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2020/03/12

僕たちのMGRS 5/6(診断)

また、前回から期間が空いてしまったが今回は診断について記載をしてみたいと思う。

さて、今までの内容は、
僕たちのMGRS:
 ・MGRSをめぐる混乱の中から
 ・1/6 (歴史)
 ・2/6 (定義)
 ・3/6 (分類)
 ・4/6 (病理)
とまとめてあるので参考にしていただきたい。

今日は診断について話を進めていく。
流れとしては、
『①MGRSを疑うか?→②検査・尿検査はどうか?→③腎生検』となる。

①では、まずどのような人を疑うのか?
MGRSを疑う人:
・「非腫瘍性、もしくは前腫瘍性のモノクローナルガンマグロブリン血症があり」+「腎障害(腎機能低下やタンパク尿)がある」

②検査について
ここでは、モノクローナルガンマグロブリン血症を診断するための検査について述べたいと思う。
*単クローン性免疫グロブリン検査について
・血液と尿の電気泳動検査(SPEP・UPEP):最初の検査



・免疫固定(Immunofixation):これもSPEP/UPEPと同時に検査する。
原理:SPEP、UPEPで指摘したM蛋白がどの免疫グロブリンの増殖に由来するかを検出
通常は1種類の重鎖と軽鎖が検出される。電気泳動と抗原抗体反応を組み合わせた蛋白の同定法。



・遊離軽鎖検査(Free light chain assay):免疫固定でもわからない軽鎖の上昇を判断
血中の重鎖と結合していない軽鎖(κ、λ)を計測する。κ/λ比の正常値は0.26-1.65で、この範囲外である場合はいずれかの軽鎖が増殖していることを示唆。重度腎障害(CKD stage5以上)の際には0.34-3.10まで上昇



これらの検査結果は、腎疾患のタイプや重症度との関係ははっきりはしていないが、診断や予後決定の上で重要である。


Nature review nephro 2019


上記のようにMGRSを疑うような人に対して腎生検施行することを考慮する。

③上記の中の腎機能障害や尿異常などに関しては下記のように考えると理解しやすい。
・とくに腎生検を推奨する場合(下記の中の一つでもあれば):


・腎生検を中等度推奨する場合(下記の中の一つでもあれば):


①まずはMGRSを疑うかどうか?
      ↓
②採血検査や尿検査ではどうか
      ↓
③腎生検をして病理検査を確認

という流れになる。

今日は世界腎臓デイ、みんなでお祝いしましょう!
今年のテーマは
kidney health for everyone everywhere – from prevention to detection and equitable access to care.”
なので、しっかりと診断をして治療につなげることは非常に重要になる。

次回は最後の治療について、是非楽しみにしてください。


2019/12/25

僕たちのMGRS 4/6 (病理)

 前回の投稿から期間が空いてしまったが、今回はそれぞれの病理像について話していこうと思う。前回は分類について話したので再度参考にしていただきたい。

 まず、病理で大事なことは

MGRSの病理はパラプロテイン関連腎症の病理である

 という概念を認識しておく必要がある。つまり、パラプロテイン関連腎症の病理の復習ということになる。これに関しては順次詳細部分は各論をUPしていきたいと思う。

 そもそもパラプロテインとはクローン性のB細胞や形質細胞から産生された


  • 単クローン性免疫グロブリン
  • 不完全な単クローン性免疫グロブリン(軽鎖のみ、重鎖のみ(まれ)、免疫グロブリンの断片など)


 である。

 MGRSの分類で前述したように


  1. クローン性免疫グロブリンが沈着をするか否か。
  2. 沈着する場合にはOrganized(まとまって)かNon-organizedなのか。


 を考える。

 Organizedに沈着する場合に、細線維状構造に沈着するのをfibrillar deposit、微小管構造で沈着するのをmicrotubular deposit、結晶状に沈着するのをcrystal depositとわけている(下表参照)。


