非トルバプタン治療群であった。

トルバプタン治療群では、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸の尿中排泄量が減少し、尿中クエン酸や尿中カルシウム排泄量が増加した。
CJASN 2020より引用

また、尿中の酸排泄も低下し消化管からのアルカリ再吸収が増加した。
CJASN 2020より引用
ちなみに一般論として、尿路結石の予防としては、下記のものがある。
・水分を十分に摂る(1日尿量を2L以上にすることで結石再発リスクを減少できる)

・カルシウムを摂る(カルシウムは腸管内でシュウ酸と結合して便に排泄させ、尿中シュウ酸を減少)

・クエン酸を摂る(シュウ酸とカルシウム、リン酸とカルシウムが結合するのを抑制、また尿中pHを上昇させ酸性尿を是正させ尿酸結石、シスチン結石の予防に有効)

・シュウ酸摂取量を抑える(ほうれん草、キャベツ、ブロッコリー、竹の子、バナナ、玉露や抹茶や煎茶などのお茶、ココア、チョコレート、コーヒー、紅茶などを控える)

・ブリン体の多く含まれる食品や飲料を控える(プリン体は体内で代謝され尿酸となり、過剰摂取で高尿酸血症や酸性尿を引き起こす。)

・動物性のタンパクや脂肪の摂取を控える。(動物性タンパク質が多くなると尿中尿酸が多くなる、動物性脂肪が多いと腸内脂肪酸が増えてカルシウムと結合し、シュウ酸がカルシウムと結合困難になり、尿中にシュウ酸が多くなり結石ができやすくなる)



今回の論文結果からは、ADPKDに対してトルバプタンを使用することで結石の発祥というリスクを減らすことが示された。
個人的にはトルバプタンをあまりこの視点から見ていなかったので非常に参考になった。


2020/07/07

ADPKDと胆道系疾患

 ADPKDで血液透析を受ける患者さんが発熱したら、筆者は恥ずかしながら「1にのう胞感染、2にのう胞感染、3・4がなくて、5にのう胞感染」と思っていた。腎臓専門医試験のために提出する『先天性腎疾患』症例サマリも、のう胞感染にしたほどだ。

 しかし、当然ながら発熱を起こしうる原因疾患は他にもあり、なかでも胆道系感染や膵炎は、ADPKDが固有のリスク因子であることを覚えておかなければならない。根拠となる疫学スタディを二つあげると:

1. 1998年から2012年までの英国England Hospital Episode Statisticsデータから、PKD患者23454人と対照患者6412754人を抽出(うち末期腎不全患者は5813、62519人)したところ、胆道系疾患入院のリスクは以下のようであった(JASN 2017 28 2738;末期腎不全群は患者数が少ないことによる統計学的パワー不足もあるだろう)。

全患者 2.24(95%CI 2.05-2.20)
 男性 2.82(2.67-2.98)
 女性 1.85(1.75-1.95)
 40歳未満 1.82(1.62-2.03)
 40-60歳 2.04(1.90-2.18)
 60歳以上 2.50(2.16-2.33)
末期腎不全患者 1.19(1.08-1.31)
 男性 1.12(0.98-1.29)
 女性 1.26(1.11-1.44)
 40歳未満 1.35(0.95-1.92)
 40-60歳 1.04(0.90-1.20)
 60歳以上 1.36(1.18-1.55)

2. 2000年から2010年までの台湾健康保険データから、PKDコホート6031人と非PKDコホート23976人を抽出(約30%が血液透析患者)したところ、肝・胆・膵疾患入院の調整後サブハザード比が以下のように有意に高かった(Oncotarget 2017 8 80971)。

急性膵炎 2.36(95%CI 1.95-2.84)
胆管炎 2.41(1.93-3.01)
消化性潰瘍 2.41(2.17-2.67)
肝硬変 1.39(1.16-1.66)

 のう胞腎と胆道系疾患といえば、まず思い出すのはARPKDだろう(非閉塞の管内胆管拡張、Caroli病とも)。しかしADPKDでも腎外症状のひとつとして、大腸憩室などとともに胆道系疾患を想起しなければならないと痛感した。

 なお、1つ目の文献はオクスフォード大学の腎臓ユニットが「1967年から2015年まで1011人のADPKD患者さんを診てきたが、どう考えても胆道系疾患が多い!」と気づき、それを検証したものだ。ベッドサイドの経験を検証する方法として、ビッグデータの役割は今後ますます増えるだろう。





2019/05/26

APSN/KSN CME 2019 2/2


5. 膜性腎症アップデート2019


 スライドのタイトルは"bane of nephrologists"、「ベイン」とはジレンマや悩みを意味する(破滅という意味もあるそうだが)。確かに診断、治療ともに「こうすればいい」と決まっていない部分が多いので、悩ましいのが膜性腎症だ。

