2017年8月1日火曜日

あたらしい造影剤をもとめて

 もしあなたがCTを撮ってこんな写真がみえたら、びっくりするかもしれない(Vasc Specialist Int 2015 31 67、以下の文章もこれを参考にしています)。



 大動脈の中に気泡が!?

 これは、CO2を大動脈に注射した写真。CO2は酸素の28倍溶けやすいので、血管内に注射してもすぐに血中に溶け込む(といっても、CO2として溶存するのはわずかで、多くHCO3-になる)。それで、すくなくとも静脈内と横隔膜より下の動脈であれば、塞栓が問題になることはないそうだ。

 この原理を利用して、CO2血管造影が、とくに腎障害や造影剤アレルギーで血管造影が必要な場合にわが国ふくめ世界で試みられているようだ。造影剤を極力減らすうごきは以前にもあって、たとえばシャントPTAも最近は造影剤を薄めたりエコーガイド下でしたりする。

 CO2造影は、CO2がさらさらしているので細いカテーテルでよい、さらさらしているので流れにそって細いところも流れやすい、ガスで浮き上がるのでたとえば臥位で腹部大動脈から流せば腹腔動脈など上向きの分枝を流れやすい、などの利点がある。

 いっぽう、腸管ガスがあるとじゃまになる、DSA(degital subtraction analysis)で流れたところが透明にうつることもあり体動があるとよい写真が撮れにくい、などの弱点もある。いまのところ、神経毒性と不整脈のおそれがあるため脳血管や冠動脈にはもちいられない。浮くのが便利と書いたが、裏を返せば、CO2が頭や脊髄に流れるおそれがあるのでうつぶせや頭を高くするのは禁忌だ。

 心配なのは、空気が混入していても見た目には分からないので空気塞栓のおそれがあることだ。それを防ぐために、シリンジを引っ張っても抜けない(写真はCO2-Angioset®)、チュービングシステムをCO2で充填する、などの工夫がなされている。




 また、知らないうちにCO2ボンベから過量のCO2が入ってしまうのも恐ろしい。そのために活栓などで工夫している(写真はAngiAssist®)。CO2は空気よりは重いが、ガス漏れすればカテ室で酸欠になるかもしれない。放射能にせよCO2にせよ、「空気のような存在」はよほど気をつけないと事故の危険があり、「空気混入報知器」みたいなものも同時に開発してほしい。



 しかし無害な液体造影剤がなかなかみつからない(MRIのほうはガドリニウムに替わるものも開発されていたと思う)のだから、CO2血管造影が確立してきているのは、造影剤がつかえない人たちにとって朗報と思う。今後、これがヨード造影剤にかわる第1選択になるかどうかはわからない。十分に安全対策した特別なシステムと施設で経験豊富なスタッフがやれる体制がとれるかどうかと思う。