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2019/04/26

尿から色々と考えてみよう (尿中Kのポイントを抑えよう!)

 続いて尿中カリウム(K)について考えてみる。

 尿中Kに関しては、K異常の際に使う場面が多い。

 使用する理由はK異常の原因として、Kが尿から喪失しているor喪失していないか、喪失していない場合に、他の部分(下痢など)から起こっているかを知る手助けになるためである。

 まず、正常な場合で尿中K排泄は食事からのK摂取量に応じ、10-15mEq/day〜400mEq/dayと幅が広い。

 一般的に低K血症時に、スポット尿中Kが5-15mEq/L以下であれば、腎臓以外の部分からのK喪失を考え、尿中Kが40mEq/Lより多い場合には腎臓からのK喪失を考える必要がある。

 ただ、この数値はあくまでも目安であることを忘れてはならない。現在の内服薬や治療などによって数字が大きく変わることも認識しておく必要がある。

 ただし、このスポット尿での判断の時に注意しなくてはならないこともある。

 それは、尿の濃縮による数値の変化である。

 例えば、循環血液量が減少している低K血症患者で尿中K排泄が40mEq/Lより多い場合に、安易に腎性の喪失!と考えるのは危険かもしれない。

 もしその患者の循環血液量が減少している場合は、尿が最大濃縮しているので、尿中Kは数値上高値に見えるが、濃度として濃くなっているだけで、正常な反応なのかもしれないということを忘れてはいけない。

 同様に尿中Kが15mEQ/L未満であった場合に、安易に腎外性の原因を考えるのも危険かもしれない。

 例えば、患者さんがトルバプタンなどを使用していればどうか?

 尿中の濃度が薄くなり、実際はKは排泄されているのに尿中Kの数値上は出ていないというように見えてしまう可能性がある。

 なので、このことからも循環血液量の把握、薬物の把握などは知っておくことは非常に重要である。

 低K血症で、腎外性の喪失の場合は治療に奏功しやすく(原因が解消していれば)、腎性の場合は治療が困難なケースが多い。

 尿中電解質が測れない施設では、このような臨床での治療反応性ということも原因推測の判断材料として重要である。

 測定に関して:

 24時間蓄尿がスポット尿における不正確さを解決する一番の手段ではある。
 
 TTKG(trnstubular pottasium gradient)も同様にこの随時尿の不正確さを改善する手段として用いられた。


TTKG=Uk × P osm / Pk × U osm 
 (Uk:尿中K、P osm:血漿浸透圧、Pk:尿中K、U osm:尿中浸透圧)


 TTKGは皮質集合管部分のK濃度と血清K濃度の比較である。

 つまり、血清Kに比べ尿中Kはどのくらい多く or 少なく出ているの?という比較である。

 高K血症があれば尿にKを出そうとして多くなるから、TTKGは高値になり、低K血症では逆に尿中に出さないようにしてTTKGは低値になる。

 基準値は5以上とされていて、 高K血症では、TTKG>7になり、低K血症では、TTKG<3となる。

 このTTKGはアルドステロンとの相関性が言われていて、高K血症の時にTTKG<6であれば皮質集合管での不適切な反応が起こっている(適切なアルドステロン出てないなど)を考える必要がある。
 
 ただ、このTTKGを用いる時に2つの注意点が必要である。

 ・少なくとも尿中Na25mEq/L以上ある必要がある。
 ・尿の浸透圧が血清浸透圧と同等またはそれ以上の場合

 上記の場合にのみTTKGは使用できることは認識しておく。

 ただ、内髄質集合管の部分で尿素の吸収が生じていることがわかり、このTTKGの使用には使用に疑問が投げかけられ、作成者本人からも使用しないほうがいいよと2011年に発表された。

 TTKGに代わるものとして、尿K / Cre が有用性があるのではと言われ使用されている。
 
 低K血症で、尿K / Cre の比が 13mEq/g ( 2.5mEq/mmol)未満であれば、尿からKが漏れていない病態(腸管喪失、食事摂取不足、細胞内K移動)などを考える。

 下記はよく用いられるアルゴリズムである。





 また、今回は詳しくは触れないが前回のClのところでも触れた内容で尿中K濃度と酸塩基
平衡異常には密接な関係があり、それによって疾患を絞れることは覚えておいてもいいかもしれない。




2019/04/23

尿から色々と考えてみよう (尿中Clは意外にも有用!?)

 次は尿のクロールについて考えてみよう。

 クロールに関しては、血中クロールの記事を以前に書いている。

 しかし、尿のクロールに関しては注目しているだろうか??

 多くの読者は首を横に振ると思う。この文章から少しでも注目してもらえれば嬉しい。

 UCLやFECLなどはNaと同様に有効循環血液量の推測の間接的なマーカーとして用いられる。UNaとUCLを共に用いることは、特に酸塩基平衡異常を伴う場合には有効循環血液量の推測に有用とされている(AJM 2017)。

 一番多く知られているのが、尿中Clは代謝性アルカローシスの際にCl含有の輸液に対して反応性かどうかを判断する材料となり、それによって原因の推測ができるツールである。

 −尿中Cl<15〜20mEq/Lであれば輸液反応性で、嘔吐、胃液吸引などを考える。上記記載の抗生物質使用も頭の片隅には置いていただきたい。
 −尿中Cl>15〜20mEq/Lであれば輸液反応不良で、Bartter症候群やGitelman症候群やミネラルコルチコイドが上がる病態、甘草などの使用を考える。




 今度は、基本的には尿中Naと尿中Clは同じ動きをするが、例外を見ていこう。

 ・例えば、尿中Naが多く尿中Cl低下があり、循環血液量減少がある場合にはどう考えるだろうか?