 まず診断では、抗PLA2R抗体と抗THSD7A抗体があれば腎生検しなくてもよいのかという悩みが(検査できる地域では)ある。実際、血中の抗PLA2R抗体陽性なら腎生検もせず、悪性腫瘍検索も年齢相応でよいというアルゴリズムも提案されている(JASN 2017 28 421、図)。




 メタアナリシスは抗PLA抗体陽性が原発性膜性腎症の感度75%、特異度99%という(Plos One 2014 9 e104936)。しかし、既存データにセレクションバイアスが多く、鵜呑みには出来ないのが現状だ。

 治療のジレンマも「治療(免疫抑制)するか、しないか」「何で免疫抑制するか」「再発したらどうするか」など数多い。

 膜性腎症はよく「1/3病(自然寛解、不変、進行が同程度)」と呼ばれ、進行リスクの層別化が鍵になる(Nat Rev Nephrol 2013 9 443)。しかし、たとえ進行高リスクでも、高齢で悪性腫瘍による可能性を否定できない場合は免疫抑制のリスク(易感染性や腫瘍増殖)も考慮しなければならない。

 免疫抑制の種類は、ポンティチェリ・レジメンは隔世の感で、世界的にはCNI(ポンティチェリと比較されているのはタクロリムス、Nephrology 2016 21 139)、RTX(シクロスポリンと比較したMENTORトライアルが進行中;2017年のASNではRTXの優位性を示す中間報告がなされた)のどちらかを選択する施設が多いようだ。
 
 そして再発については、再発時に何を選択するかの道しるべはないが、再発リスクの評価には抗PLA2R抗体価の推移(陽性例にかぎられるが)が有効なようだ(抗体価がさがっていると再発しにくいデータはKI 2013 83 940、さがっていないと再発しやすいデータはCJASN 2011 6 1285)。


6. CKDのPEW


 世界中で蔓延しており、20-50%とも言われる。血液検査でBMIが25を切ると死亡率と負の相関がある(Mayo Clin Proc 2013 88 479)というのは、いわゆる「肥満パラドクス」を裏付けるものであるが、ではどうすればよいか、答えは出ていない。

 食事ではタンパクをとってリンを取らない工夫をする(ケト酸の使用も考慮)、運動は機能とQOLを上げるが大規模で死亡率低下を示したデータまではない、薬物療法もミオスタチン阻害薬(FASEB J 2011 25 1653)は実験段階、同化ステロイドは機能向上にはつながらず心血管系リスク上昇が懸念され、食欲刺激薬(megastrol、dronabinol、cyproheptadine、melatonin、ghrelinなど)も効果はさまざまだ。

 尿毒素を除けば食欲が改善するのでは?と期待したいが、まだ確実な方法がない(こちらも参照)。


7. HD中の低血圧予防についての進歩


 このトークも前項とおなじで、とてもコモンな問題だが"one fits all solution"はない(写真)。定義が単なる血圧低下(収縮期20mmHg以上)ではなく「症状があり何らかの看護介入を必要とするもの」なことは知っておいてよいかもしれない。




8. ADPKDに対する新規治療


 新規治療といいつつも、お話はトルバプタンだった。ADPKD患者の割合は日本なら新規透析患者全体の2%程度で一定しているが、「それは数としては年々増えているということだ」という指摘にハッとした。

 また、根治療法がないことと、透析開始年齢が62歳(全体だと68歳、いずれも日本のデータ)なことを考えると、数年(eGFR 60ml/min/1.73m2群で6年、45で4年、30で2年)透析を遅らせることに大きな意義があるという主張も頷けた。

 REPRISEトライアルのサブ解析では55歳以上で有意差がなかったこと、TEMPOでドロップアウトが30%だったことなどから、とくに海外からは価格に見合った効果があるのかという質問がつきもののトルバプタン。しかしレクチャ翌日、ADPKDが専門の米国医師と個人的に話すと、やはり「とにかく今は他にないから」という結論だった。

 現時点で次の候補はソマトスタチンアナログだが、Octreotide-LARはeGFR15-40の群で腎容積増大を遅らせた(ALADIN2、PLoS Med 2019 16 e1002777)ものの、Lanreotideは効果ないばかりか腹部症状と肝のう胞感染リスクが上昇していた(JAMA 2018 320 2010)など、道は遠い。



 おそらく演者や座長でなければ、日本からしかも全8レクチャに参加したのは筆者だけと思われる。ノートは全部とったが、分かりやすさ・興味・体力などの問題で、質と量にばらつきがあることをご了承されたい。理解の助け、話題提供など、何かの役に立てば幸いである。


(写真は日本でも韓国でもみかける、サギの仲間。ソウル大公園で筆者撮影)





