2019/09/24

RAS阻害薬投与時の血清Cr上昇気にしてますか?

たくさん色々と書きたいことはあるが、今日はこの話題。

みなさんはRAS阻害薬を投与する際に
「少し腎機能が悪くなることもありますよ、でも血清クレアチニンの上昇が30%以内であれば大丈夫ですよ。」(輸出細動脈の血管拡張→GFR低下のため)
とお話して、新規に投与する患者さんの採血を投与前と投与後1-2週間で採血をする場合も多い。

ご存知のように、初回投与時に腎機能の悪化が少しあっても徐々に改善していくし、腎保護にもつながるからいいんだよ というのがスタンスなのかもしれない。
(Key論文はONTARGET試験TRANSCEND試験)

では、本当に腎機能が悪化しても問題はないのか??
まず、BMJ 2017にRAS系阻害薬投与による血清Cr上昇と長期心血管リスクを検討した論文が出ている。

この論文では1997~2014年の英国プライマリ・ケア医のデータベースと病院エピソード統計を基にRAS阻害薬の服用開始した12万2363例を対象ににし、RAS系阻害薬開始後の血清Cr上昇と心腎アウトカムとの関連を調べている。

BMJ 2017より引用
上図に示すように10%未満をベースとしたときに、血清Cr悪化の度合いが強いほど死亡や心・腎アウトカムの悪化を認めた。


そして、今年CJASNでも同様の論文が出されている。

この論文ではスウェーデンの2006-2011年の期間の大規模コホートデータを用いて検討されている。最終的には31951人が研究に組み込まれて検討されている。
評価項目は死亡、心・腎アウトカムである。

CJASN 2019より引用
これも上図をみていただくとわかるが、クレアチニン上昇が10%未満の患者さんに比べて増加すればするほど死亡や心・腎アウトカムが悪化することがわかる。



では、この結果をみて我々はRAS阻害薬の処方をやめるべきなのか?

個人的な答えはNO!である。

まず、実際にCrを投与前後で測定しているのは、この研究でも18%であった。我々の臨床の経験としてもどうだろう?患者さんすべてには血液検査をやっていないと思う。リスクが高い人など絞っているのではないか?

今回の結果から、もし測定して10%以上増加する人の場合には死亡や心・腎イベントリスクが増加するということを留意しておく必要がある。