以前にふれた、NHE3阻害薬tenapanorが透析患者さんの高リン血症をさげるかを調べた治験の結果が発表された(doi: 10.1681/ASN.2016080855)。4週間の内服で用量依存性にリン濃度低下がみられ、10mg1日2回と30mg1日2回でプラセボに対して有意差があった(1.7-1.8mg/dlの効果)。ただし下痢の副作用が多く、30mg1日2回の群では半分が途中で薬をやめていた。TenapanorはLubiprostone(アミティーザ®)のように便秘薬として開発された薬だから無理もなく、著者は「便が硬く通過時間のながい透析患者さんにとっては有益かもしれない」と考えている。
腸管のNHE3を阻害すると便中のリン含有量が増えることは事実だが、ナトリウムイオンと水素イオンの交換輸送体であるNHE3がどうリンに関係するかはまだわかっていない。腸管にはリン吸収にかかわるナトリウム依存のリン輸送体NPT2bというのがあるから、ナトリウムイオンの再吸収が阻害され腸管内にナトリウムがたまることと関係がありそうに思われる(tenapanorにNPT2bに対する阻害作用はないが;JASN 2015 26 1138)。腸管で塩素イオンの再吸収を阻害するlubiprostoneでも、リンはさがるようだ(コントロールのない一施設スタディはRRT 2016 2 50)。
このスタディは、いままで「いかに摂取をへらすか」「いかに吸着するか」が基本だった高リン血症治療に新たな考え方をもたらす可能性があると思う。これから研究が進んで、遠位ネフロンのように腸管の溶質吸収とその制御にかかわるさまざまな治療標的がみつかるかもしれない。みつかれば、いまは阻害薬を探す方法は high throughput screeningとかいろいろある。ただ下痢をおこす薬が多そうで、アドヒアランスをたかめるためにも腎臓内科医や透析医は尿量コントロールと同じように便の回数、ブリストル・スケール(図)などもみて調節しながら診療する必要が出てくるかもしれない。
[2017年6月追加]この薬が日本人の健康被験者を対象に1相治験された(Clin Exp Nephrol 2017 21 407)。両親、父方母方の両親が日本人で、日本で生まれ、5年間以上日本以外に住んでいない20-45歳の被験者83人をカリフォルニア州の治験センターWCCT Globalに連れていきTenapanorないしプラセボを飲んでもらった。
結果、予測されたように介入群では便Na排泄がふえた。プラセボが4mmol/dに対して30-40mmol/d、食塩換算で2グラムくらいだから、利尿薬ならぬ「利便薬」としても使えるのかも知れない。便リン排泄は、0.8-8.0mol/dふえたとあるが、統計学的有意差や信頼区間は明記されていない。第1相で安全性を示すのが目的だからだろうか。
安全性といえば、便の回数は180mg1日1回投与群で約6回、15-90mg1日2回投与群で約2回、プラセボで約1回だった。180mg1回投与は、大変そうだ。便の性状は投与群でBristolスケール約5、プラセボで3だった(上の写真)。副作用は下痢が2回嘔吐が1回。白人被験者では頭痛や腹痛もあったが、国民性ゆえ軽微なら訴えなかったのだろうか。
それにしても、WCCT Globalなんてしらなかった。日本語ホームページによれば、最高約10000ドルの報酬を提供するらしい。それでも元が取れるのだろう。日本市場に入るためには日本人データがあったほうが有利だから、外資企業がこうやって外国で日本人を対象に治験する時代なのだなと驚いた。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2017/03/14
2016/06/24
Playing with Intestinal Ion Channels
透析患者さんで便秘に対して小腸のClC2阻害薬Lubiprostone(アミティーザ®)を使ってから体重の増えが減ってリンも下がってきたという人がいて、まあ理にかなっていると思う(動物実験もあった)。これからは腸管のイオンチャネルも調べる時代か。尿細管が使えないんじゃ腸管を使うしかない。
