クマが冬眠できるのも、ペンギンの脚が凍らないのも、サケが淡水と海水を行き来できるのも、スナネズミが砂漠で生きられるのも、全部腎臓と関係ある(まだ詳しくわかってない部分もあるが)。ペンギンの話などは、ヘンレ係蹄のcounter-current exchangeを説明する際に多くの医学部の授業で取り上げられていることだろう。
腎臓は恒常性を守り、環境に適応する臓器。腎臓を学ぶと、世界の見方が変わる。先日、日本で酸塩基平衡についてレクチャする機会に恵まれたときも、それを強調したくてタイトルを『世界は酸塩基平衡でまわってる』にした。要は酸塩基平衡をbig pictureで捉えようということだ。その一部を説明してみよう。
まずはツカミでイルカの尿酸結石について説明した(J of Zoo and Wildlife Med 2012 43 101)。イルカの尿管結石は原因不明だが、水族館で飼育の群に見られ野性では稀だ。そして研究により水族館群では尿中のcitrateがほぼゼロなことがわかった(Comparable Med 2010 60 149)。これと酸塩基平衡の関係は、大有りだ。
Citrateは酸のバッファーだから、酸の大量摂取により枯渇する。これは私の推察だが、水族館で飼育の群は野生に比べて魚ばっかり食べて、しかも訓練のご褒美などでたくさん食べているのかもしれない。といわれても「魚がなんで酸なの?」と思うだろう。で、生物と酸(摂取と排泄)について話を始めた。続く。
[2013年3月追加]クマの冬眠の話がレビューされた(KI 2013 83 207)。例の尿素→アミノ酸リサイクリングのみならず、骨代謝や血管・血栓・創傷治癒についても記述されている。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2013/02/22
2008/09/29
生物系
クマが冬眠中に水分も取らずほとんど尿もせずに体液のバランスを保てるのはなぜか。冬眠中の代謝で生じる老廃物(おもに窒素)や尿はどうなるのか。腎臓内科の先生が講義をしていた。この先生は、以前にペンギンがなぜ足元まで体温をたもてるのか、という話もしていた。動脈と静脈を併走させて温かい血液と冷やされた血液が対向して流れることで、熱が循環し末梢も冷たくなりにくいそうだ。
冬眠中は脂肪をエネルギー源にして、たんぱく質が分解されて老廃物がでるのを防いでいるそうだ。また、エネルギーを消費して生じる水を水分として再利用するので、尿をほとんど作らないで済む(少し作られても膀胱でほとんど吸収される)らしい。また、アミノ酸が分解されて老廃物にならないような、リサイクル回路があるという。こういう話は面白く、食後のレクチャーでも眠くなりにくい。
[2019年10月4日追記]あれから11年、筆者共著の『腎臓診療の考具箱』にも、これを考具の一つとして紹介させていただいているので、よろしければ。
なお上述のアミノ酸(窒素化合物)のリサイクルについては、クマが冬眠前に食べるベリー類に多く含まれる、quercetin(クエルセチン)が大切だと考えられている。尿素代謝に大切なSIRT5(サーチュイン5)やCSP1といった酵素を活性化するそうだ。
さらに、補足すると・・。
近頃は、こうしたクエルセチンやサーチュイン5についての腎臓領域での研究が、よく見られる!
クエルセチンは、チロシンキナーゼ阻害薬dasatinib(ダサチニブ)と組み合わせることで老化細胞や老化物質を抑えることが期待され(senolyticsと呼ばれる)、糖尿病性腎臓病患者の皮下組織や血中から老化物質が選択的に減ったという第1相試験結果が報告されている(EBioMedicine 2019 47 446)。
またサーチュイン5は、近位尿細管で脂肪酸がβ酸化される細胞内器官を、ペルオキシソームからミトコンドリアにスイッチすることが示唆されており、サーチュイン5遺伝子ノックアウトマウスはミトコンドリアの負担が減ってAKIになりにくい(doi:10.1681/ASN.2019020163)。
これだけ真に受けると、「ベリー(写真は、クマもヒトも食べるランゴンベリー)を食べると老化しないけどAKIになりやすい?」となってしまうように、いまだ未解明の部分は多い。しかし今後も、この領域から目が離せない。
冬眠中は脂肪をエネルギー源にして、たんぱく質が分解されて老廃物がでるのを防いでいるそうだ。また、エネルギーを消費して生じる水を水分として再利用するので、尿をほとんど作らないで済む(少し作られても膀胱でほとんど吸収される)らしい。また、アミノ酸が分解されて老廃物にならないような、リサイクル回路があるという。こういう話は面白く、食後のレクチャーでも眠くなりにくい。
[2019年10月4日追記]あれから11年、筆者共著の『腎臓診療の考具箱』にも、これを考具の一つとして紹介させていただいているので、よろしければ。
なお上述のアミノ酸(窒素化合物)のリサイクルについては、クマが冬眠前に食べるベリー類に多く含まれる、quercetin(クエルセチン)が大切だと考えられている。尿素代謝に大切なSIRT5(サーチュイン5)やCSP1といった酵素を活性化するそうだ。
さらに、補足すると・・。
近頃は、こうしたクエルセチンやサーチュイン5についての腎臓領域での研究が、よく見られる!
クエルセチンは、チロシンキナーゼ阻害薬dasatinib(ダサチニブ)と組み合わせることで老化細胞や老化物質を抑えることが期待され(senolyticsと呼ばれる)、糖尿病性腎臓病患者の皮下組織や血中から老化物質が選択的に減ったという第1相試験結果が報告されている(EBioMedicine 2019 47 446)。
またサーチュイン5は、近位尿細管で脂肪酸がβ酸化される細胞内器官を、ペルオキシソームからミトコンドリアにスイッチすることが示唆されており、サーチュイン5遺伝子ノックアウトマウスはミトコンドリアの負担が減ってAKIになりにくい(doi:10.1681/ASN.2019020163)。
これだけ真に受けると、「ベリー(写真は、クマもヒトも食べるランゴンベリー)を食べると老化しないけどAKIになりやすい?」となってしまうように、いまだ未解明の部分は多い。しかし今後も、この領域から目が離せない。
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