2017/03/31

移植での体格差や性別は移植腎に影響するか??(Donor-Recipient Weight and Sex Mismatch and the Risk of Graft Loss in Renal Transplantation)

今日は個人的には嬉しいことがあった日だ。本当に家族って大切だなと改めて実感した。

今日の話題は移植の話である。
我々の施設でも移植をやっており、移植のドナーが小さい母親で、レシピエント(受け取る側)が大きな成人男性であることに遭遇することが多い。
その際に、移植後に血清Cr値が通常の場合より高く出る場合が多い。その際に「体格差だから仕方ないね」という会話をすることが多い。

では、体格差がGraft Lossにどこまで起因するかを見たものが今回の研究である(CJASN 2017)

腎移植後の早期・晩期合併症において免疫学的mismatchesは大きな要因であるが、非免疫学的なものも原因となりうる。その中で、移植腎のサイズ(移植腎の重さやBMIや体表面積などをsurrogateとして見ることが多い。)は一つの原因となりうることが報告されている。
また、性別の違いも同様に移植後のGraft障害の悪化ということも報告されている。

今回は米国で2000年1月1日から2013年12月31日まで見た研究である。
除外したものとしては、生体腎ドナー・患者が18歳未満・多臓器移植をされたもの・ドナーやレシピエントの体重記載のないものを除外している。

性別はFDMR(女性のドナーから男性のレシピエントへ)、FDED(女性のドナーから女性のレシピエント)、MDFR(男性のドナーから女性のレシピエント)、MDMR(男性のドナーから男性のレシピエント)に分けた。
体重をsurrogateとし、体重を>30kg,10-30kg,<10kgに分けた。

アウトカムをGraft Lossとして慢性の維持透析を導入するか再度移植を行った場合とした。

ドナーとレシピエントの年齢、身長、ドナーの死因、腎虚血時間、レシピエントの末期腎不全の原因、HLAミスマッチ数、既存抗体の割合(0-20%,20-80%,>80%)、併存疾患なども抽出した。

結論:
115124人のうちgraft lossが21261人の患者(18.5%)に見られた。
そのリスクとして高かったのが、多変量解析でレシピエントの体重がドナーよりも30kg以上大きかったものや性別が異なるものであった。




これは、死体腎移植のものであり、日本のデータにはそくしたものではないかもしれないが、日本でもこういう研究を行うのは面白いなと思った。



2017/03/26

低ナトリウム血症を再度考える パート2 (Rethinking about hyponatremia from case record of MGH NEJM)

パート1での回答は各々の中で出ただろうか?




今回の論文では数々学ぶポイントがある。


A)低ナトリウムと尿浸透圧高値の所見からは何を考えるか?
-CSWS(cerebral salt wasting syndrome)、薬剤、ホルモンの変化に伴うもの、中毒、SIADHなど。


今回の症例では甲状腺機能は問題なく、薬剤使用もなく、CSWSを疑わせる所見もなく、もし他の鑑別があがらないとSIADHになる。


・ここで、ポイントは若年女性では妊娠は考えなくてはならず、また妊娠は程度として強くないが低ナトリウム血症を引き起こしうることである(相対的水分過剰)。
・SIADHは常に除外診断である事である。


B)利尿剤の乱用と低ナトリウム血症
今回の鑑別で若い女性で考えないといけないのは、利尿薬の乱用である。
利尿剤の中でサイアザイドの使用はループ利尿薬より低ナトリウム血症を来たす。


まず、サイアザイドが低ナトリウム血症を来たす機序を説明する前に、一つ知っておく必要性があるのが、countercurrent multiplication(対向還流)というヘンレループ特有の機序である。
これは、ヘンレの下降脚は電解質の移動を起こさずに、水の再吸収を行う。
逆にヘンレの上向脚はNa/Cl/Kなどの電解質の再吸収のみ行い水の再吸収はおこさない。これにより髄質で高い浸透圧を作ることが出来る。
また、ヘンレループは腎臓の髄質にあるということも重要な情報である。

ループ利尿薬ではヘンレの上行脚でNa再吸収が阻害され、腎髄質の浸透圧が下がる。
それにより、最終的に水の再吸収が行われる集合管でも浸透圧が下がり、浸透圧勾配にしたがって移動する水は再吸収されにくくなる結果、尿量は増加。
サイアザイドは腎髄質の浸透圧に影響を来さないので、尿量の増加は多くはなく、またADHに対する水貯留の反応が良好なため低ナトリウム血症を生じる。