というわけでせっかくネフロン各セグメントのイオンハンドリングをたくさん覚えたところで、こんどは消化管各セグメントのイオンハンドリングの勉強だ。ちょっと調べてもカリウムについてのレビューだけで63ページあって(Physiol Rev 2008 88 1119)、2回膜貫通・4回膜貫通・6回膜貫通・7回膜貫通チャネルなどきりがない。
さて、その消化管イオンチャネルと遊ぶ新薬Tenapanor(AZD1722、RDX5791とも)はLubiprostoneが便秘や機能性胃腸症に使われるように便秘型過敏性腸症候群用に開発され治験中の非吸収性NH3(Na+/H+ exchanger)阻害薬だ。透析患者の高リン酸血症に対してPhase 2bが進行中だ。薬は腸管のリン吸収チャネルNPT2bじたいには作用しない(NPTa、NPTcは腎にありKlotho/FGF23の支配をうける)が、下痢を起こしてリンを下げるとみられる。
腸管NHE3の発現はRSK2、LPA(lysophosphatidic acid)5の支配下にあり、CFTR(Cl-チャネル)、DRA(down-regulated in adenoma;Cl-/OH- exchanger)はLPA2の支配下にあるらしい(図、Cell Physiology 2015 309 C11)。NHE3をブロックして代償的にNHE3がupregulateされるかは知らない。腸の利尿剤?のようにもっと効果的に水を引き込むチャネルターゲットがあるのかもしれない。ClC3などは実はそうなのかもしれない。CFTRはどうだろう。
というわけでせっかくネフロン各セグメントのイオンハンドリングをたくさん覚えたところで、こんどは消化管各セグメントのイオンハンドリングの勉強だ。ちょっと調べてもカリウムについてのレビューだけで63ページあって(Physiol Rev 2008 88 1119)、2回膜貫通・4回膜貫通・6回膜貫通・7回膜貫通チャネルなどきりがない。
さて、その消化管イオンチャネルと遊ぶ新薬Tenapanor(AZD1722、RDX5791とも)はLubiprostoneが便秘や機能性胃腸症に使われるように便秘型過敏性腸症候群用に開発され治験中の非吸収性NH3(Na+/H+ exchanger)阻害薬だ。透析患者の高リン酸血症に対してPhase 2bが進行中だ。薬は腸管のリン吸収チャネルNPT2bじたいには作用しない(NPTa、NPTcは腎にありKlotho/FGF23の支配をうける)が、下痢を起こしてリンを下げるとみられる。
最近、この薬が透析患者のΔDWを緩和するかを調べるproof-of-conceptスタディがCJASNにでた(doi: 10.2215/CJN.09050815)。製薬会社がおこなったスタディだ。体重3%以上かつ2kg以上増える無尿の透析患者88人(外来、入院)で介入群には45mg 2x/dで開始し忍容性に応じて5mg 2x/dまで減量可とし4週間フォローした。食事はちゃんとしてくださいねと言っておいた(入院患者はNa 2g/d食)。
結果、便の量と便中Na排泄量は有意に増えたがΔDWや血圧は変わらなかった(プラセボ群と比べて有意差がないだけでなく、介入前の値が95%信頼区間に含まれている)。計算が合わないようにも思えるが、便の量は群間で80g/d程度しか変わらないので大した効果がなかったのかもしれない。薬は下痢にもかかわらずmeanで32mg 2x/dのまれていた。飲水量は管理していないがアンケートで介入群に口渇は多くなかった。
なおNH3は腎ではNH4+の排泄とHCO3-の再吸収をしているが、腸でNH3をブロックするとH+の排泄ができなくなりアシドーシスが緩和されるかと思いきや(スタディでもアシドーシス悪化を懸念してHCO3- 20mEq/l以下を除外している)、介入群でHCO3-値の変化に有意差はなかった。
結果、便の量と便中Na排泄量は有意に増えたがΔDWや血圧は変わらなかった(プラセボ群と比べて有意差がないだけでなく、介入前の値が95%信頼区間に含まれている)。計算が合わないようにも思えるが、便の量は群間で80g/d程度しか変わらないので大した効果がなかったのかもしれない。薬は下痢にもかかわらずmeanで32mg 2x/dのまれていた。飲水量は管理していないがアンケートで介入群に口渇は多くなかった。
