2016/05/21

KA/EAA supplements

 Ketoanalogue/essenial amino acid(KA/EAA)サプリメントと超低たんぱく食の論文(doi: 10.1681/ASN.2015040369)は、ぽっとでたわけではない。SVLPD(supplemented very-low protein diet)は、何十年も前から窒素バランスを改善すると提唱され、MDRD-Bをはじめ数十のスタディがでている。最近レビューもでた(AJKD 2015 65 659)。それもこれも、CKD pandemicに対して少しでも進行を遅らせるにはどうしたらいいか世界中が考えているからだと思う。日本でも今年3月に腎臓学会が『生活習慣病からの新規透析導入患者の減少に向けた提言』を出した。

 日本でketoanalogueの大きなスタディが出たとは聞かない;ポスター抄録(日腎会誌 2001 43 3 295)が見つかったが、硫黄を含むので臭気があり、不味く、内服後に消化器症状がでるので頓挫したらしい。必須アミノ酸製剤はあるが、経口のアミユー®はほとんどみない(上記難点の他にアシドーシス増悪や高アンモニア血症などもあったと聞く;静注製剤はネオアミユー®とキドミン®の2つがあるが透析患者に用いられている)。

 かわりに日本で透析導入を遅らせるために認可されているのはAST-120(Kremezin®)だが、日本のCAP-KDスタディ(AJKD 2009 54 459)につづいて最近韓国でスタディされたのが発表され(doi: 10.2215/CJN.12011214、genericではなく韓国の財閥CJの健康部門と第一三共が本物のKremezin®で試したようだが)、36ヶ月のフォローアップでeGFR低下、primary end-points(Cr doubling、eGFR 50%上昇、RRT)、indoxyl sulfate濃度、QOL、all-cause mortality、hospitalizationいずれも有意差が出なかった(数字上よく見えてもrandomization x time pが0.6とか高い)。

 KA/EAAサプリメントは、タンパクを摂りたくないので仕方ないからできるだけ必須なものを最低限にしようというのと、ketoanalogueは必須アミノ酸を脱アミノ化したものなので、身体のなかでアミノ基を受け取り、その分アミノ基が尿路回路などにまわり尿毒素になるのを防ぐ。また4-methyl-2-oxovaleric acid(ketoleucine)はアミノ酸分解を防ぎ代謝をたんぱく同化に傾けると言われている。必須アミノ酸はわからないがケト酸はCa塩で存在するので、共役塩基としてH+を受け取りうる。またCa2+はリン吸着にも働く。トリプトファンはindoxyl sulfateに代謝されうるので入れないpreparationもあるし入れたのもある。

 CKDの進行を遅らせた、尿毒症を緩和した、透析を遅らせた、などのスタディが出ている。MDRD-BのフォローアップでKA/EAAサプリメント使用に死亡リスクがあるという結果が出たが、追試では否定されたらしい。冒頭で紹介した今年のスタディも、4期以上の非糖尿病CKDを対象にvegetarian very-low protein diet+KA/EAAサプリメント内服の群と0.6g/kg/dの群を比較しESRD/deathのイベントが有意に低かった。アドヒアランスは記載がないがサプリメントによる副作用はなかったとある。KA/EAAサプリメントを0.6−0.8g/kg/dの群に追加してもadded benefitがあるかもしれないが、まだ小さなスタディがあるくらいだ。

 そんなKA/EAAサプリメントは日本にないし、米国にもない。ドイツの透析メーカーFreseniusの子会社が作ったKetosteril®というのがある(写真、冒頭のスタディもこれを使っている;場所はルーマニア)が、ドイツで売られているかも確認できない。検索するとインド、タイ、ウクライナ、メキシコ、ブラジル、エジプトなどで売られているようだ。レビューの著者はその理由にMDRDの「失敗」の影響、protein malnutritionの心配などを挙げ、その後にこう書いている。

In many parts of the world, maintenance dialysis is readily available and, from the perspective of the physician, may be less time consuming and potentially more lucrative than dietary therapy. KA/EAA supplements may not be inexpensive, but they are less expensive than maintenance dialysis therapy. KA/ EAA-supplemented VLPDs appear to be used more widely in developing countries where patients with CKD may not have free access to dialysis treatments.

 透析になればたんぱく要求量は増える。透析したくて透析導入になる人はいないわけだが、かといって修行僧のような食事をしながら臭くて不味い(かどうか知らないがたぶん)薬を飲みつづけるのは飽食の先進国では大変なことだろう。でも尿毒症が進行しても透析が受けられないかもしれない環境なら話は別だ。本当に臭くてまずいのか。Ketosteril®は工夫しているのかもしれない。しかしまあ透析メーカーが透析の不十分な(認可もすぐ降りそうな)国でPlan Bとして売っているというのは複雑だ。効果があって副作用が少なく安いならいいのかもしれない。