サイアザイドによる低ナトリウム血症は治療開始後1-2週間で生じる。


多いのは痩せた高齢女性であり、volume statusは正常な場合が多い。


この症例では、女性は若年であり発生頻度の多い年齢には合わないが鑑別としては残る。



C)副腎不全と低ナトリウム血症


全ての副腎不全で低ナトリウム血症は生じやすいが、原発性の場合に最も多く生じる傾向にある。


副腎不全の中でも原発性の頻度は稀である。これは、腫瘍・炎症・出血などで副腎が>90%破壊されると生じる。Glucocorticoidと mineral-corticoid(アルドステロン)の両方が低下するというのがポイントである。


二次性では下垂体機能低下, ACTH分泌低下による機序である。


原発性で低ナトリウム血症になる機序は2つあげられる。
①コルチゾールの欠乏
-これがADH分泌を抑制させる機構を破綻させる(CRH産生亢進でADH分泌促進)。


②アルドステロン欠乏
-尿細管のNaバランスを調整する部分を変化させ、低ナトリウム血症をおこす。


volume statusは正常か低下の場合がおおい。


この症例では、可能性は否定はできない。


D)MDMAの使用と低ナトリウム血症
エクスタシーとよばれるもので合成麻薬である。使用による合併症として高血圧・頻脈・横紋筋融解症・セロトニン症候群・低ナトリウム血症・昏睡・死亡などがある。


低ナトリウム血症の機序としてはADH様物質の増加と口渇に伴う飲水過多が原因となる。
volume statusは正常か低下の場合が多い。


この症例では薬剤のチェックで引っかからず病歴的にも合致しなかった(薬剤服用して1-3日で陽性になる)。


結果的には・・・
この症例では利尿剤濫用・副腎不全が除外できていない。


この症例を鑑別していくときのキーポイントは
・低血圧、軽度高カリウム血症、代謝性アシドーシスの点である。
低血圧に関しては、輸液のみで改善している。この点では、副腎不全には少しそぐわない。


軽度高カリウム血症や代謝性アシドーシスは、利尿剤の乱用を行っていた場合には高アルドステロン状態になり、低カリウム血症・代謝性アルカローシスになる場合が多く合わない。


この症例では最終的には、検査も行い原発性副腎不全という結果になった。

最初コルチゾールの基礎値を測定した際には高値であった。しかし、これはストレス環境下であり、その場合には高値になる事が多い。






今回の症例とは関係ないが我々として覚えておかなくてはならないのが、3次性の副腎不全(長期ステロイドによる副腎不全)である。


これは、長期ステロイド内服による視床下部-下垂体-副腎(HPA axis)の萎縮である。20-30mg/日のステロイドを5日以上使用した患者は常にリスクがあるが、 短期投与の場合は抑制も数日で改善する。機能低下は先ず中枢性に起こり、その後副腎萎縮となる。抑制されたHPA axisが戻るのには9ヶ月以上かかることを知っておく必要がある。そのために、ステロイドを避ける治療があれば選択することは重要である。


この症例からは様々学ぶものがあると感じた。低ナトリウム血症を見た時のアセスメントは非常に重要である。



2017/03/25

低ナトリウム血症を再度考える パート1(Rethinking about hyponatremia from case record of MGH NEJM)

今回、NEJMでのMGHのケースで低ナトリウム血症の話題が出たので触れたいなと思った(NEJM 2017)。


低ナトリウム血症の鑑別を考える上でも考えさせられたし、知らない知識も多くとても楽しかった。


では、パート1は症例の紹介をする。
パート2以降に結果などを書こうと思う。


症例:27歳女性

主訴:嘔気・嘔吐、検査で低ナトリウム血症

現病歴:
入院1週間前:嘔気と非出血性の嘔吐あり。医療機関は受診しなかったが、数時間で改善。

入院2日前:夕方にシーフードを食べて同症状

入院1日前:食事後に反復性嘔吐で食べられず、しかし飲水接種は可能で大量の水を飲んでた。

入院日:
友人と会話し、観光にも参加。夕方前より軽度困惑症状出現、その後傾眠と歩行困難出現。そのため、A病院救急外来にに車で搬送

その時点ではBT:36.1、BP:94/64、HR:100、RR:16、SpO2:100(RA)、質問には答えられず手足を目的無く動かしたりしていた。血圧は再検しても73/54であり、生食投与を行っていた。