なおNH3は腎ではNH4+の排泄とHCO3-の再吸収をしているが、腸でNH3をブロックするとH+の排泄ができなくなりアシドーシスが緩和されるかと思いきや(スタディでもアシドーシス悪化を懸念してHCO3- 20mEq/l以下を除外している)、介入群でHCO3-値の変化に有意差はなかった。
腸管NHE3の発現はRSK2、LPA(lysophosphatidic acid)5の支配下にあり、CFTR(Cl-チャネル)、DRA(down-regulated in adenoma;Cl-/OH- exchanger)はLPA2の支配下にあるらしい(図、Cell Physiology 2015 309 C11)。NHE3をブロックして代償的にNHE3がupregulateされるかは知らない。腸の利尿剤?のようにもっと効果的に水を引き込むチャネルターゲットがあるのかもしれない。ClC3などは実はそうなのかもしれない。CFTRはどうだろう。
2016/06/10
Metagenomics and CKD
60兆個の細胞でできたあなたには100兆個の腸内細菌がいる、とよく言われる。最近の研究だと30兆個の細胞でできたあなたに39兆個の腸内細菌がいるらしいが(doi: http://dx.doi.org/10.1101/036103)、とにかくたくさんいてその種類も割合も他の人とは違う。で腸内細菌叢は健康に大きな役割を果たしていることがわかってきた。また最近はどこもかしこも「抗生物質の乱用をやめよう(ヒトにも家畜にも)」と言っているが、抗生物質一粒でも腸内細菌叢は大きく変わるから、そういう面でも抗生物質の影響を考えなければならないかもしれない。
腸内細菌叢のように複数のゲノムを一気に調べることをメタジェノミクスという。アメリカではNIH human microbiome project、欧州はmetagenomics of human intestinal tract(MetaHIT)、中国は深圳華大基因研究院(BGI-Shenzhen)が有名で、日本もはやくから東京大学大学院新領域創成科学研究科などで行われている。16S mRNA sequencingといってV1-V9の可変ゲノム領域を調べphylogenic classificationを調べる方法と、whole genome shotgun sequencingというテラバイト級の情報量を処理する方法があるらしいが、いずれにせよ関心のある遺伝子を見つけてきて治療に活かせないか研究する。
ベンチャー企業もボストンエリアに始まって、いまはベイエリア、欧州、日本、どこにもある。今やメタジェノミクスは高校生物の副教材にも取り上げられ、日本人の腸内細菌叢は海藻のporphyranを分解する遺伝子が多い(Nature 2010 464 908)なんてことも書かれているらしい。元々日本人は腸内細菌に関心を払ってきた(ビフィズス菌、フェカリス菌、アシドフィルス菌、ラクトバチルス・カゼイ、酪酸菌など)から、23andMe®のように遺伝情報を提供するだけでなく、若い世代がこの分野で活躍したらいいなと思う。
さて腸内細菌叢は肥満、心血管疾患などさまざまな健康上の問題に関連しているがCKDも例外ではない。尿毒素物質(明らかな毒性があればuremic toxin、なければuremic soluteと呼ばれる)は単一ではなくEUTox projectで150以上がリストされているが、その多くが腸内細菌叢の代謝で産生される(ammonia、1-methyl guanidine、TMAO、H2S、短鎖脂肪酸、homocysteine、D-lactic acid、oxyalate、p-cresyl sulfate、indoxyl sulfate、indole-3-acetic acid、phenylacetic acid、hippuric acidなど;AJKD 2016 67 483)。とくにチロシンの代謝産物p-cresyl sulfateとトリプトファンの代謝産物indoxyl sulfateはよく調べられている。