2019/05/08

薬を変えてください、さもなければ・・

 「この薬をやめて(あるいは、変えて)もらえませんか?」――腎臓内科医なら、だれもが口にしたことのあるセリフだろう。フィブラート系、NSAIDsPPI・・・状況によって、議論になるときもならないときもある。

 しかし、だいたい議論にならないのが、リチウムだ。リチウム以外の気分安定薬に変更してくださいとは、腎臓内科医からも気軽にはいえないし、精神科的にも変更は困難なことが多いからだ。

 だから、中毒などであれば輸液したり透析したりするが(こちらや、こちらも参照)、尿崩症などであれば、「水を飲んでください」というシュールな治療しか提案できないこともある。




 そんな中、「腎性尿崩症に新しい治療か?」という論文がJASNにでた(JASN 2019 30 795)。なんと、抗真菌薬のフルコナゾールに、水チャネルAQP2を集合管内腔により多く分布させる働きがあるらしいことが示されたのだ。

 AQP2は細胞内小胞と細胞膜の間を行き来して、バソプレシン→バソプレシン受容体(V2R)の支配を受けている。ところが、フルコナゾールはその支配と別に、AQP2そのものをリン酸化したり、細胞内骨格のアクチンを分解して小胞を細胞膜に近づけたりしている可能性がある(図は前掲論文より)。




 問題は、マウスに投与された80mg/kg(腹腔内への注射)という量である。というのも、フルコナゾールはすでに臨床で用いられている薬だが、低ナトリウム血症の報告はあまり知られていない。よほど大量に投与しなければ効果は薄いかもしれない。

(なお、フルコナゾールだけでなくケトコナゾールやイトラコナゾールなど「アゾール」系の抗真菌薬が、アルドステロン産生を抑制し高カリウム血症を起こすことは知られている;BMJ 2009 339 b4114)

 しかし、腎性尿崩症に有効な治療があまりないこと、フルコナゾールが「新薬」ではなく臨床成績が確立していることを考えると、おそらくドラッグ・リポジショニング(英語ではdrug repurposingとも、こちらも参照)で治験が組まれるだろう。

 また、フルコナゾールそのものでは効果が薄くても、AQP2を尿細管内腔に表出させる独自の機序がみつかったことで、フルコナゾールを改良した薬ができるかもしれない。読者のなかには、サイアザイドもループ利尿薬もそのはじまりが抗菌薬のサルファ剤だったことを思い出す方もおられるだろう(Arch Int Med 2009 169 1851も参照)。

 さらにいえば、ADPKDに対してトルバプタンなどでV2Rを抑える治療をしながら、その下流の細胞内でAQP2の内腔側への表出を保てれば、トルバプタンの副作用である多尿を押さえる道だって、開けるかもしれない(薬効を維持できるかは、検証されなければならないが)。


 筆者はながらく"less is more"、つまり薬を使わず(減らして)患者を治すのが最上という考えを信奉してきた。しかし、どうしても切れない薬というのはある。たとえば「リチウムによる腎性尿崩症ですね、ならばこの薬を足しましょう」というように、薬の副作用を薬で治す方法を考えることも大切だと痛感した次第である。




2017/12/09

ADPKD~少し知っておいていいこと~

T 「ADPKDのこと好きになりました!色々と他に知りたいこともあって。。嚢胞ってプスッと穿刺して水抜いて小さくするのはどうなんですか?あと、トルバプタンに関しても具体的な使い方や保険も教えてくれませんか?」


M 「とても大事な疑問ですね。やはり、実際に机上の話だけでは臨床の応用はできないので、今日はしっかりと実践にもつながる事を含めて話しましょう!」


★腎嚢胞穿刺吸引について
前提として、腎嚢胞穿刺吸引によって腎機能が保たれたりするエビデンスは現時点では認めていない。そのため、無症状の患者に腎機能を良くするために穿刺吸引を行う事はすすめられない。
基本的に適応になるのは、症候性(嚢胞に伴う慢性疼痛。腹部圧迫症状)の改善のための一つの手段として使用される(J Endo 2013)。
海外のものでは、吸引ドレナージにはなるが感染性嚢胞で抗菌薬治療に奏功しない場合には適応となっている
下記はADPKD2014のガイドラインにある、Flemingらの症候性ADPKDの治療アルゴリズムである。

ADPKD ガイドラインより抜粋
どのように手技を行うか:
エコー下経皮的腎嚢胞穿刺吸引療法が使用されている。
通常の単純嚢胞であれば穿刺して、縮小効果を維持するためにエタノールなどの硬化剤を使用する事が多い。
しかし、ADPKDなどであれば、基本的には全ての嚢胞へのアプローチはできないため安全性を考慮して、疼痛を来たしていると考えられる、1つないし少数の大きな嚢胞をターゲットとして治療する事が多い。


合併症は嚢胞出血・血尿・嚢胞感染・気胸などがあるため、注意する!


