この腎疾患は腎生検の約0.6%程度と言われ、50歳前後に起こる。
蛋白尿(100%、ネフローゼレベルは38%)、血尿(~50%)、腎不全(60~70%)、高血圧(70%)を認める。また、何も治療しない場合に2~4年で末期腎不全に至ってしまう。補体は下がらないことが多い。この疾患の患者が移植をして、再発する割合は小さな研究ではあるが36%程度と言われている。
そもそも、この疾患はCongo-red染色陰性のアミロイド様物質に沈着を糸球体に認める疾患である。
確定診断には電顕が必要(ここは後で述べます)で、immunotactoid glomerulopathyは30~50nm幅の微小管状構造物が、Fibrillary GNでは16~24nmの同様の構造物が糸球体基底膜やメサンギウム領域に沈着する(蛍光抗体法でPeripheral(GBM) and mesangial patternをとり、IgG (C3c)が沈着する)。
CJASN 2006 |
原因:
当初は特発性と考えられていたが、2011年のレポートで3分の1が、悪性腫瘍、単クローン性ガンマグロブリン血症や自己免疫疾患を基礎疾患に有していたということが報告されている。
鑑別診断:
アミロイドーシス、Immunotactoid腎症、クリオグロブリン腎炎、Fibronectin腎症
予後:
半月体形成(半月体は基本的に基底膜破壊の修復過程)や尿細管間質繊維化などを併発した場合には腎予後は非常に悪い。また、特別な治療がないのが現状である(ACE-I/ARBなどが蛋白尿低下を目的として使用される)。
光顕所見:
糸球体基底膜肥厚を伴い(時に二重化)、メサンギウム基質の拡張を認める。半月体形成は17~31%程度に認められ、MPGNパターンなど様々な所見を認める。
矢印のところがメサンギウム基質の増加(up to dateより引用) |
基底膜の二重化所見を認める(AJKDより引用) |
蛍光染色:
IgG(IgG4単独となる場合が多い), C3, カッパとラムダの軽鎖沈着所見を認める。
AJKDより引用 |
電顕所見:
電顕では、先に示した基底膜、メサンギウム領域に沈着しているのを確認する。
大きさが、直径で
10nm:アミロイドーシス
16~24nm:Fibrillary GN
30~50nm:Immunotactoid glomerulopathy
となる。
矢印は基底膜への沈着 (Up to Dateより) |
また、Congo red陰性がアミロイドーシスとの鑑別になるとされてはいるが、2018年のレポートでCongo red陽性のFibrillary GNもcase seriesで示されておりCongo red単独で言うのは難しいと言うことは知ってもらいたい。
では、何を指標にすればいいのか?
DNAJB9 (DnanJ heat shock family member B9)というタンパクが注目されている。
これは、健常者やアミロイドの患者や他の糸球体疾患患者には発現していないが、Fibrillary GNの患者では糸球体に豊富に認められる(2017年レポート)。また、このDNAJB9は自己抗原、または自己免疫応答の標的になっている可能性がある。
2019年のレポートでも血清のDNAJB9が診断に有効であると報告がある(感度67%、特異度98%)。
このことから、今後蛍光抗体染色でDNAJB9が同定できれば、診断までに時間がかかってしまう電子顕微鏡を待つ必要はなく早期の診断が可能となり、またこれをターゲットとする治療がFibrillary GNを改善する治療になる可能性がある。
稀な疾患だが、非常に末期腎不全への移行の割合が高い疾患であり治療の発達などにも注目したい。
初めからRareな疾患で非常に申し訳ない。
あまり面白くない分野かもしれないが、参考になれば幸いである。