CKD患者は非CKD患者と腸内細菌叢が違う(表;JASN 2014 35 657)。腸内細菌叢のバランスが崩れると腸管バリアの障害や炎症惹起、translocationなどが起こり、逆に尿毒症環境だと発酵菌(clostridium bifermentans、C. sporogenes、C. clostridiforme、C. leptum、Peptostreptococcus asaccholyticus、P. indolicus、Bacteroides thetaloaomicron、B. putredinis、Fusobacterium nucleatum、Actinomyces israelii、Megalofaera elsdinii、Propionibacterium acnesなど;FEMS Microbiol Ecol 1998 25 355)が増えて細菌叢のバランスがくずれる(Brachybacterium, Catenibacterium, Enterobacteriaceae, Halomonadaceae、Moraxellaceae、Nesterenkonia、Polyangiaceae、Pseudomonadaceae、Thiothrix族なども増える;KI 2013 83 308)。
この双方向の「腸腎連関」はよく知られた概念で、"The intestine and the kidneys: a bad marriage can be hazardous(Clin Kidney J 2015 8 168)"などと巧いこと言ったつもりの論文もあるが、ではどうしたらいいか。吸着剤(AST-120)。プレバイオティクス(善玉菌の餌;inulin、fructo-oligosaccharides、galacto-oligosaccharidesなど)。プロバイオティクス(ラクトバチルスなど)。プレバイオティクスとプロバイオティクス両方(シンバイオティクス;最近ではSYNERGYスタディ CJASN 2016 11 223)。いずれも血中尿毒素の低下がみられたが吸着剤以外は数週間の短いスタディで、CKD進行やESRD進展、all-cause mortalityなどへの効果はまだわからない。動物実験ではClC2チャネル活性薬(lubiprostone、アミティーザ®;JASN 2015 26 1787)など。
今月のJASNにCKD患者と非CKD患者の便中揮発性物質の比較をして間接的に腸内細菌叢の代謝差異をみた論文がでた(JASN 2016 27 1389)。冒頭のメタジェノミクスプロジェクトは健康な被験者を対象にしたものだ。CKD患者の腸内細菌叢のメタジェノミクスを調べて、スーパーコンピュータかなにかを使ってわーっと非CKD患者のそれと比較すれば、ターゲットを絞った治療ができるだろうか。まだ腸腎連関の病態解明の段階だとは思うが、新しい治療につながればいいなと思う。
腸内細菌叢のように複数のゲノムを一気に調べることをメタジェノミクスという。アメリカではNIH human microbiome project、欧州はmetagenomics of human intestinal tract(MetaHIT)、中国は深圳華大基因研究院(BGI-Shenzhen)が有名で、日本もはやくから東京大学大学院新領域創成科学研究科などで行われている。16S mRNA sequencingといってV1-V9の可変ゲノム領域を調べphylogenic classificationを調べる方法と、whole genome shotgun sequencingというテラバイト級の情報量を処理する方法があるらしいが、いずれにせよ関心のある遺伝子を見つけてきて治療に活かせないか研究する。
ベンチャー企業もボストンエリアに始まって、いまはベイエリア、欧州、日本、どこにもある。今やメタジェノミクスは高校生物の副教材にも取り上げられ、日本人の腸内細菌叢は海藻のporphyranを分解する遺伝子が多い(Nature 2010 464 908)なんてことも書かれているらしい。元々日本人は腸内細菌に関心を払ってきた(ビフィズス菌、フェカリス菌、アシドフィルス菌、ラクトバチルス・カゼイ、酪酸菌など)から、23andMe®のように遺伝情報を提供するだけでなく、若い世代がこの分野で活躍したらいいなと思う。