血液検査でNa104mmol/l、K:5.1mmol/l、Cl74mmol/l、CO2:19mmol/l、血糖:114、AG:11と分かった。また、AST/ALT:37/37 U/l、その他の腎機能などは問題なかった。

尿検査で妊娠反応・薬物反応は陰性。サリチル酸やアセトアミノフェン濃度:正常であり、集中治療管理のため、転院した。
 
転院先で:
やはり質問に答えられない意識障害で家族から病歴聴取。
彼女は健康な大学卒業した女性で、南アメリカ出身で友達とニューイングランドを訪れていた。
経口ピルを使用。飲酒は機会飲酒、喫煙・市販薬は使用なし。
家族歴;母が乳癌、それ以外は自己免疫性疾患などなし。
 
身体所見:
BT:36.7、BP;102/57、HR:92、RR:12、SpO2:100%(RA)
傾眠傾向で指示には従わず。痛み刺激には反応あり。
瞳孔は問題なし。皮膚湿潤あり。
心音・呼吸音:問題なし。腹部所見:問題なし、肝臓・脾臓は触れず。
浮腫もなし
 
追加の採血検査は下記。

尿中浸透圧・尿中Na多い。甲状腺機能問題なし
 
CTは頭部問題なし。胸部レントゲン問題なし。
 
かなり27歳の女性ということであまり低ナトリウム血症でくるのが高齢者が多い印象があるため色々と憶測はしてしまいそうになる。
でも、我々の前にも現れる可能性もあるため、しっかり考えるべきである。


2017/03/22

透析患者におけるNOACの効果はどうなのか?(Apixaban Pharmacokinetics at Steady State in Hemodialysis Patients)

末期腎不全で心房細動を有している患者に対してはワーファリンが保護的に働くのか害として働くのかに関してはわかっていない。


いくつかのコホート研究で示されてはいるが、明確に示されてはいない(circulation 2014,AJKD 2015)。また、カナダの論文でsystematic reviewもだされているが、それでも明らかな差は認められていない(canadian journal of card 2017)。




今回の論文はアピキサバンを使用した際にどのくらいの容量が治療効果があるのかを見た論文である。
まず、これらの薬について簡単に復習する。
ダビガトラン(プラザキサ)、リバロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、エドキサバン(リクシアナ)はNOACと呼ばれる薬である。
作用機序別にわけると下記のようになる。


FXa阻害剤
・イグザレルト(リバーロキサバン)
・エリキュース(アピキサバン)
・エドキサバン(リクシアナ)
直接トロンビン阻害剤
プラザキサ(ダビガトラン)




※ファーマシスタより転記


腎機能別に考える。
・ダビガトラン(RE-LY trial)
 -150mg(75×2):CCr50以上
 -110mg:Ccr30-50
・イグザレルト(ROCKET-AF trial)
 -15mg:Ccr>50
   -10mg:CCr15-49
 -<15:使用しない
・エリキュース(ARISTOTLE trial)
 -2.5mg:CrCl15-29
 -<15:使用しない


今回はアピキサバンを見ている研究である(JASN 2017)。
実際に透析患者にアピキサバンを用いたときにどのよう量が効果があるのかを見ている。
7人の患者で行い、
2.5mg×2のアピキサバン内服を開始。7日間見ている。
その後、wash out期間を設けて
5人の患者に、5mg×2のアピキサバンの内服をおこなった。
透析におけるアピキサバンの除去は4%程度であった。


この研究でわかったことは、ワーファリンの代用をするならば2.5mg×2でいいと言う事である。また、5mg×2を用いた場合には血中濃度が高くなりやすい。


では、今後はこの研究から発展して実際にNOACが予防効果があるかをみるかたちになるのであろうか?
出血や虚血は起こってみないと本当に目に見えないものであり、予測は常に難しいなと感じている。その分、薬の効果も判定しづらい部分はあるのかもしれない。




2017/03/20

IgA腎症と妊娠から考えること。(IgA nephritis and pregnancy and so on.)

