NEJM 2015 373 60、JASN 2016 27、KI supplements 2016 6 7でfeatureされている二つ目は腎機能の概日リズムだ。この現象じたいは60年前から知られていた(Am J Physiol 1952 117 22)そうだが、電解質のなかでもっともこの影響を受けるのがKだという。そもそもKはECFに一日摂取分ほども含まれておらず(4mEq/l x 15l = 60mEq)、ささいな変化に影響を受けやすいのだろう。血中K濃度は昼に最も高く、合目的に(Kが上がり過ぎないように)尿中K排泄も昼に最も高く、おかげで血液K濃度の昼の値と夜のnadirとの差は0.5mEq/l程度におさえられている。ただし概日性変化、また経口補充による変化を考えると、スポットの尿K濃度を一日K排泄量に代用する信頼性は低いのかもしれない。
ゆるやかに満ち干きするKの波をみていると、地球に生きているなあと感じる。概日リズムは中枢性(視交叉上核)と末梢性にコントロールされており、腎のこの現象も両者が関係していると考えられている。概日リズムの分子メカニズムに関わる遺伝子はBMAL、CLOCK、PER1-3、CRY1-2、Casein Kinase-1 Epsilonなどが知られている。しかし生物時計は1日25時間だと言われている。なんで違うんだろうと思うが、調べるとこれを調べた実験では被験者を完全な暗闇に入れずに、起きている時電灯を点け寝るとき消せるようにしていたらしい。それも完全に遮断すると、24時間11分±16秒で、これは性別年代にかかわらず一緒だったそうだ(Science 1999 284 2177、別の日本の研究では24時間10分だったとも)。
それでも地球の自転周期より長い。その理由はわかっていない。昔の一日は長かったのかと思ったが、地球は潮汐摩擦で徐々に自転速度が遅くなってきているので、原始の一日はもっと短かかったそうだ。まあ実際は外からの昼夜の刺激をうけて調整できる(白夜や黒夜などは別だが)ので、完全に一致する生物時計をつくらなくてもいいということかもしれない。