さて腸内細菌叢は肥満、心血管疾患などさまざまな健康上の問題に関連しているがCKDも例外ではない。尿毒素物質(明らかな毒性があればuremic toxin、なければuremic soluteと呼ばれる)は単一ではなくEUTox projectで150以上がリストされているが、その多くが腸内細菌叢の代謝で産生される(ammonia、1-methyl guanidine、TMAO、H2S、短鎖脂肪酸、homocysteine、D-lactic acid、oxyalate、p-cresyl sulfate、indoxyl sulfate、indole-3-acetic acid、phenylacetic acid、hippuric acidなど;AJKD 2016 67 483)。とくにチロシンの代謝産物p-cresyl sulfateとトリプトファンの代謝産物indoxyl sulfateはよく調べられている。
CKD患者は非CKD患者と腸内細菌叢が違う(表;JASN 2014 35 657)。腸内細菌叢のバランスが崩れると腸管バリアの障害や炎症惹起、translocationなどが起こり、逆に尿毒症環境だと発酵菌(clostridium bifermentans、C. sporogenes、C. clostridiforme、C. leptum、Peptostreptococcus asaccholyticus、P. indolicus、Bacteroides thetaloaomicron、B. putredinis、Fusobacterium nucleatum、Actinomyces israelii、Megalofaera elsdinii、Propionibacterium acnesなど;FEMS Microbiol Ecol 1998 25 355)が増えて細菌叢のバランスがくずれる(Brachybacterium, Catenibacterium, Enterobacteriaceae, Halomonadaceae、Moraxellaceae、Nesterenkonia、Polyangiaceae、Pseudomonadaceae、Thiothrix族なども増える;KI 2013 83 308)。
この双方向の「腸腎連関」はよく知られた概念で、"The intestine and the kidneys: a bad marriage can be hazardous(Clin Kidney J 2015 8 168)"などと巧いこと言ったつもりの論文もあるが、ではどうしたらいいか。吸着剤(AST-120)。プレバイオティクス(善玉菌の餌;inulin、fructo-oligosaccharides、galacto-oligosaccharidesなど)。プロバイオティクス(ラクトバチルスなど)。プレバイオティクスとプロバイオティクス両方(シンバイオティクス;最近ではSYNERGYスタディ CJASN 2016 11 223)。いずれも血中尿毒素の低下がみられたが吸着剤以外は数週間の短いスタディで、CKD進行やESRD進展、all-cause mortalityなどへの効果はまだわからない。動物実験ではClC2チャネル活性薬(lubiprostone、アミティーザ®;JASN 2015 26 1787)など。
今月のJASNにCKD患者と非CKD患者の便中揮発性物質の比較をして間接的に腸内細菌叢の代謝差異をみた論文がでた(JASN 2016 27 1389)。冒頭のメタジェノミクスプロジェクトは健康な被験者を対象にしたものだ。CKD患者の腸内細菌叢のメタジェノミクスを調べて、スーパーコンピュータかなにかを使ってわーっと非CKD患者のそれと比較すれば、ターゲットを絞った治療ができるだろうか。まだ腸腎連関の病態解明の段階だとは思うが、新しい治療につながればいいなと思う。
2016/05/15
Novel K binders
