新規K吸着剤にもっとも関係ありそうなトピックが腸管におけるK handlingだ。経口摂取したKは90-95%が吸収され、便中にはわずかしか残らない。小腸では受動的な吸収、近位大腸ではnon-gastric H+/K+-ATPase(HKα2)により再吸収、遠位大腸ではBKチャネルにより排泄される(Pflugers Arch 2010 459 645)。
なおBKチャネルはαサブユニットの4量体だが、調整機能をもつβ2サブユニットがチャネル開放に関与しているかもしれない。またBKチャネルは腸管表面のenterocyteよりcrypt cellに多く分布しているらしい。BKを開くのは細胞内のcAMPで、またCFTRによるCl-の排泄ともリンクしてelectroneutralな輸送になっている。さておき腸管は無尿の透析患者さんでは腎以外のK排泄場所として相対的により重要になる(以前透析患者さんにRAA系阻害薬を使って高K血症になるかと質問されて、腸管K排泄と関係あると調べたことがあった)。
で、Patiromerはこの遠位大腸で排泄されてくるKを吸着する(とスタディのbackgroundに書いてあった)。Keyexalateもやはり大腸で主にKに吸着するとある。遠位大腸で吸着することでK gradientが維持されて排泄が持続するのだろうか。
リン吸着剤は毎回の食事と一緒に内服して食事に含まれるリンが吸収されないようにすると理解しているが、K吸着剤はどうなのだろう。Patiromerは治験では朝食と夕食時の1日2回だったが、現在収載された用量は1日1回食事と一緒にとある。ZS-9の治験(NEJM 2015 372 222)では最初の48時間は毎回の食事と一緒、3日目以降は維持期で朝食と一緒に1日一回だった。
新規K吸着剤での問題は、Patiromerでは低Mg血症で、K+だけでなくMg2+も吸着してしまうのか、下痢するからなのか。ZS-9では報告がないが、unhydrated K+の直径は2.98Å、ZS-9のポアもそれとほぼ同じに作られているのでK+選択性が高いせいか(Ca、Mgの25倍;Plos One 2014 9 e114686)。ただしZS-9はNa+とH+の交換にK+を吸着するので10g/d群で浮腫がみられた。
またPatiromerは他の薬を吸着してしまわないように6時間以上空けることとある。治験のときにRAA系阻害薬が6時間以上空けて内服されたのかは確認できなかった(そのままの量で内服したとある)。RAA系阻害薬も吸着されてK+がさがったという推理も可能だが、まあそういうことはスタディデザインの時にきっと考えてあることだろう。