ラベル 結石 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 結石 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2020/07/20

ADPKDに対する尿路結石、トルバプタン使用でどうなるのか?

今回、この話題に触れるのはあまり自分が考えたことがなかったためである。
まず、一般的にADPKDと結石に関して取り上げてみる。
・ADPKDにおける結石の割合:10-36%程度と言われる(Urol Ann 2012

・結石の成分:尿酸結石(40-60%)かシュウ酸カルシウム結石が多い(AJKD 1988)これは、一般の尿路結石に比べて明らかに尿酸結石の割合が高い。

・ADPKDにおける結石を有している場合の特徴:嚢胞が大きく、全腎容積量が非常に大きい。加えて、低クエン酸尿、高シュウ酸尿、高尿酸尿、アンモニア排泄が低く尿中pHが低いという特徴がある(CJASN 2009

このようにADPKDでは結石症は合併しやすいことがわかる。

我々は、ADPKDの治療にトルバプタンを選択する場合がある。このトルバプタンを使用することで尿路結石はどうなるのであろうか?増えるのか、減るのか?

今回、これを見た研究がCJASN 2020で出ている。
今回の研究では18歳以上でRavine criteria(LANCET 2014)でADPKDと診断された125人の患者を対象にしている。
治療投与前のベースラインと年のフォローアップの際に24時間蓄尿検査を行っている。
125人の患者で38人がトルバプタン治療・87人が非トルバプタン治療群であった。

トルバプタン治療群では、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸の尿中排泄量が減少し、尿中クエン酸や尿中カルシウム排泄量が増加した。
CJASN 2020より引用

また、尿中の酸排泄も低下し消化管からのアルカリ再吸収が増加した。
CJASN 2020より引用
ちなみに一般論として、尿路結石の予防としては、下記のものがある。
・水分を十分に摂る(1日尿量を2L以上にすることで結石再発リスクを減少できる)

・カルシウムを摂る(カルシウムは腸管内でシュウ酸と結合して便に排泄させ、尿中シュウ酸を減少)

・クエン酸を摂る(シュウ酸とカルシウム、リン酸とカルシウムが結合するのを抑制、また尿中pHを上昇させ酸性尿を是正させ尿酸結石、シスチン結石の予防に有効)

・シュウ酸摂取量を抑える(ほうれん草、キャベツ、ブロッコリー、竹の子、バナナ、玉露や抹茶や煎茶などのお茶、ココア、チョコレート、コーヒー、紅茶などを控える)

・ブリン体の多く含まれる食品や飲料を控える(プリン体は体内で代謝され尿酸となり、過剰摂取で高尿酸血症や酸性尿を引き起こす。)

・動物性のタンパクや脂肪の摂取を控える。(動物性タンパク質が多くなると尿中尿酸が多くなる、動物性脂肪が多いと腸内脂肪酸が増えてカルシウムと結合し、シュウ酸がカルシウムと結合困難になり、尿中にシュウ酸が多くなり結石ができやすくなる)



今回の論文結果からは、ADPKDに対してトルバプタンを使用することで結石の発祥というリスクを減らすことが示された。
個人的にはトルバプタンをあまりこの視点から見ていなかったので非常に参考になった。


2020/03/19

高カルシウム血症の新たな鑑別

 38歳男性。20歳代から尿路結石の既往あり、ESWL・経皮的切石術をうけたが両腎に結石が残存(石の成分は100%リン酸カルシウム)。血液・尿検査は以下であった。

iCa 1.35mmol/l
iPTH 3pg/ml
Cr 1.3mg/dl
25(OH)VitD3 40ng/ml
1,25(OH)2VitD3 100pg/ml

 尿pHは6.0、尿中Ca排泄量は400mg/d、尿中シュウ酸・クエン酸・リン排泄量は基準値内であった。 


Q:診断は(CJASN 2013 8 649をもとに作成)?


 本例の高カルシウム血症は軽度(およそ10.8mg/dl、こちらも参照)であるが、結石患者でもあり、カルシウム代謝に関わる何らかの異常を示すサインと受け止めたい。そのうえ高カルシウム尿症(300mg/d~、こちらも参照)を伴っているのだから、なおさらだ。

 なぜカルシウムが高いのか?iPTHが「適切に」抑制されており原発性副甲状腺機能亢進症は除外される。しかし、25(OH)VitD3が基準値範囲内なのに対して1,25(OH)2VitD3値が高い(60pg/mlまでを基準値としている施設が多いようだ)。

 1,25(OH)2VitD3は、下図のようにCYP27B1遺伝子にコードされた1α-水酸化酵素によって25(OH)VitD3から作られる。





 この酵素遺伝子は主に近位尿細管で発現しているが、1,25(OH)2VitD3が上昇する腎疾患はないか、あっても稀だ(Dent病など、こちらも参照)。それよりも考えたいのはサルコイドーシスなどの肉芽腫疾患だが(マクロファージにも発現しているので)、本例では検索され否定的だった。だとすると・・?