新規K吸着剤にもっとも関係ありそうなトピックが腸管におけるK handlingだ。経口摂取したKは90-95%が吸収され、便中にはわずかしか残らない。小腸では受動的な吸収、近位大腸ではnon-gastric H+/K+-ATPase(HKα2)により再吸収、遠位大腸ではBKチャネルにより排泄される(Pflugers Arch 2010 459 645)。
なおBKチャネルはαサブユニットの4量体だが、調整機能をもつβ2サブユニットがチャネル開放に関与しているかもしれない。またBKチャネルは腸管表面のenterocyteよりcrypt cellに多く分布しているらしい。BKを開くのは細胞内のcAMPで、またCFTRによるCl-の排泄ともリンクしてelectroneutralな輸送になっている。さておき腸管は無尿の透析患者さんでは腎以外のK排泄場所として相対的により重要になる(以前透析患者さんにRAA系阻害薬を使って高K血症になるかと質問されて、腸管K排泄と関係あると調べたことがあった)。
で、Patiromerはこの遠位大腸で排泄されてくるKを吸着する(とスタディのbackgroundに書いてあった)。Keyexalateもやはり大腸で主にKに吸着するとある。遠位大腸で吸着することでK gradientが維持されて排泄が持続するのだろうか。
リン吸着剤は毎回の食事と一緒に内服して食事に含まれるリンが吸収されないようにすると理解しているが、K吸着剤はどうなのだろう。Patiromerは治験では朝食と夕食時の1日2回だったが、現在収載された用量は1日1回食事と一緒にとある。ZS-9の治験(NEJM 2015 372 222)では最初の48時間は毎回の食事と一緒、3日目以降は維持期で朝食と一緒に1日一回だった。
新規K吸着剤での問題は、Patiromerでは低Mg血症で、K+だけでなくMg2+も吸着してしまうのか、下痢するからなのか。ZS-9では報告がないが、unhydrated K+の直径は2.98Å、ZS-9のポアもそれとほぼ同じに作られているのでK+選択性が高いせいか(Ca、Mgの25倍;Plos One 2014 9 e114686)。ただしZS-9はNa+とH+の交換にK+を吸着するので10g/d群で浮腫がみられた。
またPatiromerは他の薬を吸着してしまわないように6時間以上空けることとある。治験のときにRAA系阻害薬が6時間以上空けて内服されたのかは確認できなかった(そのままの量で内服したとある)。RAA系阻害薬も吸着されてK+がさがったという推理も可能だが、まあそういうことはスタディデザインの時にきっと考えてあることだろう。
なおBKチャネルはαサブユニットの4量体だが、調整機能をもつβ2サブユニットがチャネル開放に関与しているかもしれない。またBKチャネルは腸管表面のenterocyteよりcrypt cellに多く分布しているらしい。BKを開くのは細胞内のcAMPで、またCFTRによるCl-の排泄ともリンクしてelectroneutralな輸送になっている。さておき腸管は無尿の透析患者さんでは腎以外のK排泄場所として相対的により重要になる(以前透析患者さんにRAA系阻害薬を使って高K血症になるかと質問されて、腸管K排泄と関係あると調べたことがあった)。
で、Patiromerはこの遠位大腸で排泄されてくるKを吸着する(とスタディのbackgroundに書いてあった)。Keyexalateもやはり大腸で主にKに吸着するとある。遠位大腸で吸着することでK gradientが維持されて排泄が持続するのだろうか。
リン吸着剤は毎回の食事と一緒に内服して食事に含まれるリンが吸収されないようにすると理解しているが、K吸着剤はどうなのだろう。Patiromerは治験では朝食と夕食時の1日2回だったが、現在収載された用量は1日1回食事と一緒にとある。ZS-9の治験(NEJM 2015 372 222)では最初の48時間は毎回の食事と一緒、3日目以降は維持期で朝食と一緒に1日一回だった。
新規K吸着剤での問題は、Patiromerでは低Mg血症で、K+だけでなくMg2+も吸着してしまうのか、下痢するからなのか。ZS-9では報告がないが、unhydrated K+の直径は2.98Å、ZS-9のポアもそれとほぼ同じに作られているのでK+選択性が高いせいか(Ca、Mgの25倍;Plos One 2014 9 e114686)。ただしZS-9はNa+とH+の交換にK+を吸着するので10g/d群で浮腫がみられた。