個人的に今週末は幸せな気持ちになる週末でした。
そんな週末を経て今日は上記の話題を書きたいとおもいます。

やはり、今日外来でIgA腎症の人に
「先生、私妊娠したいんですけど薬はどうすればいいですか?」
と聞かれた。この患者さんの内服薬はARBを内服しており、タンパク尿は0.3g/Cr程度、腎機能も問題なし。また、扁桃摘出+パルス療法を行って完全寛解を得られている。

でも、やっぱりタンパク尿減らすためにARB使用していて減らすのはどれだけいいのか?妊娠でIgA腎症は再燃しないのか?と考えてしまった。

まず、IgA腎症において妊娠は正常な腎機能であれば許容される(AJKD 2014)
では、慢性腎機能障害の人はどうであろうか?
GFR<70mL/min以下、高血圧非コントロール例、腎生検で重度動脈や尿細管間質病変がある症例では、腎疾患が増悪する可能性は高くなると言われる(Clin nephrol 1994)。

では、妊娠患者の腎生検はどの人に行なえるのだろう?
まずは、血圧コントロールが良好に行えていること。また、凝固異常の併存がないこと。また、妊娠32週以前が推奨はされている。
逆に32週以降の推奨はされていない。

ARBやACE-Iは妊娠中には全期間使用は推奨されていない。これは胎児への影響が示唆されているためである。
妊娠を3期に分けた時に
1期(15週まで):ARBやACE-Iは胎児の心血管や中枢神経系の奇形を起こしうる。
2−3期:使用により胎児のGFR低下をきたし、また肺の低形成などに繋がり、胎児死亡に繋がる。

ARBやACE-Iの他にシクロフォスファミドやMMFも胎児に影響を与えるので、妊娠前には切ることが推奨される。

とすると、今回の症例に関しては、血圧の推移を見ながらではあるがARBやACE-Iを終了し、血圧が上がるようであればα-Methyldopaやカルシウム拮抗薬を用いて管理をする。
そして妊娠に備えるという形にした。

しかし、腎機能が悪い方もいるので妊娠に伴う悪化のリスクは話すことは重要である。

今回調べていてCJASN 2013のケースは一通り学ぶのに勉強になる!一読をお勧めする。

今回も患者さんから一つ勉強させていただいた。ありがたい。



2017/03/18

心房細動患者に抗凝固薬投与は意外に少ない!!(Association of Preceding Antithrombotic Treatment With Acute Ischemic Stroke Severity and In-Hospital Outcomes Among Patients With Atrial Fibrillation)

以前に透析患者と心房細動について記載をした。


今回、論文で興味深いものがあったので紹介する。


一つはJAMA 2017;317(10):1057-1067の論文である。
我々は一般的には心房細動患者がいれば、CHA2DS2-VAScをつけてリスクを評価し、HAS-BLEDをつけて出血リスクを評価する。どちらがリスクとして高いかをみて抗凝固薬を投与するかどうかを決定する。


この論文は94474人(2012/10-2015/3 1622の病院)の脳梗塞を発症した心房細動のある患者が選択されている。
今回の論文はとくに透析患者というpopulationではない。


脳梗塞発症前の抗凝固薬の導入をみており、脳卒中の重症度はNIHSS scoreによってみている。


94472人中
-7176人(7.6%):治療的ワーファリン投与
-8290人(8.8%):NOACs投与
-79008人(83.6%):治療的なワーファリン投与なし
 -12751(13.5%):脳卒中発症時 ワーファリン治療域には達していない(INR<2)
 -37674(39.9%):抗血小板薬のみ投与
 -28583(30.3%):抗凝固薬の投与なし


CHA2DS2-VASc≧2の高リスクの91155人のうち76071人(83.5%)は治療域のワーファリンやNOACsの内服がなかった。


・中等度~重症脳梗塞患者において治療的ワーファリン投与やNOACs投与をしている症例は、やはり治療的ワーファリン投与ない症例に比べて発症の割合が少なかった。


この論文からは、治療域のワーファリンやNOACs投与患者は15%程度と少なかったというのがわかったし、しっかりと治療域にいれるということは実際の脳梗塞をしっかりと予防する上で重要なのだと感じた。


また、今回の論文からの発展で実際に透析患者では抗凝固薬は推奨されないが、このようにみた研究があって同じように結果を出せたら面白いなと感じた。


次の機会にもう一つ違うものを紹介できればなと思う。



2017/03/16

非糖尿病のCKD患者に厳格な血圧コントロールはいいのか?(Intensive BP control for non DM CKD patient)

日々日常診療をしていると勉強になることが多い。
今日は腎炎の治療中の患者に色々と質問され、とても勉強になった。
本当に日常臨床から学ぶことはすごく多いなと感じる。

今日の話題は、JAMA intern medから出たsystematic and Meta-analysisである。
糖尿病によるCKD患者やタンパク尿が1g以上出ている非糖尿病CKDに関しては降圧が有用であるという報告がある。