★トルバプタンの具体方法
トルバプタンの使用適応
①両側総腎容積が750ml以上
②腎容積増大速度が概ね5%/年以上


では、腎容積に関してはどのように測定するのがいいのか?
検査機械のmodarityは基本はMRIやCTを用いて検索する。測定に関しては下記のように計算をして腎容積をもとめる。


杏林大学ページより引用


なので、腎臓の容積をもとめ、年毎の増大速度を計算する。
そこから、年齢・両側総腎容積・腎増大速度/年をもちいて患者の腎機能低下を予測する(下図:大塚製薬資料より)。
大塚製薬資料より引用



大塚製薬資料より引用
なので、これによって患者さんには個別化した治療になる。
80歳の高齢者に腎予後をのばす事を目標としてトルバプタンの導入をすることは個人的には、適応は無いと考える。


もし、患者さんがトルバプタンの導入をしようと思った場合には原則は入院加療でおこなうべきである。用法・用量に関しては、色々とあるが一例としては、


160mg2回(朝45mg夕方15mg投与開始


160mgの用量で1週間以上投与忍容性があれば190mg(朝60mg30mg)へ増量


③最高用量を1120mg(朝90mg30mg)と1週間以上の間隔を空けて段階的に増量する。
    最高用量は1120mgまで


入院中の指導として大事なのは尿量が非常に増えるため、水分補給をしっかりとして頂くことが重要となる。また、肝機能障害の有無に関しては検査をする必要がある。


また、本邦ではADPKDに対するトルバプタンの処方にあたっては、高用量であり大塚製薬のe-learningを受講する必要があり、その受講後にもらえるサムスカカードが重要になる。
(e-learningの受講は担当MRに確認してください。)


また、大事なのは難病申請である。
難病申請を行う事で自己負担の軽減につながる。下図のように所得によってことなるが、自己負担額が3割→2割になり、軽減される。


大塚ホームページより
トルバプタンは30mg:4000円/錠で、60mg内服で8000円/日となる。
単純計算で(1か月を28日とした場合)
3割負担で67200円、2割負担で44800円となる。


そのうえで、上限が下図のようになる。そのため、難病申請は患者負担という意味では非常に重要である。
大塚ホームページより


T 「ありがとうございます!長々と話していただいてすみませんでした。腎嚢胞の穿刺吸引のこと、ADPKDの周囲の状況などよくわかりました。」


M 「日常の臨床では、患者さんの病態のこと周囲の保険のことの把握も非常に大事です!なので、患者さんの常に視点にたって医療をできるようにしましょう!」







2017/11/24

ADPKDについての復習と新しい試み ②

前回、簡単なADPKDに関しての概論を話した。

ある時に、のんびりとコーヒーを飲みながら歩いている時に後輩の先生からこのように尋ねられた。仮に後輩をTとして自分をMとする。

T「先生に教えていただいたことをよく見ながらやっていたら、自分の外来の人にADPKDっぽい人がいました。でも、30歳で腎機能もGFR<60未満なんです。なんか、トルバプタンも使うといいという報告もあるし、この人の治療をどうすればいいですか?」

M「いい質問ですね!本邦で使える薬も含めて見ていきましょ!最近、これに関する論文も出ているので是非見てね!」

ADPKDは個人的にはやはりとっつきにくいなと思う時も多い。それは、やはり患者予後や治療プランや方向性をある程度自分が知っておく必要性がある。

※まず、脱線するが最近の報告でFGF23とADPKDの話題が取り上げられている。FGF23上昇と腎サイズ上昇は関連があり、腎サイズ上昇は腎予後不良に直結する(CJASN 2017)。

治療について
・血圧管理
 −厳密な血圧管理はADPKDの進展を予防する可能性を示しており、薬剤としては投与禁忌がなければACE-IやARBは初期の血圧治療薬として推奨されている(理由としては、RAA系の活性上昇と細胞外液量増加のため。)。特にタンパク尿があるものには効果があるとされ、HALT-PKD trialではARBとARB+ACE-IでADPKD進展を比較しているが、差はなかった(NEJM 2014)。

※まず、血圧管理で120-130/70-80mmHgを目標に禁忌がなければACE-IやARBを1剤でいいので入れる。

・塩分制限
    −塩分制限に関しては2g/日以下を推奨しているものもある。塩分制限の効果としては、尿中Na排泄増加→腎疾患悪化につ上がることがわかっているためである(CJASN 2011)。これは、先に述べたHALT-PKD trialでも証明されている。ADPKDでは高血圧になる傾向もあり、それに対しての塩分制限は重要である。

・飲水励行
 −これは、原理としては血清のバソプレシン濃度を抑えてADPKDの嚢胞の進行を防ごうとしている。ある先行研究からは水を3L/day以上飲むと尿浸透圧を抑え、ADH分泌も抑えるとしている。ただ、腎不全の進行した症例などは飲水によって低ナトリウム血症が助長される場合もあるため、気をつける必要性がある。3L飲むのは大変そうである。。