分類


 最初に、全体像を把握するために全体の病理像をまとめた表を提示する。時間がない方はコレを見てもらうだけでもいいかもしれない。




 また、全体像の病理の図も示す。病理の像に関しても時間がなければコレを見ていただくだけでいいかもしれない。


Nature review nephro 2018


 では、各論にうつろうと思う。まず、Organized depositの疾患から考えてみる。Organized depositの中で、fibrillar deposit、microtubular deposit、crystal depositの電顕所見は下図のようになる。沈着物によって大きさが違うことがわかっていただけると思う。


Up to date 「MGRSの診断と治療」より、Samih H Nasr, MDの提供
A:fibrillar deposit、B:tubular deposit、C:crystal deposit


 そして、その沈着物によって疾患が分類される。


  • Fibrillar deposit: Amyloidosis(AL,AH)・fibrillary GN
  • Microtubular deposit: Cryoglobulinemia・イムノタクトイド腎症
  • Crystal deposit: LCPT・CSH・クリスタログロブリン腎症


 ここからは、それぞれの病理像を簡単に解説をしていく。

■Organized depositに関しては

・ALアミロイドーシスはCongo red染色陽性で、


Am J Kidney Dis. 2015;66(6):e43-e45より引用


 光顕でメサンギウムへの沈着によりメサンギウム肥厚、血管病変を認める。


メサンギウム領域や血管などにアミロイド沈着を認めている。
Am J Kidney Dis. 2015;66(6):e43-e45より引用


 免疫蛍光染色ではλ>κが優位


免疫蛍光染色でκ陰性、λ陽性
Am J Kidney Dis. 2015;66(6):e43-e45より引用


 電顕では8-10mmの分岐のない針状細線維の沈着
 沈着部位は糸球体、血管、尿細管すべて


メサンギウム領域や血管にアミロイド沈着を認める。直径10-12mm程度
Am J Kidney Dis. 2015;66(6):e43-e45より引用

上図沈着の拡大(10-12mm)
Am J Kidney Dis. 2015;66(6):e43-e45より引用


・Fibrillary GNはCongo red染色陰性で、光顕では様々なパターン(メサンギウム増殖性、膜性増殖性、膜性GN)


細胞性半月体を伴っている。
Am J Kidney Dis. 2015;66(4):e27-e28より引用

中等度のメサンギウム領域の拡張、一部基底膜の二重化
Am J Kidney Dis. 2015;66(4):e27-e28より引用


 免疫蛍光染色ではIgGが優位に沈着(IgG4が多い)、κ>λが優位


IgGが優位に沈着
Am J Kidney Dis. 2015;66(4):e27-e28より引用


 電顕では12-22mmの分岐のない針状細線維の沈着


メサンギウム領域や基底膜領域に細線維の沈着
Am J Kidney Dis. 2015;66(4):e27-e28より引用

12-22nmの細線維の沈着を認める。
Am J Kidney Dis. 2015;66(4):e27-e28より引用


・Immunotactoid GNは、Congo red染色陰性で、光顕では様々なパターン(メサンギウム増殖性、膜性増殖性、膜性のGN)