 A:CYP24A1遺伝子の変異


 じつは上図には続きがあって、下図のように25(OH)VitD3と1,25(OH)2VitD3はCYP24A1遺伝子のコードする水酸化酵素によって不活性化される。




 CYP24A1遺伝子に異常があると1,25(OH)2VitD3が分解されないので、たまる(25のほうは、他にも不活性化する酵素があるので、あまりたまらないとされている)。

 診断の手がかりは:

尿路結石や腎石灰化
骨密度も低い
高カルシウム血症・高カルシウム尿症
PTHが低い
正常程度の25(OH)VitD3
1,25(OH)2VitD3が高い

 など。こうした例で肉芽腫を除外後にVitD3の分解産物である24,25(OH)2VitD濃度を測定して低値を示し、CYP24A1遺伝子異常の同定に至る流れが多いようだ。

 治療として、通常の結石予防に加えて、P450代謝酵素であるCYP24A1の抑制を意図したケトコナゾール(J Clin Endocrinol Metab 2012 97 E423)・フルコナゾール(Clin Kidney J 2015 8 453)が試され、長期内服の安全性が検証されている。

 最初の報告は2011年に幼児症例だったが(NEJM 2011 365 410)、成人症例の報告も相次ぎ、異常SNPの頻度は4-20%とも言われる(CJASN 2013 8 649)。そのためか、最近は米国腎臓学会のフォーラムなどでも鑑別に挙がるようになってきた。




 まだ米国も含めて24,25(OH)2VitDが測定できる施設は限られているが、原理的には1,25(OH)2VitDと同様に測定できるはず。今後、結石・高カルシウム血症の鑑別として知名度が上がってゆけばより身近な検査になるかもしれない。

 



2019/09/18

尿酸値が低いことは問題ないですか?

我々は高尿酸血症の診断・治療は色々な知識があり、選択肢がある。
実際、患者さんも高尿酸血症に伴う痛風発作では疼痛も強く、尿酸が高くなることを恐れる人もいる。

では、尿酸が低い人はどうであろうか?
「尿酸が低いですが、大丈夫ですね。異常なしです!」
で帰してしまうのか?

今回は、その話題を少し取り上げようと思う。

低尿酸血症は定義上、血清尿酸値が 2mg/dL未満のものをいう。
1991年と昔の報告ではあるが、入院患者の2%、一般人口で0.5%と頻度は低い。

機序としては
・尿酸の産生低下
・尿酸の酸化
・尿酸の尿細管再吸収障害
にわかれる。

☆産生低下には、先天性障害・後天性障害に分かれる。
 先天性のものには、遺伝性キサンチン尿症やプリンヌクレオチドホスホリラーゼ欠損症
 後天性のものには、キサンチンオキシダーゼ阻害(アロプリノールやフェブロキサットなど)、重度肝障害
などがある。

☆尿酸の酸化
 人間は他の動物とは異なり尿酸酸化酵素を持っていない(つまり、酸化させることができない)。
 腫瘍崩壊症候群における急性腎不全の予防や治療に使用されるラスブリカーゼは尿酸を酸化させアラトインという物質に変換させる尿酸酸化酵素として作用する。
このラスブリカーゼの使用などで低尿酸血症になる。

実験医学オンラインより引用

☆尿酸の尿細管再吸収障害
これに関しても、先天性障害と後天性障害に分かれる。
 先天性のものには家族性低尿酸血症がある。家族性低尿酸血症は本邦で腎性低尿酸血症(RHUC)として知られ、ガイドラインがでている。
 これは、近位尿細管における尿酸再吸収トランスポーターの欠損で、URAT1/SLC22A12、GLUT9/SLC2A9の欠損が報告されている。


Up To Dateより引用
後天性のものには
  Fanconi症候群、体液過剰(近位尿細管の再吸収低下)、頭蓋内疾患(尿酸クリアランスが増加)、AIDS、薬剤(ベンズブロマロン、プロベネシド、高用量ST合剤、高用量サリチル酸など)※、炎症、妊娠、経静脈栄養管理、ホジキンリンパ腫などの悪性腫瘍、タマゴテングタケ中毒などがある。