・スタチン投与
 −高脂血症は慢性腎不全患者の冠動脈病変の進展に寄与する。また、CKD患者の腎機能の進行をスタチン投与で遅らせることができる報告もある。ADPKDのデータは少ないが、RCTでプラバスタチン(メバロチン)が小児や若年のADPKDの進行抑制に寄与したという報告もある(CJASN 2014)。

・トルバプタン
 −トルバプタンが効果がある機序としては、詳細は図に示すが、嚢胞の増大にはcAMP上昇が関与している。そのcAMP上昇を抑える治療としてトルバプタンが用いられる。
杏林大学ホームページより

トルバプタンとADPKDの関連でまずは覚えておく必要があるのが、TEMPO trial(NEJM 2012)である。研究の詳細は割愛するが、世界129の医療機関でのRCT第3相試験である。1445人に対して961人にトルバプタン投与、484人がプラセボに振り分けられ3年間見た研究になる。腎容積の増加に有意な差が認められた研究である。日本人グループでの解析も行われているが、その結果でも効果があったという。

トルバプタンに関しての詳細は次回の話題に述べるが、今回はREPRISE trial(NEJM 2017)に関しての話題である。
この前提として、トルバプタンはTEMPO trialの結果を受けて承認される国もあったが米国のFDAでは承認されなかった。その理由としては、やはり副作用である。
副作用は肝機能障害、多尿、夜間頻尿などであった。
また、TEMPO trial ではGFR≧60の患者を対象に見ている研究であった。

今回のREPRISE trialでは、平均GFR41(30-50)の中等度〜重度腎不全に対するADPKD患者のトルバプタンの作用を見ている。詳細は割愛するが、一年の期間で見てCKD stage4の人であってもトルバプタンの効果があるということが示されている。副作用に関しても肝機能上昇は投与群で5.6%で非投与群で1.2%であった。ただ、全体を通しての副作用には有意差はなかった。FDAはこの結果を見てどう動くのか?また、この論文の感度分析では高齢者での効果は薄く、非白人でも効果は薄いという結果であった。
なので、現時点では非高齢者(55歳以下)のADPKDの症例で腎不全があってもトルバプタンを内服することができる場合には適応になる可能性はありそうである。

・mTOR阻害薬
 −これに関しては、2010年のNEJM,NEJM2に論文が出ている。シロリムスとエベロリムスを用いて見ているが現状では腎機能障害を遅らせるという報告には至ってはいない。
mTOR阻害薬が用いられる理由としては、ADPKDではmTORパスウェイの活性化が促進していることがあり、これを阻害したらどうだろうというのが治療薬の選択となった。

他にもソマトスタチンやアミロライド、メチルプレドニンなども選択肢にはなっている。
今回は、特にトルバプタンの話題に触れたかった。

では、会話に戻る。
M「最近の論文でGFR<60の人に対するトルバプタンの使用も有用性は認められているね。あとは、トルバプタンを使用するとかなりの部分で患者さんに協力してもらわないといけないことも多くなるから、それが大丈夫であれば患者さんと相談して始めよう。あとは、保険や金銭的なものも。これは、次回に話すね。」

T「ありがとうございます。とてもスッキリしました。」

ADPKDは遺伝性の疾患であり、一人を見つけたら家族も考えて治療・検査も行わなくてはならない。

2017/11/19

ADPKDについての復習と新しい試み ①

今回はADPKDについての話題に触れたいと思う。


自分の患者でもADPKDの人は多いが、遺伝性疾患であるので患者のケアももちろんであるが家族のケアも非常に重要な疾患である。
下図のように進行性の病気であることもわすれてはならない。




まず、今回はADPKDに関してお話しするが、ARPKD(常染色体劣性多発性嚢胞腎)もしっかりと認識しておくことは重要である。


常染色体優先遺伝の場合は下記。
常染色体上に存在する一対の遺伝子の一方に異常があれば発症する。
なので、やはり家族へのケアは注意する必要性がある。


大塚製薬サイトより


原因:遺伝子異常が原因
ADPKD:PKD1遺伝子とPKD2遺伝子が主役になる。このPKD遺伝子は腎臓ならば尿細管の液体のながれを感知し、肝臓ならば胆細管の胆汁の流れを感知する。流れを感知して、順序よく並んで流れをスムーズにいくように働きかけている。
※PKD1から作成されるものがPC1(polycystin1)、PKD2から生成されるものはPC2である。