銀染色で、糸球体基底膜の分裂とメサンギウム基質の増加を伴う、膜性増殖性パターン
Am J Kidney Dis. 2015;66(4):e29-e30より引用


 免疫蛍光染色ではIgGかIgM優位に沈着(IgGではIgG1が多い)、κ>λが優位


IgG染色、メサンギウム領域や毛細血管係蹄に陽性
Am J Kidney Dis. 2015;66(4):e29-e30より引用


 電顕では、30-50mmの数本まとまった微細管状の沈着


直径35nm程度の沈着が認められる。
Am J Kidney Dis. 2015;66(4):e29-e30より引用


・CryoglobulonemiaはCongo red染色陰性で、光顕では膜性増殖性GNパターン、巣状硬化病変


PAS染色、膜性増殖性腎炎像、係蹄壁に濃いPAS陽性所見
Am J Kidney Dis. 2016;67(2):e5-e7より引用


 免疫蛍光染色ではIgM優位に沈着、κ>λが優位


IgM染色、メサンギウム領域や係蹄壁に染色を認める。
Am J Kidney Dis. 2016;67(2):e5-e7より引用


 電顕では、30-100mmの2本1対の湾曲した微細管状の沈着


虫のような短い沈着物を内皮下に認める。
Am J Kidney Dis. 2016;67(2):e5-e7より引用


・LCPTは、光顕では近位尿細管の萎縮、脱分化、細胞質の膨化


細胞質内の結晶沈着物を近位尿細管に認める。
Am J Kidney Dis. 2016;67(2):e9-e10より引用


 免疫蛍光染色では軽鎖のκかλが陽性


A:κ染色、B:λ染色 近位尿細管にκ陽性所見
Am J Kidney Dis. 2016;67(2):e9-e10より引用


 電顕では軽鎖のまとまりのない蓄積


近位尿細管上皮の細胞質内の結晶沈着を認める。
Am J Kidney Dis. 2016;67(2):e9-e10より引用


・Crystal Storing Histiocytosisは、光顕では係蹄壁に沿って結晶沈着所見


係蹄壁にそって結晶沈着所見を認める。
Ann Diagn Pathol.
 2019 Dec;43:151403より引用


 免疫蛍光染色では軽鎖 κが粒状に係蹄壁に沿って陽性


左がκ、中央がλ κ陽性
Ann Diagn Pathol.
 2019 Dec;43:151403より引用


 電顕では貪食細胞(foam cellやマクロファージ)による細胞液胞を認める


貪食細胞に伴う細胞液胞あり
Ann Diagn Pathol.
 2019 Dec;43:151403より引用


■Non-organized(沈着物が細顆粒状)に関しては

・MIDDは軽鎖沈着症(LCDD)、軽鎖重鎖沈着症(LHCDD)、重鎖沈着症(HCDD)の3病型がある。光顕では糖尿病性腎症に似る結節性糸球体硬化症所見、巣状硬化病変


LCDD:糖尿病性腎症様の結節性病変を認める(マッソン染色)
Am J Kidney Dis. 2015;66(6):e47-e48より引用


 免疫蛍光染色ではLCDDではκ>λが優位に沈着、LHCDDでは軽鎖と重鎖が沈着、HCDDでは重鎖が沈着


LCDD:κ鎖の沈着をメサンギウム、係蹄壁、尿細管基底膜に認める。
Am J Kidney Dis. 2015;66(6):e47-e48より引用


 電顕では、糸球体基底膜内から内皮下に連続性帯状に分布する微細顆粒状沈着


LCDD:糸球体内皮に粒状のまとまりのない沈着物を認める。
Am J Kidney Dis. 2015;66(6):e47-e48より引用

内皮に粒状のまとまりのない沈着物を認める。
Am J Kidney Dis. 2015;66(6):e47-e48より引用


・PGNMIDは、光顕では膜性増殖性GNパターン、メサンギウム増殖を伴った糸球体基底膜の二重化所見





 免疫蛍光染色ではびまん性の軽鎖沈着、IgG3陽性でκ鎖陽性である場合が多い。


メサンギウム領域や係蹄壁にIgG3に沈着する。
Am J Kidney Dis. 2016;67(3):e13-e15より引用 

軽鎖ではκ優位に沈着


 電顕では、主には内皮下沈着、まれだが上皮化沈着(微細顆粒状構造)


メサンギウム領域や内皮下に沈着物所見あり
Am J Kidney Dis. 2016;67(3):e13-e15より引用 


■MIg沈着がないタイプでは

 C3腎症+Monoclonal gammopathyがある。病理所見は、光顕ではメサンギウム増殖を認める膜性増殖性GNパターン


膜性増殖性パターンでメサンギウム細胞増加あり
Am J Kidney Dis. 2015;66(4):e25-e26より引用


 免疫蛍光染色では顆粒状のC3似の優位な沈着(糸球体基底膜内、メサンギウム領域)