 →尿細管で再吸収できない陰イオンが存在することを考える。

 この陰イオンが何かであるが、尿中pHを確認する。

 →尿中pHが7や8であれば再吸収されていない陰イオンは重炭酸イオンと推測され、大量嘔吐や胃管チューブからの胃液の大量排液で、まず水素イオン喪失が生じる。また、NaHCO3が大量に濾過し近位尿細管での再吸収能を超え、遠位尿細管に到達する。
遠位尿細管で、胃液喪失で循環血漿量が低下していることでアルドステロンが働き、Na再吸収が生じ、K尿中排泄が生じる。そのため、低K血症を生じる。尿中ClはNaと同様に動き再吸収されるため尿中Clは低下する(下表C)。尿中Naは再吸収できないNaHCO3の形で排泄され増加する。このようなケースでは、尿中Na/Cl>1.6となる。

 →尿中pH<6であれば、他の再吸収できない陰イオンの存在を考える。ketoanion、チカシリンクラブラン酸、ピペラシリンタゾバクタム、カルベニシリン二ナトリウムなどの抗生物質などを考える。循環血液量が減少している場合に、これらの薬物を投与すると再吸収できない陰イオンとして働き、Naとくっついて遠位尿細管に到達する。循環血液量が低下しており、アルドステロンが働き、Kの尿中排泄が増加する。そして、間在細胞で水素イオンの排泄が生じ尿中pHは低下する。この場合も低K血症を生じる(下表D)。


CJASN 2019


 では、尿中Clが高くて尿中Naが低い逆の場合はどうか?

 →これは、下痢の場面で見かける場合が多い。下痢によって、重炭酸イオンやカリウムが排泄され循環血液量減少、代謝性アシドーシス、低カリウム血症になる。アシデミアになるため尿は陽イオンを排出しようとして、アンモニウムイオンを排泄する。それと同時に尿中Clも排泄され、尿中Clは高くなるという現象が生じる。尿中Naは循環血液量維持のためになるべく再吸収され少なくなる。この場合は、尿中Na/Cl<0.76となっていることが多い。

 少し、細かな話で難しくなってしまったかもであるが少しでも理解の助けになれば嬉しい。






2019/03/07

尿からも色々と考えてみよう (尿中Naの使い方と注意点)

 尿の生化学検査を使うことは多いだろうか?

 腎臓内科医は使うことも多いかもしれないが、使い道に迷う時も多いと思う。

 今回は基礎的なことから少しこの部分に触れたい。

尿中Na (ナトリウム)

 通常は尿中Na排泄量は、食事の摂取量から汗、便排泄での喪失量を差し引いたものになる。通常は40-220mEq/day程度と言われる。

 有効循環血液量が少ない時は、交感神経やRAA(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン)系が働き、尿中Na排泄を<15mEq/Lにし、Na喪失を避け有効循環血液量を維持する。

 有効循環血液量が多い時は、ANP(atrial natriuretic peptide)などが放出され、尿細管でのNa再吸収を抑制し尿中Na排泄を促進している。

 ☆尿中Naは有効循環血液量を間接的に測定する手段として、Na異常症の診断にも用いられている。

 また、FENaを用いる場面も多い。これは、腎臓から尿のNa排泄割合を示している。


FENa = (UNa × P crea / P Na × U crea) × 100


 尿中Na濃度は利尿剤などを使用している場合などは測定誤差が出てしまう。

 尿中NaやFENaを利用する場面

 ・AKIの原因が腎前性か腎性(ATN:急性尿細管壊死)かを鑑別する材料として使用される。

 尿中Na<15mEq/LやFENa<1%は腎不全の原因が輸液に反応する腎前性が原因を示唆する。

 もともと腎機能のベースが悪い(CKD)の人にもこの式は使用できるのか?

 →正常腎に比して尿中Na移行が少なく、反応は遅くなることに留意して使用すれば有用。

 この鑑別方法を用いて、鑑別できない場合はあるか?

→下記の病態には注意が必要

 早期:腎血管収縮が生じGFRが低下、まだ尿細管は問題なし(腎前性の値が出る)
 晩期:早期の状態が持続し、尿細管壊死が生じ尿中Na増加(腎性の値が出る)

 上記の場合は、測定するタイミングによって数値が変化するので注意する。

 上記の状態を起こしうるものとして、下図にもあげたような敗血症やNSAIDs使用や横紋筋融解症など我々が遭遇し安いものということはチェックしておく必要はある。




 ☆FENaの感度・特異度が最も高い場合は乏尿を伴い、GFRが低下している場合であることは知っておくべきである!

 FE urea

 利尿剤使用時は尿中NaやFENaの数値は正確ではなく、その場合にはFEureaが診断の助けとなる。


                                 FE urea = (U urea × P crea / P urea × U crea) × 100


 FE urea < 35%が有効循環血液量減少を示唆すると言われている。

 ureaは水とともに近位尿細管で再吸収されるため、サイアザイドやループ利尿薬の使用での影響を受けない。

 しかし、近位尿細管の障害を生じうるアセタゾラミド投与中やマンニトール、グリセオールなどの浸透圧利尿薬使用中は正確ではなく、urea産生が増加しうるタンパク質過剰摂取や体内異化の亢進での使用は注意する。

 副腎不全時は、遠位尿細管でのミネラルコルチコイド作用不足により、Na利尿が生じ有効循環血液量が減少しFE ureaも減少する。

 FE urea使用の注意点は?

 ・利尿剤の使用がない状態ではFENaに代わって使用すべきではない。

 ・敗血症や高齢者使用時には注意(エンドトキシンや高齢によりurea transporterがdown regurateして、FE ureaの値が高く出やすくなってしまう。)