※PKDの違いによるものは下記に示す。

杏林大学Homepageより
杏林大学Homepageより



この遺伝子異常が生じると、順序よく並べなくなり嚢胞が生じる(図)。


その際に治療で重要になるのが、cAMPである。
cAMPは抗利尿ホルモン(バソプレッシン)の作用を細胞内に伝える働きがある。
正常細胞ではcAMPは細胞増殖を抑制するが、ADPKDでは嚢胞細胞の数を増やしてしまう。

★また、ADPKDの発生に関しては遺伝子異常はもちろんであるが、下図に示すように多彩な原因で生じてくる。その一つが肥満である(図)。(JASN 2007


症状に関してはほとんど無症状の場合が多い。
血尿が30%程度におこり、嚢胞感染や嚢胞出欠などがある際に生じる背部痛を契機に気づかれる症例もいる。

検査:下記が診断基準となっている。

つまり、検査ではCT検査やMRI検査が重要となる。
ここで、除外すべき疾患として記載されているように、それらの疾患の可能性はどうなのかを常に考えることは重要である。
家族内発生をしっかりと認識する事は一番重要である。


また、併存症の管理が大事である。
致死的になるものは脳動脈瘤破裂であり、だいたい10%程度の人に見られるものなので、ここに関しては把握しておく必要がある。
杏林大学Homepageより


2部構成に今回はしようと思う。
今回の点で大事なのは、遺伝子異常はもちろんのことADPKDを悪化させるものはないか?家族は大丈夫か?である。




2016/07/07

It's not that simple

 腎臓内科医をしていてなんとなく居心地が悪いのが泌尿器科のお話と血管外科(ブラッドアクセス)のお話だ。きちんと教わる機会がないのでもどかしい。ほんとうは腎瘻・尿管ステント留置・シャント造設・グラフト造設はひとりでは難しくても、せめてシャントエコー・シャントPTAくらいできたほうがいいなと思う。ASNのOpen Forumでも最近「フェローシップではinterventional nephrologyは教えないわけ?」というinterventional nephrologistからの問題提起があって、教えたほうがいいよねという意見が多く出ていた。

 さてその泌尿器科関連で、腎の単純のう胞は感染するか?という話題が出た。理論上のう胞は尿細管とつながっているので尿路感染で菌が入り込むことはあり得るけれど、ADPKDでもないとあまり聞いたことがない。システマティックレビュー(NDT 2015 30 744)によれば、119例(81例:definite、38例:probable)の感染のう胞のうち、definiteの68%、probableの91%がADPKDだった。逆にdefiniteの32%は単純なのう胞(29%が単一のう胞、3%が複数のう胞)だった。けっこう多いが、ADPKDののう胞感染ぐらいで報告しないだろうから単純のう胞の報告がover-representされているかもしれない。別のレビュー(JASN 2009 20 1874)には単純のう胞の総合併症率(出血・感染・破裂など)が2−4%と書いてある。

 いろんな診断基準があって症状(腹痛:約半数ではないことも、持続する発熱、抗生剤に不応など)、炎症反応(WBC、CRP)、培養結果(血液、尿)、画像(CT:のう胞内のCT値50HU以下で出血を除外、超音波、MRI、18F-FDG CT/PET)などが項目にはいっている(日本のADPKDセンターがだしたのはClin Exp Nephrol 2012 16 892、ROCなどはないが)。画像でよく用いられ信頼度がたかいのは造影CT、超音波と単純CTでの診断はむずかしい、MRIもいいのだろうが経験が少ない、CT/PETは他のモダリティで証明できないが必要なとき、ということだった。ちなみに肝のう胞の感染にはCA19-9が提案されているが腎にはそのようなバイオマーカーはないようだ。

 起炎菌は大腸菌が多く、緑膿菌、Klebsiellaなどが続く。大腸菌の単純のう胞感染からの脳膿瘍まで報告されていて、あなどれない(BMC Neurology 2014 14 130)。大腸菌による二次性脳膿瘍、硬膜下膿瘍はまれだが、尿路、胆道、整形外科手術などで血行性におこる(in vitroの実験で脳微小血管内皮細胞にエンドソームとして取り込まれ脳に入ると考えられているらしい)。半分以上の場合は高齢者、ステロイド内服、脾摘後、糖尿病、化学療法中などの免疫低下リスクがあった。

 感染した単純のう胞をどうするか。ADPKDの場合、抗生剤で4−6週間押す、穿刺は①腎周囲膿瘍、②どののう胞が感染しているか明らかで、大きく(3−5cmより大きいと抗菌薬は届きにくいとされる)、かつ経皮的に穿刺可能な場合が慣例という。単純のう胞もそれに準じるが、どののう胞が感染しているかはわかりやすいと思われる(前述の脳膿瘍報告ではMEPM 6g/dを6週間と、のう胞穿刺をおこなっていた)。なお、単純のう胞をエタノールや酢酸などの硬化療法でつぶすことがあるが、これは痛みがコントロールできないときなどのレアケースだ。