メサンギウム領域や基底膜でのC3沈着所見あり。
Am J Kidney Dis. 2015;66(4):e25-e26より引用


 電顕では、糸球体基底膜内に連続性高電子密度病変を認めるが、DDDよりも密度は低い


内皮下への沈着所見を認める
Am J Kidney Dis. 2015;66(4):e25-e26より引用


 詳細な各論に関しては随時更新をしていこうと思う。まずは、簡単に概念を理解して頂ければと思う。

 次回はMGRSの診断について記載していく。


今日はクリスマス。僕たちからのプレゼント投稿です!

2019/06/13

僕たちのMGRS 3/6(分類)

 今回はMGRSの分類について話していく。MGRSの定義に関しては2章を参考にしていただきたい。また、今後各疾患に関しても一つ一つ記事にして、リンクをつけていく予定である。

 MGRSの分類に関しては、下記に注目して分類してみる。


①どこにMIgが沈着するのか?
②MIg沈着以外の例外はあるのか?


①どこにMIgが沈着するのか?

 →主に糸球体、尿細管間質、血管に沈着する。

 下記に沈着部位によって疾患を羅列し、沈着物を記載する。

・糸球体に沈着するもの、疾患を示す。

形のそろった繊維状物 (Organized Fibrillar)が沈着する、免疫グロブリンによるアミロイドーシス(AL, AH, AHL)

 形のそろった繊維状物 (Organized Fibrillar)が沈着する、Fibrillary GN

 形のそろった微小管物 (Organized Microtubule)が沈着する、イムノタクトイド腎症

 形のそろった微小管物 (Organized Microtubule)が沈着する、クリオグロブリン腎炎 (Type1 and Type2)

 形のそろわない沈着物 (Nonorganized)が沈着する、MIDD (Monoclonal Immunoglobulin Deposition Disease)

 形のそろわない沈着物 (Nonorganized)が沈着する、PGNMID (Proliferative GN with Monoclonal Immunoglobulin Deposit)

・尿細管間質に沈着するもの、疾患を示す。


 形のそろった封入物または結晶 (Organized Inclusion or Crystalline depositits)が沈着する、LCPT (Light Chain Proximal tubulopathy)

 形のそろった封入物または結晶 (Organized Inclusion or Crystalline depositits)が沈着する、CSH (Crystal Storing Histiocytosis)

 形のそろわない沈着物 (Nonorganized)が沈着する、MIDD

・血管に沈着するもの、疾患を示す。


 形のそろった微小管物 (Organized Microtubule)が沈着する、クリオグロブリン腎炎 (Type1 and Type2)

 形のそろわない沈着物 (Nonorganized)が沈着する、MIDD

 形のそろった封入物または結晶 (Organized Inclusion or Crystalline depositits)が沈着する、(クリオ)クリスタログロブリン腎症

 形のそろった繊維状物 (Organized Fibrillar)が沈着する、免疫グロブリンによるアミロイドーシス)


イムノタクトイド腎症、PGNMIDなどは糸球体のみの病変を起こす。
LCPTは近位尿細管に病変を起こす。
クリオグロブリン腎炎は糸球体に病変を生じるが、血管病変も起こしうる。
アミロイドーシスとMIDDは糸球体、尿細管間質、血管のどの部分にも病変を起こしうる。
Nat Rev 2018より引用


②MIg沈着以外の例外はあるか?