今回の論文は非糖尿病患者の降圧に関しては不明確なことが多くsystematic review and meta-analysisで示している。

論文はintensive群を(<130/80mmHg)、通常群を(<140/90mmHg)と分けている。
2016/3/24までのpubmed, medline, embase, cochrane libraryから論文抽出を行なっている。

大人の非糖尿病のCKD患者を抽出し、血清Crが2倍以上になった場合、50%以上GFRが低下した場合、末期腎不全になった場合(ESRD)、死亡率を見ている。


この論文では9つのtrialで8127人の患者をEnrollし、平均3.3年のフォローをしている。
・GFRの年間低下率:intensive群と通常群で差はなかった (mean difference, 0.07; 95% CI, −0.16 to 0.29 mL/min/1.73 m2/y)
・Crが2倍かGFRが50%以上低下:intensive群と通常群で差はなかった(RR, 0.99; 95% CI, 0.76-1.29)
・ESRD:intensive群と通常群で差はなかった(RR, 0.96; 95% CI, 0.78-1.18)
・複合的な腎合併症:intensive群と通常群で差はなかった(RR, 0.99; 95% CI, 0.81-1.21)
・死亡率:intensive群と通常群で差はなかった (RR, 0.95; 95% CI, 0.66-1.37)

非黒人や尿タンパクが多い症例では、intensive群の方が腎リスクを低下させることがわかった。

今回の論文では、非糖尿病患者の厳密な血圧コントロールは意味がないと出た。
しかし、我々日本人はどうなのだろうか?非黒人であり、これは今後の研究が必要な分野なのかもしれない。




2017/03/15

一度でも腎機能障害になったら妊娠に影響あるの?(Pregnancy Outcomes after Clinical Recovery from AKI.)

今回、妊娠と腎機能障害に関して、上記題名のような論文があったのでご紹介する。

妊娠の時は胎児の成長のために腎臓や胎盤がフル活動する!そのため、GFRが正常時より50%以上上昇するのはそのためである。

以前にも記載したが、早期のCKDであっても妊娠にとって悪影響を及ぼすことはわかっている(CJASN 2010)。
また、AKIがCKD進展のリスクになることもわかっている。

では、完全に腎機能の数字が戻ったAKI既往の患者が妊娠したら、何かリスクは上昇するのかというのを調べたのが今回の論文である(JASN 2016)。

研究デザイン:
後ろ向き研究で9年間追っており、AKIはCreの上昇のみで定義(基礎より1.5倍)
合併症として子癇前症、妊娠高血圧、妊娠期間、胎児の体重、周産期死亡、NICU入室、週数より胎児が小さい
などを見ている。

下記のように見ている。

今回の結果では、AKIの既往の女性では、子癇前症、非正期出産の割合、NICU入室率、胎児の影響が優位に高かったとでている。


Limitationとしては、KDIGOの基準に含まれるような48時間で0.3mg/dl以上のクレアチニン上昇の症例は含まれておらず、コントロールに入っている可能性や、AKIの原因は不明なことが多いなどがあげられている。

なので、妊娠した人に過去に腎臓悪くなったことはありませんか?と聞くのも重要になってくる可能性もある。
腎臓は数字上は正常に戻っても何かしらの影響を与えていると考えると、ますます神秘に満ち溢れていると感じる。



2017/03/14

塩分摂取について ③(about sodium intake : NUTRICODE trial)

今回はもう一つの論文であるNUTRICODE trialについて(NEJM 2015;371:624-634)

今回のこの3つのtrialに関してはQUICK TAKE VIDEO SUMMARYが付いているので見ていただければと思う。

ちなみに食塩相当量の計算には常に注意することが大事である。
例えば食品にナトリウム量で書かれていれば、食塩相当量に直すことは重要である。
食塩相当量(g)=Na摂取量(g)×2.54
なので、注意する。
しかし、2015年の4月1日から、日本の食品基準に関して法律の変更があり義務表示の「ナトリウム」は「食塩相当量」で表示しましょう!ということが提示されている。
なので、変換することを考えなくてもいいかもしれないが、知っておくと何かに役立つかもしれない。

では、本題であるが、
この研究は
国連や世界保健機関(WHO)、米国疾病管理予防センター(CDC)は、食事のナトリウム摂取量と心血管疾患との関連を強調しているが,ナトリウム摂取が世界的にみた影響や年齢,性別,人種,国,高血圧合併等による違いは明らかにはなっていなかった。
そのため、66カ国の患者において尿中ナトリウム排泄から推定したナトリウム摂取量に関する調査を行い、
・世界的なナトリウム摂取量を定量化

