2019/06/07

AVG閉塞のPTAという道

 読者のなかには、2年前に書かれたこちらの投稿をおぼえておられる方もおられるかもしれない。今回は、AVG閉塞をPTAで治療する様子を紹介したい。

 AVG閉塞を治療するときには、以下の3つを成し遂げなければならない。

1.ひろげる
2.血栓をなくす
3.合併症をおこさない

 まず1.であるが、こちらは閉塞していない場合のPTAと同じで、文字通り「経皮的に(percutanous)内腔側から(transluminal)血管形成(angioplasty)」を行う。とくに静脈側流出路に狭窄がある場合はよく拡張しておかないと、せっかく再開通させても人工血管内の血栓が狭窄部で詰まり、さらに血栓ができる・・という繰り返しになってしまう。

 つづいて2.であるが、こちらは血栓に居なくなるか消えてもらわなければならない。しかし本来バルーンはひろげる道具であり、血栓のあるところでひろげても圧排されるだけで動いてくれないことも多い。

 それで、拡張用のカテーテルバルーンを少しふくらませてからインフレーターのトリガーを抜いて拡張圧ゼロにして血栓を引きずってきたり、血栓除去用のFogarty embolectomy catheter(現場では単に「フォガティー」とも)を出したり、シース・イントロデューサーのポートから吸引したり、ウロキナーゼなどの血栓溶解薬を使ったりする。


 なお筆者はトロンボーン経験者なので、スライドの中を掃除する下記のような道具があればなあ・・といつも思う(写真は、ヤマハ フレキシブルクリーナー SL FCLSL4)。




 そして最後に3.。「平時」のAVG閉塞PTAは、「ヘアカット(こちらも参照)」に一手間加えた「ヘアカラー」くらいで済む。しかし、困難症例では「レスキュー」の様相を呈することもあり、二次災害にも気をつけなければならない(写真は2012年公開の映画『BRAVEHEARTS 海猿』より)。


(出典はこちら


 そんなとき、閉塞が解除できないのならそこでやめるしかない。むしろ危険なのは、頑張った末に静脈側が詰まったまま、静脈側の血管が破れ(血管造影ができないのでガイドワイヤーが迷入するおそれがあるし、狭窄がきつい場合はどうしても破るリスクが高くなる)、動脈側は開いているというケースだ。止血のため、緊急手術が必要なこともある。

 そして最後に、AVG閉塞は緊急に入ることも多く、手技・放射線使用時間も長い。だから、患者さんだけではなく、PTAチーム(看護師、臨床工学技師、放射線科技師、医師ら)の心身も守らなければならない。
 


 こうしたことを踏まえて毎回臨むのであるが、「開眼したか?」と思い上がるたびに「まだまだ・・!」と思い知らされるなど、またまだ道遠い筆者である(写真は1954年公開の映画『道』より)。