・ MIg沈着なしの病変を示す。

 C3腎症+Monoclonal Gammopathy

    TMA (Thrombotic MicroAngiopathy)


下表は上記の①と②をまとめたものになる。 


この分類では、MIgが沈着するか否かで分けてあり、MIgが沈着する場合には沈着物が何かで分けている。
Port J Nephrol 2018より引用


分類に関しては実際に病理像をみながらでないとイメージをしづらいかもしれない。

それに関しては次回説明する。 つづく。


☆おまけ:

上記の表で形の揃っていない(Non organized)MIg沈着物のところに「Miscellaneous」があるのはお気づきだろうか?
このサブカテゴリーは、典型的なMGRSに関連はない腎疾患が含まれている。

このカテゴリーに含まれるものが

・抗GBMモノクローナル抗体(monoclonal gammopathyに伴う2次性)
  -この場合通常の採血で抗GBM抗体検出が困難で、通常の抗GBM関連腎障害に比して
  移植後の疾患再発率が高い(KI 2016)

・抗PLA2Rモノクローナル抗体

・IgA腎症を伴うHSP (Henoch Schonlein Purpura)


これらの疾患は馴染みのある疾患であるが、自己抗体がモノクローナルであればMGRSの一部に入るということは非常に興味深い。






2019/06/03

僕たちのMGRS 2/6(定義)

 前章に続き、今回はMGRS(Monoclonal Gammopathy of Renal Significance)の定義について書いていく。

 まず、IKMGによる(Nat rev 2019)定義そのものを載せると、下記のようになっている。


MGRS applies specifically to
  • ① any B cell or plasma cell clonal lymphoproliferation with both of the following characteristics:
  • ② One or more kidney lesions that are related to the produced monoclonal immunoglobulin
  • ③ The underlying B cell or plasma cell clone does not cause tumour complications or meet any current haematological criteria for specific therapy

つまり、


①すべてのB・形質細胞のクローン増殖の中で 
②MIgによる腎病変が一つ以上あるが 
③その他の合併症が見られず血液内科的には治療を必要としないもの


 分かりやすくベン図にまとめると、MGRSは下図の黄色の部分ということになる。




しかし、これだけでは抽象的すぎるので具体的な疾患を例にみてみよう。

 まず、MGUSなどでMIgによる腎病変のないものはどうか?・・・これは、青の部分で、ほぼ従来のMGUSに近い。

 骨髄腫でCRABを認めるが、腎障害(R)がないものはどうだろう?・・・これは、迷わずピンクの部分だろう。

 しかし、CRABのRがあったら、どうか?・・・赤の部分になる。なかでも円柱腎症(cast nephropathy)は、「骨髄腫を定義する(myeloma-defining)」ものなので、これがあったらもはやMGUSでもMGRSでもない。

 さらにひねって、くすぶり型多発性骨髄腫(Smouldering multiple myeloma、SMM)、くすぶり型マクログロブリン血症(Smouldering Waldenstrom macroglobulinemia、SWM)、活動性の低いCLLなど、血液内科的には経過観察となるものはどうか?・・・これらはピンクの円には入らないが、MIgによる腎病変があれば黄色になる。

 どうであろうか、着いてきてくださっているであろうか(じつは筆者もここまでの理解には相当苦労した)?

 では、肝腎の黄色部分のところにはどんな腎病変が含まれるのだろうか?つづく。



2019/05/27

僕たちのMGRS 1/6(歴史)

 骨髄腫は形質細胞が癌化してクローン増殖したものだ。そして、形質細胞はB細胞から分化した、抗体を大量に産生・分泌する細胞だ。




 だから、骨髄腫は同じ種類の抗体分子を作る(図はIgG)。IgAなら二量体、IgMなら五量体だが、IgMは過粘稠症候群を起こすためWaldenstromマクログロブリン血症という別名がついていることはご存知の通りだ。




 異常タンパクは、上図のように重鎖と軽鎖がそろっている場合はMタンパクと呼ばれ、軽鎖だけで尿中にみられるとベンス・ジョーンズ(BJ)タンパクと呼ばれる。血液や尿の電気泳動で、同じ分子量のところに集中してピークを作るのも、ご存知の通りだ。本稿ではこれらをまとめてモノクローナル免疫グロブリン(monolonal immunogloblin、MIg)と呼ぶ。



