2019/06/03

僕たちのMGRS 2/6(定義)

 前章に続き、今回はMGRS(Monoclonal Gammopathy of Renal Significance)の定義について書いていく。

 まず、IKMGによる(Nat rev 2019)定義そのものを載せると、下記のようになっている。


MGRS applies specifically to
  • ① any B cell or plasma cell clonal lymphoproliferation with both of the following characteristics:
  • ② One or more kidney lesions that are related to the produced monoclonal immunoglobulin
  • ③ The underlying B cell or plasma cell clone does not cause tumour complications or meet any current haematological criteria for specific therapy

つまり、


①すべてのB・形質細胞のクローン増殖の中で 
②MIgによる腎病変が一つ以上あるが 
③その他の合併症が見られず血液内科的には治療を必要としないもの


 分かりやすくベン図にまとめると、MGRSは下図の黄色の部分ということになる。




しかし、これだけでは抽象的すぎるので具体的な疾患を例にみてみよう。

 まず、MGUSなどでMIgによる腎病変のないものはどうか?・・・これは、青の部分で、ほぼ従来のMGUSに近い。

 骨髄腫でCRABを認めるが、腎障害(R)がないものはどうだろう?・・・これは、迷わずピンクの部分だろう。

 しかし、CRABのRがあったら、どうか?・・・赤の部分になる。なかでも円柱腎症(cast nephropathy)は、「骨髄腫を定義する(myeloma-defining)」ものなので、これがあったらもはやMGUSでもMGRSでもない。

 さらにひねって、くすぶり型多発性骨髄腫(Smouldering multiple myeloma、SMM)、くすぶり型マクログロブリン血症(Smouldering Waldenstrom macroglobulinemia、SWM)、活動性の低いCLLなど、血液内科的には経過観察となるものはどうか?・・・これらはピンクの円には入らないが、MIgによる腎病変があれば黄色になる。

 どうであろうか、着いてきてくださっているであろうか(じつは筆者もここまでの理解には相当苦労した)?

 では、肝腎の黄色部分のところにはどんな腎病変が含まれるのだろうか?つづく。