※ちなみにARBのロサルタンなどは心臓移植でシクロスポリン使用に関連する高尿酸血症に対して尿酸を下げる作用として働く(URAT1の阻害)

では、結論の部分であるが低尿酸血症は多くの場合は無症状ではあるが、合併症では
・急性腎不全
・尿路結石形成
・可逆性後頭葉白質脳症
があり、これは知っておく必要がある。

・急性腎不全に関しては、RHUC患者の男性に多い。
起こるシチュエーションとしては激しい運動後、6-12時間以内に腰背部痛、腹痛、嘔吐が生じる。平均Crは5.5mg/dL 程度と言われ中には透析や慢性腎不全に移行するものも数は少ないが報告されている(NDT 2004)。
この病態は運動後急性腎不全(EIAKI:Exercise induced AKI)として知られている。

・尿路結石症に関しては、頻度は尿酸排泄が亢進する疾患で多くなる。RHUC患者では尿酸結石とシュウ酸カルシウム結石の形成合併が多い。

・PRESは頻度は非常に低いがRHUSの患者での報告はある(pediatrics 2011、 Eur J pediatrics 2013)。

なので、低尿酸血症は頻度はそこまでは高くはないが、出会ったらしっかりと鑑別を考える必要があるし、合併症の併発はないかの精査を行うことは重要である。


2012/05/09

尿管結石の各論

 各論で新たに学んだことを忘れぬように書いておく。各論一、高カルシウム尿(hypercalciuria、男性>300mg/d、女性>250mg/d)。腸管が悪い(過吸収)のか、腎臓が悪いのか(Ca wasting)などで分類しようと長いこと試みられてきたが、最近はあまり分類にはこだわらないようになったという(NEJM 2010 363 954)。

 高カルシウム尿を悪化させるものに1,25-OH vitamin D、高ナトリウム摂取、グルコース大量摂取、animal protein(酸の摂取)などがある。1,25-OH vitamin Dに関しては、尿細管でのリン再吸収障害→低リン血症→1,25-OH vitamin D高値→腸管からのCa/P吸収亢進→idiopathic hypercalciuriaと考えられており、尿細管タンパク質の遺伝子異常(NPT2a、NPT2c、PDZK1、NHERF1)が見つかっている(NEJM 2008 359 1171)。

 各論二、高シュウ酸尿(hyperoxaluria、>40mg/d)。enteric hyperoxaluriaについては前にも学んだが、Oxalobacter formigenesがいかにシュウ酸をエネルギー源にしているかが興味深かった。この細菌はoxalateを取りこんで代わりにformate(蟻酸)を放出するが、その際に差引きH+が一個細胞外にでる。これを繰り返すうちに細胞膜内外に電位差ができ、それにより生じるproton motive forceをATPに変換しているという。

 高シュウ酸尿の改善に高カルシウムな食事がよいというのは良く知られているが、この分野の第一人者はハーバード大のDr. Curhanだ(最初の論文はNEJM 1993 328 833)。カルシウムは食事から摂取するのがよく、600mg/d以上で効果が出始める。しかしカルシウム製剤では却って結石リスクが上がるらしい(Women's Health Initiative、NEJM 2006 354 1102)。

 各論三、低クエン酸尿(hypocitraturia、男性>450mg/d、女性>550mg/d)。先生はまず「クエン酸はどこで再吸収される?(近位尿細管)」と聞き、「低クエン酸尿は近位尿細管細胞内が酸性になる状況で起こる」と言う。すなわち①アシドーシス、②低カリウム血症(Kが細胞から出てHが細胞に入ってくるから)、③動物タンパクの大量摂取(ヒトの酸摂取のほとんどは動物タンパク由来だから)。

 各論四、高尿酸尿(hyperuricosuria、男性>800mg/d、女性>750mg/d)。urate + H ⇔ uric acid、電離定数pKaは5.5だから、酸性尿でこの電離平衡は右に傾き(水溶性の低い)尿酸が析出しやすくなる。前述のように高尿酸尿がある人は尿酸が核となってシュウ酸カルシウム結石の形成を助けるので尿をアルカリ性にしたり(クエン酸カリウムを高用量、20-30mEq 2x/d)、尿酸生成を抑えたり(allopurinol)する必要がある。

 おまけの各論五、シスチン結石。この病気の問題は近位尿細管におけるアミノ酸再吸収障害で、さまざまなアミノ酸が尿中に漏れるが特にシステインは水溶性が低いので石になる。治療は水分摂取と尿pHをアルカリ性にするのが基本だが、システイン二分子のdisulfilum結合を解くtioproninも用いられる。また通例struviteと言っているurea-splitting organismによる石の化学式はMgNH4PO4。