2016/11/18

慢性の高カリウム血症の治療

外来患者でも高カリウム血症の人によく会うと思う。
特に慢性腎不全の人などは高カリウム血症できて、「また、たくさんカリウム多いもの食べたでしょ〜?」って会話を外来で繰り広げるかもしれない。

まず、高カリウムの主なリスクはなんなのだろう?
・eGFR低下、男性、RAS阻害薬(特にdual RAS 阻害薬)、糖尿病
上記は主なリスク(am j nephrol 2015 41 456-463)になる。

特にdualでの高カリウム血症はNEJMのNEPHRON-Dというものであり、覚えておくといいかと思う。

僕らは急性の高カリウム血症の治療はグルコン酸カルシウムを投与して、GI療法をして、利尿薬を使用してなどとするが、慢性的な高カリウム血症の治療はどうするのがいいのか?

例えば、尿からのカリウム排泄増加として利尿薬やフロリネフなどのミネラルコルチコイド刺激薬などが言われている(kidney Int2009 Oct;76(8):877-84)
しかし、体液量が低下している人にとっては使用しづらい。

そこで、やはり僕らが使っている陽イオン交換樹脂が一つは出てくる。
一つはカルシウム型でもう一つがナトリウム型である。
カルシウム型は商品名:カリメート、アーガメイトであり、ナトリウム型は商品名:ケイキサレートである。違いは交換がNaとCaで違い、ケイキサレートの方が下痢しやすいなどとも言われるがどうであろう?
イオン交換樹脂でいい点としては正常Kの人には利点はないということである。つまり低カリウムにはしない(J AmSoc Nephrol 91924-19301998)

新たに薬が出ているのもおさえるべきである。
PatiromertとZirconium cyclosilicateである。
この二つに関しては、様々なRCTが出ているが、それぞれNEJMのは押さえておくと良い。

また、副作用に関してはPatiromerは便秘や低マグネシウム血症があり、Zirconium cyclosilicateは浮腫の副作用があるということは押さえておくといいと思う。

日本には2016年現在認可されていないものではあるが、慢性期の高カリウムの治療も変わると感じる。



2016/11/17

クロールって注目度低い? クロール異常について

クロールの異常はあまり無視してしまうことが多いと思う。
かくいう僕もそうである。
今回書くことが、自分の戒めとみなさんの何か診療につながればと思う。

クロールは前述した通り、濃度で見ていることに注意である。

■低クロール血症:98mEq/L未満をいうらしいが大抵は引っかかりそうである。
−起こること
 :ECF低下、細胞内アシドーシス、カリウム低下、重炭酸の産生亢進、血清浸透圧低下

−原因としては
 :代謝性アルカローシス、低ナトリウム、フロセミド、サイアザイド、AG上昇性の代謝性アシドーシス、Bartter syndrome、Cystic fibrosisなどが挙げられる。

なので、低クロール血症から診断できる疾患もあるためしっかりと頭の片隅に置いておく。特にフロセミドなどを使用することでのCl depletion alkalosisは重要な概念であり、ブログ内でも記載してあるので、注意して見ていただきたい。

■高クロール血症:108mEq/L以上をいうが以外に多く周りにいるのではないか。
−原因として
:覚えておいてもらいたいのは、Pseudo hyperchloremiaである。つまり本当は上がっていないが、上昇して見えることである。この原因は臭素中毒やヨウ素中毒がある。
なぜ、臭素などでクロールが高くなるかに関しては測定で用いているイオン電極法では臭素がクロールとしてカウントされてしまい測定上は高クロール血症になる。
日本の市販薬(ナロンエース)などにも臭素は含有しているため、大量内服者は注意である。

:そのほかは、生理食塩水の大量投与、自由水欠乏、AG非開大性アシドーシス(トルエン大量服薬などで急峻な酸の陰イオン増加した場合)などがある。

原因からわかるようにある程度病歴などで鑑別は絞れてくる。
そのため、患者さんの話に耳を傾け、クロールにも注目してあげよう!きっと、僕たちが診断をするのに、情報は多い方がいいので。。



2016/11/16

腎病理の蛍光染色に関して

腎病理において蛍光染色の理解が自分は不十分である。
蛍光染色は何のためにするか?
:主にタンパクなどの抗原性を有する物質に対して特異的に作用する抗体で抗原抗体反応を起こすことで組織中の物質を検出しようとするもので、これを蛍光抗体法(Immunofluorescence Microscopy:IF)という。これは蛍光色素を標的とするため光る。
これの例としてはIgG,IgM,IgA,C3,C1q,κLC,λLC,C4dなどである。

しかし、逆に不溶性色素を生成する酵素を標的とした抗体を用いる方法が酵素抗体法と呼ばれる。
これの例としてはSV40,CMV,amyroid proteinなどである。

想像はつくだろうか?

あとは、どの疾患に何がつくかではあるが、基本的には糸球体の構造を念頭に置き、係蹄壁かメサンギウム領域につくかを考える。
あとは沈着パターンであり、係蹄壁の沈着が線状か顆粒状かである。

例えば、IgA腎症:メサンギウム領域にIgA、C3沈着がある。膜性腎症では係蹄壁に顆粒状にIgG、C3沈着がある。感染後糸球体腎炎、膜性増殖性腎炎では、メサンギウム領域・係蹄壁にIgG、C3沈着がある。糖尿病性腎症や抗糸球体基底膜抗体症候群は係蹄壁に線状にIgG沈着する。

ただ、基本的には蛍光染色は確定診断となりうるのはIgA腎症やC3腎症などくらいであり、あとは膜性腎症の際の特発性であればIgGのサブクラスでIgG4が優位となるなどの点かと思う(今はPLA2Rもでて、特発性の診断も容易になった。)

まとまったものとしてはheptinstall's Pathology of the kidneyにあるため参考にしていただきたい。







クロール(Cl)って注目度低い? 機序について 

僕は電解質が出来ないながらも好きある。
電解質といえば王道は一価であればナトリウム、カリウムであり、二価であればリン、カルシウム、マグネシウムである。
その中でルーチンで我々が測るクロールについて少し考えてみた。

クロールは細胞外に存在する最も多くの陰イオンであり、高クロール血症はナトリウムと同じように血漿のクロール濃度の上昇と定義されている。

高クロール血症を認めることに弊害はあるのか?
→腎血流量の低下(J Clin Invest. 1983;71:726–35.)、腎臓や消化管の間質浮腫(J Surg Res. 2011;166:120–30.)、重症患者の死亡率の増加(J Crit Care.
2011;26:175–9.)、AKIの患者の回復が悪くなり生存率が低下する(Kidney Int. 2009;76:422–7.)ことが言われている。

では、クロールは濃度を腎臓でコントロールいている。では、腎臓がどのように調整しているのか?
糸球体:クロールは自由に通過
近位尿細管:約60%が再吸収される(S1,S2領域でNaや他の陰イオンが再吸収され、クロールの濃度は上昇し、S3領域で吸収される。もちろん、S1,S2領域でもクロール−anion 高関係があり吸収される)。
ヘンレの太い上行脚:クロールの再吸収に重要な場所である。
遠位尿細管:NCCチャネルでクロールの吸収を行う。
集合菅:重要であり、Naと異なり尿細管と血管の荷電差からクロールの吸収が糸球体傍から生じる。pendrinからもクロールは吸収される。

本当に上記には簡単に記載している。

少し、クロールって意外に重要なんだな?って思っていただけたら嬉しい。
次回は高クロール血症の話に触れたいと思う。