同学会の基幹紙である日腎会誌に2005年発表されたもので、会員のみ閲覧できる。改定まではこれがスタンダードということだから、印刷して手元においておくとよいかもしれない。筆者も目を通したが、「検体の切り出し」と「生検針と穿刺回数の選択」が興味深かった。
まず「切り出し」であるが、採取した検体は通常、光学顕微鏡(LM)、免疫染色(IF)、電子顕微鏡(EM)用に組織を切り分ける。これについてガイドブックは:
・2本はまるまるLM用(黄色)
・1本は皮質側と髄質側から1-2mmずつ2個ずつEM用(水色)の検体を切り出し、残りの大部分をIF(蛍光緑)や特殊病理用
としている。
もし1本しか取れなかった場合には、皮質側から順に「EM(1.5mm)-IF(1.5mm)-LM(大部分)-EM(1.5mm)-IF(1.5mm)」で切り分けることも提唱している。
なおいずれの場合も、十分な皮質が含まれていることを確認することが条件になっている。
筆者がこれに興味を持ったのは、これ以外のやり方を知っているからである。自施設だけでも切り出す師匠によって「A流」「B流」などバリエーションがあるし、今年発表されたAJKDのコア・カリキュラムは下記の例をあげている(AJKD 2019 73 404)。
図の矢印は輸入細動脈・輸出細動脈を表し、そこに糸球体があると見込んでIF用検体を切り出している。要は、ルーペなり実体顕微鏡なりでよく見て、LM・IF・EMのいずれにも確実に糸球体が入っているようにしなさい、ということだろう(写真は、ハズキルーペ)。
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つぎに「生検針・穿刺回数の選択」について。AJKDの図に2本しかコアがないように、このコア・カリキュラムは「コアは通常2本で十分」としている。その理由は、LM用の検体に十分な(15-20の)糸球体を含めるとしても、1.5~2cm分のコアがあれば十分だからだという。
3本でなく2本のコアでよければ、腎臓を刺す回数も減り、患者さんに負担も少なくて、いいことばかりと思うかもしれない。ただ、ここで考慮すべきは針の太さと長さだ(図でコアが円柱で表示されているのも、それを強調するためである)。
まず太さであるが、14ゲージ針の直径は、約1mm。16ゲージ針の直径は、0.7mm。そして18ゲージ針の直径は、0.35mm。AJKDは、糸球体の直径が0.25mmなことと、14ゲージ針と16ゲージ針ではとれる糸球体の数に有意差がなかった(14ゲージ針には合併症が多かった)ことから、16ゲージ針を推奨している。
現行の腎生検ガイドは「通常症例は16ゲージで2~3回」「危険症例は18ゲージで2~3回」を推奨しているが、改定でどう変わるか注目したい。
つづいて長さであるが、米国ではストローク長(「パチン」と発射して腎臓に刺さる深さ、英語ではthrowという)が22mmの生検針を用いることが圧倒的に多い。日本もそうかもしれないが、時にエコーで腎臓の内奥まで穿刺の軌跡がみえて「ひやり」とすることもある。
これについて腎生検ガイドは、「欧米人に比べ体格が小柄な日本人の腎臓には、22ミリストローク針のみならず、腎臓の長径に合わせて15ミリ前後の生検針も選択すべき」としている。改定後に何ミリが推奨されるか、非常に楽しみである。
合併症をおこすと、患者へのダメージはもちろんだが、「もう自分は一生(生検)針を持たない」と決心させるほどのショックを医師に与えることもある腎生検。刺す道をゆく以上リスクを取ることは免れないが、地道に「何を使って、何回刺すか」という工夫を続けていくしかない。