2019/09/18

尿酸値が低いことは問題ないですか?

我々は高尿酸血症の診断・治療は色々な知識があり、選択肢がある。
実際、患者さんも高尿酸血症に伴う痛風発作では疼痛も強く、尿酸が高くなることを恐れる人もいる。

では、尿酸が低い人はどうであろうか?
「尿酸が低いですが、大丈夫ですね。異常なしです!」
で帰してしまうのか?

今回は、その話題を少し取り上げようと思う。

低尿酸血症は定義上、血清尿酸値が 2mg/dL未満のものをいう。
1991年と昔の報告ではあるが、入院患者の2%、一般人口で0.5%と頻度は低い。

機序としては
・尿酸の産生低下
・尿酸の酸化
・尿酸の尿細管再吸収障害
にわかれる。

☆産生低下には、先天性障害・後天性障害に分かれる。
 先天性のものには、遺伝性キサンチン尿症やプリンヌクレオチドホスホリラーゼ欠損症
 後天性のものには、キサンチンオキシダーゼ阻害(アロプリノールやフェブロキサットなど)、重度肝障害
などがある。

☆尿酸の酸化
 人間は他の動物とは異なり尿酸酸化酵素を持っていない(つまり、酸化させることができない)。
 腫瘍崩壊症候群における急性腎不全の予防や治療に使用されるラスブリカーゼは尿酸を酸化させアラトインという物質に変換させる尿酸酸化酵素として作用する。
このラスブリカーゼの使用などで低尿酸血症になる。

実験医学オンラインより引用

☆尿酸の尿細管再吸収障害
これに関しても、先天性障害と後天性障害に分かれる。
 先天性のものには家族性低尿酸血症がある。家族性低尿酸血症は本邦で腎性低尿酸血症(RHUC)として知られ、ガイドラインがでている。
 これは、近位尿細管における尿酸再吸収トランスポーターの欠損で、URAT1/SLC22A12、GLUT9/SLC2A9の欠損が報告されている。


Up To Dateより引用
後天性のものには
  Fanconi症候群、体液過剰(近位尿細管の再吸収低下)、頭蓋内疾患(尿酸クリアランスが増加)、AIDS、薬剤(ベンズブロマロン、プロベネシド、高用量ST合剤、高用量サリチル酸など)※、炎症、妊娠、経静脈栄養管理、ホジキンリンパ腫などの悪性腫瘍、タマゴテングタケ中毒などがある。

※ちなみにARBのロサルタンなどは心臓移植でシクロスポリン使用に関連する高尿酸血症に対して尿酸を下げる作用として働く(URAT1の阻害)

では、結論の部分であるが低尿酸血症は多くの場合は無症状ではあるが、合併症では
・急性腎不全
・尿路結石形成
・可逆性後頭葉白質脳症
があり、これは知っておく必要がある。

・急性腎不全に関しては、RHUC患者の男性に多い。
起こるシチュエーションとしては激しい運動後、6-12時間以内に腰背部痛、腹痛、嘔吐が生じる。平均Crは5.5mg/dL 程度と言われ中には透析や慢性腎不全に移行するものも数は少ないが報告されている(NDT 2004)。
この病態は運動後急性腎不全(EIAKI:Exercise induced AKI)として知られている。

・尿路結石症に関しては、頻度は尿酸排泄が亢進する疾患で多くなる。RHUC患者では尿酸結石とシュウ酸カルシウム結石の形成合併が多い。

・PRESは頻度は非常に低いがRHUSの患者での報告はある(pediatrics 2011、 Eur J pediatrics 2013)。

なので、低尿酸血症は頻度はそこまでは高くはないが、出会ったらしっかりと鑑別を考える必要があるし、合併症の併発はないかの精査を行うことは重要である。