・ナトリウム摂取量の血圧への影響
・血圧の心血管死への影響をメタ解析により評価
・基準値を超えるナトリウム摂取量が心血管死に及ぼす影響を年齢別・性別・国別に推定。

結果:
・ナトリウム摂取量に関して:世界の平均ナトリウム摂取量は3.95g/日(地域平均2.18~5.51g/日)。187ヵ国中181ヵ国でWHO推奨の2.0g/日を超過していた。
・減塩の効果:ナトリウム摂取量2.30g/日減少で収縮期血圧は3.82mmHg低下していた。その減塩の影響は高齢者や黒人や高血圧例で若年者や白人や正常血圧例より大きかった。
血圧の心血管死への影響:血圧の影響度は年齢に伴って低下した。
基準値を超えるナトリウム摂取量が心血管死に及ぼす影響を年齢別・性別・国別に推定。:世界中で毎年165万人の心血管死がナトリウム摂取過剰によるものであり、61.9%は男性で38.1%は女性であった。心血管死の10人に1人にあたり、このうち84.3%は低~中収入国に見られ、40.4%は70歳以下であった。ナトリウム摂取過剰による心血管死の割合はグルジアで最も高くケニアで最も低かった。

結論:この研究の結果では食塩5g(Na摂取 2g)以上の摂取は心血管死に繋がるとしている。

今回、PURE と NUTRICODEを出したが、PUREでは低すぎると心血管リスクが上昇して、塩分摂取量は7.6gが適切と言っていて、NUTRICODEでは5g未満が適切としている。
PUREは追跡調査研究でありlimitationがある可能性はある。

我が国の推奨は6g未満であり、この結果を踏まえても有用な基準であると認識した。

塩分摂取は様々な領域で取りざたされており、今後さらなる研究が進めば面白いと感じた。






新しい高リン血症の治療

 以前にふれた、NHE3阻害薬tenapanorが透析患者さんの高リン血症をさげるかを調べた治験の結果が発表された(doi: 10.1681/ASN.2016080855)。4週間の内服で用量依存性にリン濃度低下がみられ、10mg1日2回と30mg1日2回でプラセボに対して有意差があった(1.7-1.8mg/dlの効果)。ただし下痢の副作用が多く、30mg1日2回の群では半分が途中で薬をやめていた。TenapanorはLubiprostone(アミティーザ®)のように便秘薬として開発された薬だから無理もなく、著者は「便が硬く通過時間のながい透析患者さんにとっては有益かもしれない」と考えている。

 腸管のNHE3を阻害すると便中のリン含有量が増えることは事実だが、ナトリウムイオンと水素イオンの交換輸送体であるNHE3がどうリンに関係するかはまだわかっていない。腸管にはリン吸収にかかわるナトリウム依存のリン輸送体NPT2bというのがあるから、ナトリウムイオンの再吸収が阻害され腸管内にナトリウムがたまることと関係がありそうに思われる(tenapanorにNPT2bに対する阻害作用はないが;JASN 2015 26 1138)。腸管で塩素イオンの再吸収を阻害するlubiprostoneでも、リンはさがるようだ(コントロールのない一施設スタディはRRT 2016 2 50)。

  このスタディは、いままで「いかに摂取をへらすか」「いかに吸着するか」が基本だった高リン血症治療に新たな考え方をもたらす可能性があると思う。これから研究が進んで、遠位ネフロンのように腸管の溶質吸収とその制御にかかわるさまざまな治療標的がみつかるかもしれない。みつかれば、いまは阻害薬を探す方法は high throughput screeningとかいろいろある。ただ下痢をおこす薬が多そうで、アドヒアランスをたかめるためにも腎臓内科医や透析医は尿量コントロールと同じように便の回数、ブリストル・スケール(図)などもみて調節しながら診療する必要が出てくるかもしれない。




 [2017年6月追加]この薬が日本人の健康被験者を対象に1相治験された(Clin Exp Nephrol 2017 21 407)。両親、父方母方の両親が日本人で、日本で生まれ、5年間以上日本以外に住んでいない20-45歳の被験者83人をカリフォルニア州の治験センターWCCT Globalに連れていきTenapanorないしプラセボを飲んでもらった。

 結果、予測されたように介入群では便Na排泄がふえた。プラセボが4mmol/dに対して30-40mmol/d、食塩換算で2グラムくらいだから、利尿薬ならぬ「利便薬」としても使えるのかも知れない。便リン排泄は、0.8-8.0mol/dふえたとあるが、統計学的有意差や信頼区間は明記されていない。第1相で安全性を示すのが目的だからだろうか。

