2016/05/16

Podocytopathy Updates

 CD80(B7.1)が小児MCDで尿中に出て診断補助になるかもしれないという論文が出た時、CTLA-Ig(Abatacept、Belatacept)が治療に用いられるかもしれないと誰もが考えた。以後、CD80がMCDの足細胞に発現しているだけでなくFSGS、糖尿病性腎症でも足細胞に発現しているという発表がでて、CTLA-Igによりこれらのpodocytopathyと総称される疾患群が治療できるのではないかと期待された。

 2013年にRTX抵抗・血漿交換中の移植後FSGS4例とステロイド抵抗の原発性FSGSで足細胞にB7.1が発現しておりAbataceptで蛋白尿が減少し、その機序にはB7.1によるβ1-integrinの不安定化を阻害することが考えられた(NEJM 2013 369 2416)。しかし、B7.1発現の再現性がないという報告がたくさんでた。

 2014年には2型糖尿病性腎症の腎生検の半数以上でB7.1が染色され、染色の程度は糸球体病変の程度に相関し、in vitroで高糖濃度で培養された足細胞でPI3-kinase経路を介してB7.1が誘導され、CTLA-Igで阻害される細胞障害がみられた。しかしこれも再現性がないという報告がでた(JASN 2016 27 999)。

 FSGSも糖尿病性腎症も根治療法がない。原発性FSGSはずっとcirculating factorsの存在が示唆されておりsuPARが取り沙汰されたこともあったが動物実験でFSGSを起こすものの臨床試験ではinconsistentな結果が多く出ている。

 糖尿病性腎症は足細胞病として研究が進められているが、足細胞がどのように傷害されアポトーシスを起こすのかは解明されていない。健常マウスと糖尿病モデルマウスの糸球体における遺伝子mRNAパターンを比較した論文がでた(JASN 2016 27 1006)が、後者でレベルが落ちている遺伝子は、足細胞の数が減ったことで二次的にそうなっているらしいという。

 興味深いのは、その遺伝子変異がフィンランド型ネフローゼの原因となる足細胞のスリットを構成するNephrin(NPHS1;なおNPHS2はPodocin異常)が膵β細胞にもあり、細胞内ドメインがリン酸化されるとglucose-stimulated insulin release(GSIR)を起こす。インスリン遺伝子の転写メカニズムのひとつはインスリンによるIRA(insulin receptor A)刺激でmTOR経路の下流にあるp70S6Kを介して行われるが、NephrinによるGSIRがIRAと関係しているかなどは不明だ。

 最近の論文(JASN 2016 27 1029)でNephrin、IRA、IRB(insulin receptor B;glucokinase転写などを促進しβ細胞の機能維持を司る)をcotransfectさせたHEK細胞でNephrinはIRAではなくIRBと共発現していたが、IRA、IRBに依存せずにその下流にあるPI3K/Akt/mTOR経路を介してp70S6Kを活性化した。じゃあフィンランド型ネフローゼ患児は糖尿病になるかというとならない。でもOGTTをやると耐糖能異常がみられた(NPHS2ではみられなかった)。いまごろNephrinが壊れないような治療が研究されているかもしれない。