2019/03/07

尿からも色々と考えてみよう (尿中Naの使い方と注意点)

 尿の生化学検査を使うことは多いだろうか?

 腎臓内科医は使うことも多いかもしれないが、使い道に迷う時も多いと思う。

 今回は基礎的なことから少しこの部分に触れたい。

尿中Na (ナトリウム)

 通常は尿中Na排泄量は、食事の摂取量から汗、便排泄での喪失量を差し引いたものになる。通常は40-220mEq/day程度と言われる。

 有効循環血液量が少ない時は、交感神経やRAA(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン)系が働き、尿中Na排泄を<15mEq/Lにし、Na喪失を避け有効循環血液量を維持する。

 有効循環血液量が多い時は、ANP(atrial natriuretic peptide)などが放出され、尿細管でのNa再吸収を抑制し尿中Na排泄を促進している。

 ☆尿中Naは有効循環血液量を間接的に測定する手段として、Na異常症の診断にも用いられている。

 また、FENaを用いる場面も多い。これは、腎臓から尿のNa排泄割合を示している。


FENa = (UNa × P crea / P Na × U crea) × 100


 尿中Na濃度は利尿剤などを使用している場合などは測定誤差が出てしまう。

 尿中NaやFENaを利用する場面

 ・AKIの原因が腎前性か腎性(ATN:急性尿細管壊死)かを鑑別する材料として使用される。

 尿中Na<15mEq/LやFENa<1%は腎不全の原因が輸液に反応する腎前性が原因を示唆する。

 もともと腎機能のベースが悪い(CKD)の人にもこの式は使用できるのか?

 →正常腎に比して尿中Na移行が少なく、反応は遅くなることに留意して使用すれば有用。

 この鑑別方法を用いて、鑑別できない場合はあるか?

→下記の病態には注意が必要

 早期:腎血管収縮が生じGFRが低下、まだ尿細管は問題なし(腎前性の値が出る)
 晩期:早期の状態が持続し、尿細管壊死が生じ尿中Na増加(腎性の値が出る)

 上記の場合は、測定するタイミングによって数値が変化するので注意する。

 上記の状態を起こしうるものとして、下図にもあげたような敗血症やNSAIDs使用や横紋筋融解症など我々が遭遇し安いものということはチェックしておく必要はある。




 ☆FENaの感度・特異度が最も高い場合は乏尿を伴い、GFRが低下している場合であることは知っておくべきである!

 FE urea

 利尿剤使用時は尿中NaやFENaの数値は正確ではなく、その場合にはFEureaが診断の助けとなる。


                                 FE urea = (U urea × P crea / P urea × U crea) × 100


 FE urea < 35%が有効循環血液量減少を示唆すると言われている。

 ureaは水とともに近位尿細管で再吸収されるため、サイアザイドやループ利尿薬の使用での影響を受けない。

 しかし、近位尿細管の障害を生じうるアセタゾラミド投与中やマンニトール、グリセオールなどの浸透圧利尿薬使用中は正確ではなく、urea産生が増加しうるタンパク質過剰摂取や体内異化の亢進での使用は注意する。

 副腎不全時は、遠位尿細管でのミネラルコルチコイド作用不足により、Na利尿が生じ有効循環血液量が減少しFE ureaも減少する。

 FE urea使用の注意点は?

 ・利尿剤の使用がない状態ではFENaに代わって使用すべきではない。

 ・敗血症や高齢者使用時には注意(エンドトキシンや高齢によりurea transporterがdown regurateして、FE ureaの値が高く出やすくなってしまう。)