 
 なお、骨髄腫患者の尿中に異常タンパクを発見し発表したのは英国のBence Jones博士だが、これが免疫グロブリン軽鎖だとわかるまでには100年以上かかった。1956年、ニューヨーク記念病院(現在のスローン・ケタリング研究所)にいたLeonard Korngold博士と助手の Rose Lapiri女史の功績だ(Cancer 1956 9 262、κ鎖とλ鎖の由来である)。

 では、MIgがみられる患者はみな骨髄腫なのかというと、そんなことはない。まず、免疫グロブリンを作るのは形質細胞だけではないから、Waldenstromマクログロブリン血症・リンパ腫・CLLなどでも見られうる。

 さらに、血液腫瘍がみつからない患者も多数いる。当初これらは「良性(benign monoclonal gammopathy)」と呼ばれていたが、1978年、メイヨーのRobert Kyle博士はそうした241例を5年間フォローし、11%が骨髄腫などに進展したことを報告した(Am J Med 1978 64 814)。逆に言えば、残りは進展しなかった(57%はMIgの増加すらみられなかった)。

 がんはみつからない、前がん病変なのだろうが、多くは進展しない・・・そんな、良性とも悪性とも言いにくいこうした概念は、MGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)、つまり「意義不明(これが正式な訳語のようだ)」と呼ばれることになった。定義は(IgM、軽鎖についてはBlood 2018 131 163も参照):

1. Mタンパク 3g/dl未満
2. 骨髄中の形質細胞クローンの割合が10%未満
3. CRABが見られない
 (C:高カルシウム、R:腎障害、A:貧血、B:骨病変)
4. その他のB細胞系腫瘍の増殖がみられない

 しかし、MIgをつくっているクローナルな細胞の意義は「不明」でも、MIgがあるだけで(だれがどこで産生しているかを問わず)意義が「大有り」の臓器がある。

 それが、よりによって腎臓なのである!



上段左からビリー・ザ・キッド、二コール・キッドマン、ハローキティ
下段左からジョン・F・ケネディ、王様と私、キッド・ロック



 MGRSは、提唱者が「MGRS:MGUSはもはやundeterminedでもinsignificantでもない」と題している(Blood 2012 130 4292)ように、こうしたモノクローナルな免疫グロブリン(MIg)の持つ腎毒性を強調した概念だ。

 ここでのポイントは、だれがどこで産生しているかを問わず、MIg自体に腎毒性があるということだ。根拠となったのは1991年、テネシー大学のAlan Solomon博士らによる実験だ(NEJM 1991 324 1845)。それによれば、ヒトBJタンパクをマウスに注射しただけでアミロイドーシスや尿細管沈着など、多彩な腎病変が再現された。

 では、どうやって腎毒性のあるMIgを減らす(除く)か?

 たとえば、MIgによる腎病変が上記CRABを伴う骨髄腫によるものなら、血液内科に相談して化学療法なり骨髄移植なりしてもらえばよい。しかし、腫瘍が姿をみせない場合(こうした悪い子達のことを、dangerous small B-cell clonesと呼ぶ)、コンサルトされた同僚もおいそれとは治療できない。

 そうなると、仕方がないので腎臓内科で腎炎に用いるような免疫抑制薬などを試すが、MGRSによる腎炎はそうでない(ポリクローナルで自己免疫的機序の)ものにくらべて成績がわるく、なかには後述するPGNMIDのように移植後に再発するようなものもある。
 
 そこで、(化学療法や骨髄移植などの)治療資源を「各政府の機関が割り振れるように(本当にそう書いてある、Nat Rev Nephrol 2019 15 45)」、MGUSから独立させてできたのが、MGRSなのである。つづく。