またPatiromerは他の薬を吸着してしまわないように6時間以上空けることとある。治験のときにRAA系阻害薬が6時間以上空けて内服されたのかは確認できなかった(そのままの量で内服したとある)。RAA系阻害薬も吸着されてK+がさがったという推理も可能だが、まあそういうことはスタディデザインの時にきっと考えてあることだろう。
2015/11/30
Stool Electrolytes
私が初期研修したときには、腎臓内科が低Na血症の治療をするときに尿中Na喪失量だけでなく便中Na喪失量も測って、Naの出納を几帳面に測っていた覚えがある。そんな便中電解質だが、ここでは測れない。それに、調べた限りではどこでも測れないみたいだ。あの頃はどうしていたのだろう。
しかし測れないことはないはずだ。というのも、便電解質は慢性水様下痢で浸透圧性下痢と分泌性下痢を鑑別する便浸透圧ギャップ(stool osmolar gap, SOG)を計算する際に用いられるからだ。
SOGは便浸透圧 - [2 x (便Na + 便K)]で、unmeasured osmotic substanceが多ければ(125mmol/kgH2O以上)浸透圧性が示唆され、少なければ(50mmol/kgH2O以下)分泌性が示唆される。
浸透圧性下痢には下剤の使用や乳糖不耐症、分泌性下痢には蠕動異常、内分泌疾患(糖尿病、副腎不全、甲状腺機能亢進症、肥満細胞症)、膵腫瘍(VIPoma、カルシノイド、ガストリノーマ)、IBD、腸管腫瘍、薬剤などがある(NEJM 2013 368 757)。
あと便中電解質を利用するのが遺伝性塩素下痢(congenital chloride diarrhea, CCD)だ。便Clが100mEq/l、あるいは便Clが便Naと便Kの和よりも高いときに診断が示唆される。といってもCCDは稀で基本的には胎児・新生児疾患(写真)だが、腎外性の代謝性アルカローシスの鑑別で教科書に載っているから一応知っておかなければならない。成人発症も、ほんとうに稀だがある(Am J Med 1988 85 570、Am J Gastoenterol 2007 102 1329)。
しかし測れないことはないはずだ。というのも、便電解質は慢性水様下痢で浸透圧性下痢と分泌性下痢を鑑別する便浸透圧ギャップ(stool osmolar gap, SOG)を計算する際に用いられるからだ。
SOGは便浸透圧 - [2 x (便Na + 便K)]で、unmeasured osmotic substanceが多ければ(125mmol/kgH2O以上)浸透圧性が示唆され、少なければ(50mmol/kgH2O以下)分泌性が示唆される。
浸透圧性下痢には下剤の使用や乳糖不耐症、分泌性下痢には蠕動異常、内分泌疾患(糖尿病、副腎不全、甲状腺機能亢進症、肥満細胞症)、膵腫瘍(VIPoma、カルシノイド、ガストリノーマ)、IBD、腸管腫瘍、薬剤などがある(NEJM 2013 368 757)。
あと便中電解質を利用するのが遺伝性塩素下痢(congenital chloride diarrhea, CCD)だ。便Clが100mEq/l、あるいは便Clが便Naと便Kの和よりも高いときに診断が示唆される。といってもCCDは稀で基本的には胎児・新生児疾患(写真)だが、腎外性の代謝性アルカローシスの鑑別で教科書に載っているから一応知っておかなければならない。成人発症も、ほんとうに稀だがある(Am J Med 1988 85 570、Am J Gastoenterol 2007 102 1329)。
2013/07/01
クンクンする腎臓
私にとって腸管で興味深いことの一つは、それが無菌の水を吸収することだ。無菌の血液を受け取り処理する腎臓と違い、腸は魑魅魍魎な微生物達が跋扈する内腔からpure waterや栄養を吸収している。トランスポーターの選択性の高さと、細胞内の殺菌メカニズムが関与しているのだろう。