 安全性といえば、便の回数は180mg1日1回投与群で約6回、15-90mg1日2回投与群で約2回、プラセボで約1回だった。180mg1回投与は、大変そうだ。便の性状は投与群でBristolスケール約5、プラセボで3だった(上の写真)。副作用は下痢が2回嘔吐が1回。白人被験者では頭痛や腹痛もあったが、国民性ゆえ軽微なら訴えなかったのだろうか。

 それにしても、WCCT Globalなんてしらなかった。日本語ホームページによれば、最高約10000ドルの報酬を提供するらしい。それでも元が取れるのだろう。日本市場に入るためには日本人データがあったほうが有利だから、外資企業がこうやって外国で日本人を対象に治験する時代なのだなと驚いた。

2017/03/13

塩分摂取について ② (about sodium intake)

塩分の摂取量については外せない論文は2014年のNEJMに立て続けにでた論文たちである。

・PURE trial
・NUTRICODE trial

は必須論文になると思う。

今回はPURE trialに関して触れる(N Engl J Med. 2014; 371: 601-11.  N Engl J Med. 2014; 371: 612-23)

今回のPURE trialの目的は
・ナトリウムの摂取量増加は血圧上昇と関連するが、この関連がナトリウム,カリウムの摂取量や地域で異なるのかは明らかでない。
また、心血管疾患合併からみた至適摂取量に関してはわかっていない部分が多い。
これをしっかりと突き詰めようとしたのが、今回の研究である。

今回の研究は大規模コホート研究において,下記を検討している。
1)  ナトリウムおよびカリウムの摂取量(推定24時間尿中排泄量で代替)の実態を地域,国の所得水準別に推定し,血圧との関連を検証。
2)  ナトリウムおよびカリウムの尿中排泄量と死亡,心血管イベント(CVD)の関連を検証。


今回24時間尿中排泄量で代用しているが、その際に用いられているのが、Kawasaki formulaである。

下記にkawasaki formulaを記した。今回、そのほかにTanakaの式、Nervassの式なども提示している。
ある研究では、日本のCKD患者さんではTanakaの式の方がkawasaki の式よりも正確であると言われている。

Kawasakiの式(HypertensRes. 2006;29(6):397-402.)
24-h 尿中Na (mEq/day)=16.3{(UNa/UCr)x estimated24h-UCr } ^0.5
男性:推定 24h-UCr(mg/day)=15.12x BW + 7.39 x height –12.63 x age –79.90
女性:推定 24h-UCr(mg/day)=8.58 x BW + 5.09 x height –4.72 x age –74.95

Tanakaの式(J Hum Hypertens. 2002;16(2):97-103.)
24-h 尿中Na  (mEq/day) = 21.98 x UNa/UCrx {-2.04 x age + 14.89 x weight (kg) + 16.14 x height (cm) -2244.45}^0.392

Nervassの式(Nephron Clin Prac t2014;12861-66)
推定 24h尿中Na (mmol) = –68.625 + (体重kg 1.824) + (EM UNa in m
mol/l 0.482)

話は、脱線したが詳細は本文を読んでいただけたらと思うが、
1)については、
方法:
18か国で102,216人の成人を対象とし、早朝空腹時の尿検体を用いて24時間のナトリウム排泄やカリウム排泄を計算。そのうえで電解質排泄と血圧との関係を見ている。
結果:
Na排泄量と血圧に有意な正の関係を認め、排泄量1g増加ごとに、収縮期血圧が2.11mmHg、拡張期血圧が0.78mmHg上昇(p<0.001)。

この相関関係はNaの摂取量が増えるほど顕著になり尿中Na排泄が5g/日以上では2.58mmHg収縮期血圧が上昇し、3-5g/日では1.74mmHg、3g未満では0.74mmHgの上昇であった(P<0.001)であった。
関係が顕著だったのは,高血圧例,高齢者であった。
K排泄量と収縮期血圧には有意な負の関係が認めた。1g増加ごとに0.75mmHg低下(p<0.01)。拡張期血圧の低下は0.06mmHgであった(p=0.33)。
収縮期血圧低下が大きかったのは高血圧例、高齢者であった(p<0.001)

結論:

24時間尿中排泄量から推定したNa摂取量と血圧は正の関係,K摂取量と収縮期血圧は負の関係であった。特にその関係が顕著だったのは高Na食摂取者,高血圧例,高齢者であった。

