まず、一般的にADPKDと結石に関して取り上げてみる。
・ADPKDにおける結石の割合:10-36%程度と言われる(Urol Ann 2012)
・結石の成分:尿酸結石(40-60%)かシュウ酸カルシウム結石が多い(AJKD 1988)これは、一般の尿路結石に比べて明らかに尿酸結石の割合が高い。
・ADPKDにおける結石を有している場合の特徴:嚢胞が大きく、全腎容積量が非常に大きい。加えて、低クエン酸尿、高シュウ酸尿、高尿酸尿、アンモニア排泄が低く尿中pHが低いという特徴がある(CJASN 2009)
このようにADPKDでは結石症は合併しやすいことがわかる。
我々は、ADPKDの治療にトルバプタンを選択する場合がある。このトルバプタンを使用することで尿路結石はどうなるのであろうか?増えるのか、減るのか?
今回、これを見た研究がCJASN 2020で出ている。
今回の研究では18歳以上でRavine criteria(LANCET 2014)でADPKDと診断された125人の患者を対象にしている。
治療投与前のベースラインと年のフォローアップの際に24時間蓄尿検査を行っている。
125人の患者で38人がトルバプタン治療・87人が非トルバプタン治療群であった。
トルバプタン治療群では、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸の尿中排泄量が減少し、尿中クエン酸や尿中カルシウム排泄量が増加した。
CJASN 2020より引用 |
また、尿中の酸排泄も低下し消化管からのアルカリ再吸収が増加した。
CJASN 2020より引用 |
・水分を十分に摂る(1日尿量を2L以上にすることで結石再発リスクを減少できる)
・カルシウムを摂る(カルシウムは腸管内でシュウ酸と結合して便に排泄させ、尿中シュウ酸を減少)
・クエン酸を摂る(シュウ酸とカルシウム、リン酸とカルシウムが結合するのを抑制、また尿中pHを上昇させ酸性尿を是正させ尿酸結石、シスチン結石の予防に有効)
・シュウ酸摂取量を抑える(ほうれん草、キャベツ、ブロッコリー、竹の子、バナナ、玉露や抹茶や煎茶などのお茶、ココア、チョコレート、コーヒー、紅茶などを控える)
・ブリン体の多く含まれる食品や飲料を控える(プリン体は体内で代謝され尿酸となり、過剰摂取で高尿酸血症や酸性尿を引き起こす。)
・動物性のタンパクや脂肪の摂取を控える。(動物性タンパク質が多くなると尿中尿酸が多くなる、動物性脂肪が多いと腸内脂肪酸が増えてカルシウムと結合し、シュウ酸がカルシウムと結合困難になり、尿中にシュウ酸が多くなり結石ができやすくなる)
今回の論文結果からは、ADPKDに対してトルバプタンを使用することで結石の発祥というリスクを減らすことが示された。
個人的にはトルバプタンをあまりこの視点から見ていなかったので非常に参考になった。