さて私達と同居している億兆の腸内微生物達だが、実は彼らが私達の身体の働きに今まで知られている以上に多くの役割を果たしているらしいことが分かってきた。これは医学界だけでなく、昨年はThe Economist、今年はThe New York Times Magazineが特集したくらい関心が高い。
私の知るところでは、5月に発表された論文(Nat Med 2013 19 576)が、L-carnitineを多く摂取していると腸細菌の構成が変わり代謝産物trimethylamine-N-oxide (TMAO)が多く作られ動脈硬化が進むことをマウスで示した。また血中L-carnitineレベルが高い(心疾患リスク群と考えられた)患者群のうちで、実際にリスクなのはTMAOレベルも一緒に高い群だけだったことも示した。
さらに、先日のPNAS論文(doi: 10.1073/pnas.1215927110)によれば、腸細菌は私達の血圧までもコントロールしているかもしれない。腸内発酵により生じる短鎖脂肪酸レベルが血圧低下と相関することは知られていたが、この研究はさらに短鎖脂肪酸が腎臓のjuxtaglomerular apparatusにある化学受容体Olfr78を介しrenin産生を制御して、血圧を変化させていることをマウスで示した。
話はこれで終わらない。なんとOlfr78とは、名前が示すように鼻腔の嗅細胞にある化学受容体(olfactory receptor、OR)と同じなのだ!つまり、腸管で細菌が作った短鎖脂肪酸が血中に入り腎臓に届き、腎臓はそれをクンクン嗅いでいるわけ。このグループによれば腎臓には少なくとも六つのORがあるらしい(PNAS 2009 106 2059)。
[2016年7月追加]赤身肉とESRDの相関を調べたシンガポールのスタディ(doi: 10.1681/ASN.2016030248)がでた。結果赤身肉は量に比例してESRDと相関し、白身肉、魚介類、野菜たんぱくのリスク低減比が有意だった。食事摂取記録によるもので、交絡因子もあるかもしれないが、やはりTMAOか。
さて私達と同居している億兆の腸内微生物達だが、実は彼らが私達の身体の働きに今まで知られている以上に多くの役割を果たしているらしいことが分かってきた。これは医学界だけでなく、昨年はThe Economist、今年はThe New York Times Magazineが特集したくらい関心が高い。
私の知るところでは、5月に発表された論文(Nat Med 2013 19 576)が、L-carnitineを多く摂取していると腸細菌の構成が変わり代謝産物trimethylamine-N-oxide (TMAO)が多く作られ動脈硬化が進むことをマウスで示した。また血中L-carnitineレベルが高い(心疾患リスク群と考えられた)患者群のうちで、実際にリスクなのはTMAOレベルも一緒に高い群だけだったことも示した。
さらに、先日のPNAS論文(doi: 10.1073/pnas.1215927110)によれば、腸細菌は私達の血圧までもコントロールしているかもしれない。腸内発酵により生じる短鎖脂肪酸レベルが血圧低下と相関することは知られていたが、この研究はさらに短鎖脂肪酸が腎臓のjuxtaglomerular apparatusにある化学受容体Olfr78を介しrenin産生を制御して、血圧を変化させていることをマウスで示した。
話はこれで終わらない。なんとOlfr78とは、名前が示すように鼻腔の嗅細胞にある化学受容体(olfactory receptor、OR)と同じなのだ!つまり、腸管で細菌が作った短鎖脂肪酸が血中に入り腎臓に届き、腎臓はそれをクンクン嗅いでいるわけ。このグループによれば腎臓には少なくとも六つのORがあるらしい(PNAS 2009 106 2059)。
[2016年7月追加]赤身肉とESRDの相関を調べたシンガポールのスタディ(doi: 10.1681/ASN.2016030248)がでた。結果赤身肉は量に比例してESRDと相関し、白身肉、魚介類、野菜たんぱくのリスク低減比が有意だった。食事摂取記録によるもので、交絡因子もあるかもしれないが、やはりTMAOか。
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