2)については、
方法:
17か国の101,945人から早朝空腹時の尿検体を採取し、24時間ナトリウム排泄とカリウム排泄を計算し、尿中ナトリウム及び尿中カリウム排泄と死亡率と心血管イベント(CVD)の複合アウトカムとの関係を調べた。

結果:
死亡率と心血管イベントの複合アウトカムの発生は3,317例(3.3%)で、死亡1976例(CVD死650例)、心筋梗塞857例、脳卒中872例、心不全261例であった。

Na排泄量4.00~5.99g/日にくらべ,高値群(≧7.00g/日)は死亡、主要なCVDのリスクが高かった。CVD死、脳卒中による死亡・入院のリスクも高かった。この関連は高血圧例で強く、 6.00~6.99g/日、≧7.00g/日でリスクが有意に上昇した。
また排泄量低値群でも,4.00~5.99g/日群にくらべ
死亡率と心血管イベントの複合アウトカムの発生、死亡、主要なCVDのリスクが上昇した。

K排泄量≧1.50g/日群は<1.50g/日群にくらべ
死亡率と心血管イベントの複合アウトカムの発生のリスクが低かった。

結論:

24時間尿中排泄量から推定したNa摂取量3~6g/日は<3g/日,≧6g/日より死亡や心血管リスクの低下と相関していた。
K排泄量≧1.50g/日は<1.50g/日より死亡や心血管リスクの低下と相関していた。

とても、大規模なコホート研究であり重要なものである。
患者さんに少し、塩分取りすぎちゃダメですよ、カリウムはとってくださいねという意味が理解できてきただろうか?




塩分摂取について① (about sodium intake)

塩分に関しては、僕たちは摂取の制限をしてくださいね!高血圧になりますし。ということを外来で話すことが多い。

まず、塩分を取るとなぜ血圧が上がるのか?
これについてはJASN2014の論文によくのっている。
塩分摂取に対して全員が血圧上昇するかに関してはそうではない。個人差がある。

塩分摂取で血圧が上がる機序の一つが
・塩分摂取過多→腎臓の交感神経系活性上昇→WNK4(With no lysin kinase 4)発現低下→NCC(thiazide-sensitive sodium chloride cotransporter)活性化をおこし、Na保持につながり、血圧が上昇する。


図には書いてあるが、交感神経活性が上昇してWNK4活性が低下する機序も重要である(Nat Med 2011)
これは、交感神経活性化が起こり、β2ARが活性化、PKAを介してHDAC8の活性を低下させる。これにより、核内のGRE(glucocorticoid-response element)のヒストンアセチル化が増加、グルココルチコイドおよびGRが結合し、これがWNK4の発現低下をもたらす。

そのため、塩分制限はある患者にとっては重要である。

数回塩分についての話をしたいと思う。


2017/03/07

久しぶりに投稿です。(移植の腎病理 IF/TAについて)

久しぶりに投稿です。
すみません、この2−3週間は一つのことに集中しなくてはならなかったので、投稿ができていませんでした。今日一段落ついたので、少しずつ再度投稿していきます。

移植腎の腎生検は理解しなくてはいけない内容であるが難しい。。
やはり、難しい理由としては腎炎の再燃以外に移植特有の拒絶という問題が生じるためである。
拒絶反応は細胞性免疫機序、抗体関連免疫機序に大別される。

萎縮尿細管や間質繊維化を呈する慢性移植腎症の中で原因の明確でないものをIF/TA(interstitial fibrosis and tubular atrophy)と呼ぶ。
つまりこの言葉は、特別な病態がないけど、慢性経過で腎機能障害が進行するというものを示している。
なので、移植後十年以上経過して、腎機能が徐々に悪くなってきたときに、この症例はIF/TAだねっていうのは容易い。

しかし、IF/TAという言葉は特別な病態がないということが前提である。いわゆる低ナトリウム血症におけるSIADHと同様である。
IF/TAには重症度分類があり、間質の繊維化によって分かれる。
Ⅰ:尿細管萎縮を伴う軽度の間質繊維化(皮質領域の<25%)
Ⅱ:尿細管萎縮を伴う軽度の間質繊維化(皮質領域の26-50%)
Ⅲ:尿細管萎縮を伴う軽度の間質繊維化(皮質領域の>50%)

移植の腎生検でもしっかりと鑑別をして、患者さんの治療の方向性を決めてあげるということは本当に重要なことだと感じる。