2016/06/21

Expand differential diagnoses 2

 ADTKDと言われても初耳だが、私が卒業してからKDIGOがADTKD consensus conferenceをひらいて遺伝性の尿細管萎縮と間質線維化(IFTA)で末期腎不全にいたる諸病をこう総称することにしていた(doi:10.1038/ki.2015.28)。

 尿管拡張がmicrocystに見えることからMCKDと呼ばれていた時期もあったが嚢胞腎とは違うので紛らわしいということになった。総称されるのUMOD、MUC1、REN、HNF1Bの遺伝子異常で、これらの遺伝子は遠位ネフロン(UMODはHenle上行脚、TAL)にある(HNF1Bは腎外にもあり、糖尿病の亜型MODY5をおこす)。多くの場合小児科でみつかるだろうが初発年齢、腎機能悪化速度に差があり孤発例もあるので成人外来にくるかもしれない。

 UMOD異常はNKCC2チャネルを阻害して体液量を減らし代償的に近位ネフロンでの尿酸再吸収を増やすと考えられており、FEuric acidが5%以下になるのが特徴だ。腎生検でIFTAのほかにTAL細胞内のUMODたんぱく貯留がみられる。

 MUC1はムチンをコードするユビキタスな遺伝子だが、遠位ネフロンでは糸球体内腔をコーティングしている。この変異でできる異常たんぱくMUC1-fsが細胞内にたまるが他の臓器で異常をきたさないのがなぜかは分かっていない。

 RENはプレプロレニンをコードしており変異があるとレニン産生細胞が異常レニンがたまることでアポトーシスを起こす。これがIFTAを起こすしくみはまだわかっていない。

 HNF1Bは転写因子で肝、膵、腎などで諸遺伝子発現を調節しているが腎ではUMODの発現に関与している。動物実験でHGFによる尿細管発生をSOCS3遺伝子を介して抑制すると考えられている。

 また膵発生では内分泌細胞の前駆となるNGN-3遺伝子陽性細胞がHNF1B陽性の原始膵管細胞の周囲に並ぶが、HNF6発現を欠損させると膵管細胞でHNF1Bが発現されなくなり内分泌前駆細胞も並ばなくなるという。MODY5なのに普通の2型糖尿病として診断されることもあるから注意が必要だ。RCAD(renal cysts and diabetes syndrome)と呼ばれていたこともあり、腎嚢胞があればとくに。

 ただADTKDができて、今度は遺伝形式が違う嚢胞を主病変とする疾患があぶれた。Juvenile nephronophthisis(日本語ではネフロン癆;赤芽球癆、眼球癆、脊髄癆などもあるが共通した病気ではない)、Bardet-Biedl syndrome、Jorbert syndrome、Meckel-Grober syndrome(MKS)、Alstrom syndrome、Oral-facial-digital syndrome Type I(X-linked)などだ。

 しかしこれらは線毛に関係する遺伝子異常だとわかってきており、ADPKDとならびciliopathyと総称される(JASN 2009 20 23にもレビューあり、図;Jeune症候群は前稿に書いた)。ARPKDも原因遺伝子PKHD1の主要な遺伝子産物fibrocystin/polyductinがPKDの遺伝子産物polycystin 2と相互作用する。

 多発性結節症コンプレックス(TSC)は9番染色体にあるTSC1、TSC2遺伝子の異常でmTOC1が活性化されるが、TSC2とPKD1は隣同士なので大きなデリーションでは2つが抜けてTSC2/PKD1 contiguous gene syndrome(PKDTS)を起こす。




 これでもあぶれるのはvon Hippel Lindau病、medullary sponge kidney(MSK)くらいか。MSKは比較的有病率が多く、Beckwith-Wiederman症候群(巨舌、腹壁欠損、過成長)、Ehlers-Danlos症候群、Marfan症候群との関係があるが原因はいまだ不詳(尿管芽と後腎組織の相互作用異常が示唆されている)。

 Ca結石患者の20%にみられるともいうが、無症状で診断されていない例も多い。腎髄質の点状石灰化、IVPで腎乳頭に「花束」「刷毛」と言われる特徴的な像がみられる。問題は石と感染で、石にはクエン酸Kなど、感染はとくにurea-splittingな菌に注意が必要で「aggressiveに治療」とある。ただしこれらが守れれば腎機能低下をおこさないこともできる疾患だ。

[2016年6月追加]遺伝性間質性腎炎に、karyomegalic interstitial nephritis(核巨大化間質性腎炎)がある。ネフロン癆に似ているが、原因遺伝子FAN1はDNA damage response pathwayに関係する。これがないとinterstrand cross-linkの修復ができず(Nat Genet 2012 44 910)、その結果ciliopathy的なフェノタイプになるのかもしれない。たいてい20-40代くらいの兄妹で緩徐に進行する腎障害で発症する報告が多いが、常染色体劣性遺伝とされる。Lancetにも知っておこう的な記事が載っている(Lancet 2013 382 2093)。

