2019/05/10

腎炎を簡単に振り返る〜Immunotactoid glomerulopathy〜

今回は、前回のFibrillary GNと鑑別されるImmunotactoid glomerulopathy (ITG) について触れたいなと思う。
まず、日本語ではイムノタクトイド糸球体症と訳される。

少しFibrillary GNとの違いを先に書きたいと思う。
似ている点:
・沈着する部位が両方ともメサンギウム領域と基底膜領域
・コンゴレッド染色で両方とも陰性

異なる点:
・Fibrillary GNでは10-30nmのFibris(細繊維)が沈着し、Immunotactoid glomerulopathyでは20-90nmのTubules(微小管)が沈着する。

では、簡単にImmunotactoid glomerulopathyについて説明する。
定義:IgGの微小管の糸球体沈着によって生じる疾患。微小管は典型的には直径30nm以上。Congo red染色陰性

疫学:
腎生検の0.1%未満に生じる稀な疾患
50〜60歳に多く、女性がわずかに起こりやすい。白人が多い。

臨床所見:
蛋白尿(100%):ネフローゼ症候群(70-75%程度)
血尿(70%)
腎不全(Crea≧1.5):50-55%
低補体血症(C3,C4)が40%に生じる
M蛋白の出現(63%)
血液悪性腫瘍が背景にある(38%):骨髄腫、CLL、リンパ腫など
HIVやHCVに合併する症例もある。

鑑別にあげる疾患(鑑別ポイント):
・Fibrillary GN:細繊維沈着(20nm)、蛍光染色でIgG4が染まることが多い
・Cryoglobulinemic GN:血清のクリオグロブリン陽性
・Fibronectin glomerulopathy:30nm未満の細繊維沈着、IgG陰性、免疫組織染色でfibronectin陽性
・TypeⅢ collagen glomerulopathy:電子顕微鏡でperiodic banded collagen fibrisを認め、免疫組織染色でtypeⅢ collagenを認める。
・Nail-Patella syndrome:爪の低形成と骨異常を伴う稀な疾患、糸球体基底膜に電子顕微鏡でperiodic, sparse collagen fibrisを認める。

治療:
基礎疾患に血液腫瘍などがあれば、それに対する化学療法

予後:
データが少ないが、半分が部分寛解し、17%が末期腎不全に至る。
化学療法に反応する場合もある。
腎移植後の再発は50%未満

光顕所見:
様々な所見を認める。
Membranoproliferative(56%)、Membranous(31%)、Endocapillary proliferation(13%)
好酸球浸潤によるメサンギウム領域の拡大、membranous patternではspike形成が見られることも。


Membranoproliferative pattern, mesangial matrix expansion
蛍光所見:
IgG優位の沈着(稀にIgAやIgMも):IgG1がもっともサブクラスでは多い
kappa, lambdaに関しては69-93%がどちらかの沈着の場合が多く、kappaの場合が多い
C3は陽性の場合が多く、C1qは陽性にならない場合が多い。


IgGがメサンギウム領域と基底膜領域に陽性の所見
電顕所見:
30nmより大きな微小管の沈着
内皮下に不規則に沈着。上皮下沈着なども見られることはある。


35nm程度の微小管の沈着所見を認める。

左がFibrillary GNでFibris沈着、右がImmunotactoid glomerulopathyでmicrotubulesの沈着を示している。


診断のチェックリスト:
・Monoclonal immunoglobulinの染色パターン
・Congo red 陰性で沈着物が30nmより大きいもの


腎生検でこの疾患の診断がされた場合には基礎疾患として、何かないかをしっかりと検査をすることは非常に重要である。
また、Fibrillary GNで陽性だったDNAJB9は陰性であるので注意である。

また、何処かのタイミンングでこれらの総まとめをしたものを解説できればなと思う。