[2018年12月追加]Nature Communicationsに発表された研究によれば(DOI: 10.1038/s41467-018-07260-4)、CKD患者コホートのGWASで引っかかる100以上の遺伝子多型(CKD-defining trait)のうち、3つでGFR低下との因果関係が証明された。そして、その代表的なものが上記のMUC1だった(なお他はNAT8BとCASP9だった)。

 MUC1の多型rs4072037は、MUC1遺伝子が転写されたあとのスプライシングパターンを変え、結果MUC1たんぱく質のN末端で9アミノ残基が失われるらしい(下図dからe、欠損部分はf、論文より)。




 ささいな違いだが、MUC1は腎にとって重要な分子なので、何か意味があるのだろう。そしてどう腎機能低下に関わるかは、今頃「よーいドン!」で各国研究機関が調べている。なおMUC1といえば日本で発見された肺臓疾患マーカー(肺がんにも応用されている)KL6の標的抗原でもあり、わが国からの研究成果にも期待したい。



2013/01/25

TEMPO3:4

 気になっていたTEMPO3:4トライアル(NEJM 2012 367 2407)をやっとレビューする機会があった。自分で読むタイミングがなかったので、Grand Roundで話すトピックを探していた内科レジデントに「これなんかいいんじゃない?」とお勧めし、スタディ論文といくつかの参考文献をセットにして送っておいたのだ。彼の発表は分かりやすく面白く高評価で、私も学べたし、これぞチームプレイ?

 ADPKDで同定された二つの遺伝子異常PKD1もPKD2も、尿細管細胞の内腔側に一本ずつヒョロっと付いている線毛に関係しており、nephronophthisisなどと同様にciliopathiesの一つだ。Kartagener症候群で内臓逆位になるように線毛は極性決定に関係するので、難解なレビュー(NEJM 2011 364 1533)によればPKDでは尿細管細胞が縦に伸長せず横に伸長し、cystやら何やら作ってしまうらしい。

 どうしてtolvaptanが試されたのか?それは、線毛の異常が尿細管細胞に起こすさまざまな変化(細胞内カルシウム濃度の低下、cAMP増加、mTORなど細胞増殖シグナル、他)の一つがV2Rだからだ。ADHが多いとcystが成長してしまうので、もともとADPKD患者さんは日ごろから水をたくさん飲むようアドバイスされていた。では、いっそV2Rをブロックしてはどうか?というのがこのスタディだ。

 このスタディが2012年に腎臓内科界が最も興奮したニュースなどと騒がれる一つのわけは、それが腎のサイズ増加率を低くしたのみならず、GFR低下率も低くしたからだ(もう一つのわけは年末に発表されたからだが…)。プラセボ群との差は有意だが正直控えめだ。そのわけは①両群とも水分摂取を励行したから、②病気進行がゆっくりな(あるいは病初期の)患者群が対象だったから、などと推測されている。

 [2016年7月追加]ADPKDは単一遺伝子(PKD1、PKD2)疾患ではあるものの、その異常の種類がさまざまで、おのおの病状の進行などがちがう。というのもPKD1は14000塩基以上で46個のexonを持つ巨大な遺伝子なうえに、1-33番までのexonはPKD1遺伝子のそばで6回複製されている(進化の過程でつかわれなくなったとされる偽遺伝子PKDP1-PKDP6)からだ。PKD2遺伝子にも15個のexonがある。それでいままではPKD1異常のほうがPKD2よりも進行が早いというくらいのざっくりさしか分からなかった。

 しかしPKD1特異的PCRによって、フレームシフトや大きな欠損だけでなくミスセンス変異やin-frame insertion/deletion(コドンが崩れない3塩基単位の挿入欠損)のようなわかりにくいももわかるようになった(JASN 2007 18 2143、CRISPコホート)。その技術をトロントのTGESPコホートに用いて腎・生命予後を調べた研究結果がでた(JASN 2016 27 1861)。すると、protein truncatingなPKD1異常がもっとも悪く、次にPKD1 in-frame insertion/deletionで、non-truncatingなPKD1異常と変異が見つからない群はPKD2とほぼ同じだった。これらは白人中心のコホートなので、日本の研究結果も知りたいところだ。

 ADPKDは画像診断で遺伝子検査は高価なうえ研究や遺伝コンサルティングでないとしないと思われるから、TEMPO3:4トライアルはもちろんPKD1、PKD2、PKD1異常の種類までランダム化していない。各遺伝子異常の進行速度は腎サイズに相関するので、腎サイズを合わせていればあるていど振り分けられるとは思うが、理論上同じ腎サイズでも進行の早い若い症例と進行の遅い高齢者がいるので、そういう目で見たほうがいいかもしれない。