2016/05/10

Osteoporosis and CKD

 CKD、ESRDの骨粗鬆症はどうするんですか?と言われるとちょっと戸惑う。CKD、ESRDの骨病変はCKD-MBDのカテゴリー、osteitis fibrosa cystica、osteomalacia、adynamic bone disease、mixed renal bone diseaseなどの病気を考えて、骨粗鬆症は骨密度Tスコア−2.5以下を原因にかかわらず総称した症候群的なものだと思っていたからだ。

 KDIGOの2009年のCKD-MBDガイドラインでは、原則1−3期のCKDではCKD-MBDよりもpostmenopausalなど腎以外による骨粗鬆症がメインで治療もそれに準じてやればいいが、CKD4−5期になると疾患の中心はCKD-MBDになるのでTスコアが低くても骨粗鬆症というよりも「CKD-MBD with low bone mineral density」と考えるのがよいとある。

 CKD-MBDが骨折リスクに相関していることは間違いないが、基本的にpost-menopausal womenや高齢者をもとに作られたTスコアやFRAXは進行CKD患者には当てはまらない(underestimateになる)。だからガイドラインはこの患者層に対するルーチンの骨密度測定を推奨していない。

 とはいえ骨折リスクは高いわけで、どうするか。このトピックを掘り下げた論文があって(AJKD 2014 64 290)、ほんとうは骨ターンオーバーに関わる各種バイオマーカー、テトラサイクリンlabeling試験、骨生検などで疾患の種類によって治療するのがよいとある。ただ選択肢は限られている。

 Bisphosphonateは、経口は吸収率1%だが、うち50%が腎排泄で、蓄積して腎毒性を示したという報告は実はないが、静注は100%身体に入るので、とくにzolendronateは尿細管障害を起こす(私はcollapsing FSGSを起こすと習ったが)。それで経口でも静注でもeGFR 30-35ml/min(C-G式)以下に警告・禁忌がついている。有効性を示したデータが少ないということもある。

 ただしzolendronateの腎毒性は点滴速度などにもよるとされ、同様に静注のibandronateでは報告がなく、post hoc analysisでeGFR 15-30ml/min(やはりC-G式)患者においてalendronateとresidronateが骨折予防効果があったという報告があるそうだ。経口薬はFDAはavoid、日本は慎重投与だから使えないことはない。他の患者群と同様に長期投与でrare subtrochanteric fractureが起こるのに注意で、CKDではさらにadynamic bone diseaseに使うと逆効果だ。

 他の選択肢として注目されているのがRANKL阻害薬のdenosumab(高Ca血症の治療薬だと思っていた)。これは100% humanized monoclonal抗体(IgG2)なので網内系で分解され腎機能には関係ないはずである。ただし注意することが2つ、気になることが一つある。一つはこの薬がピタリと骨ターンオーバーを止めることである。だからやっぱりadynamic diseaseには使えない。もう一つは、どういうわけか進行CKDで重症で遷延する低Ca血症が報告されていることだ。

 厚生省のブルーシートによれば2012年4月から8月の間に(腎機能に関係なく)32件、うち死亡が2件。同じ年のAJKDにもカナダでの透析患者で低Ca血症(経口・静注・透析液からのCa補充とVitamin D補充でも20−30日遷延)が報告された(AJKD 2012 60 626)。ビタミンD濃度が載っていない(日本は25−OHは測れないし、カナダはルーチンでは測らないらしい)ので低ビタミンD血症があったかは不明だ。

 前掲のレビュー著者はビタミンDをしっかり事前に補充しておけば防げるかもしれないというが、あくまで楽観的な意見だ(その数段落後で「データが蓄積するまでは慎重に」と言い直している)。翌年にはオーストラリアからも報告があって(Am J Nephrol 2015 41 129)、ほとんどが透析患者だが保存期(4〜5期)、また移植後の患者もいたが、彼らの25−OH Vit D濃度はほとんどが正常だった(mean 69ng/ml)。

 気になることの一つは、RANKLと対になる骨ホルモンで血管石灰化に関連すると言われるOPGを上げることだ(OPGについてはレジデント時代に講演を聞いた覚えがある;あれから5年経って、OPGと動脈石灰化や心血管イベントとの相関にはmixed resultsがでているそうだが)。

 ついでにdenosumabは低リン血症、低Mg血症も起こし、これもよく経験する(添付文書によれば1%以上)。それから、この薬とセットで内服するデノタス(デノ足す)®はおそらく日本の処方箋でだせる唯一の天然型ビタミンD(cholecalciferol)だ。これを期にあまり腎臓内科に関係ない人は気を止めないリンやMgに注意が払われ、25−OHビタミンDが注目されあわよくば測定したり処方できるようになればいいなと思う。

 [2016年6月追加]25-OHビタミンDにはD2(ergocalciferol)とD3(cholecalciferol)がある。前者はしいたけなどに含まれ植物性、後者は魚油や肝油にふくまれ動物性と呼んだりする。工業的にD2は酵母由来のergosterolを、D3はウールに覆われた動物の皮脂腺からでるlanolinという蝋からとれる7-dehydrocholesterolをUVB照射して作る(なお動物が毛づくろいするのは皮脂に含まれるビタミンDを口から摂るためと言われる)。どちらもサプリメントになっているが、アメリカでも処方薬になっているのはD2だけだ(とNEJM 2007 357 266は言うがUpToDate®にはOTCと書いてある)。

 しかし最近、D3が肝臓で25位を水酸化されたcaicifediol(検査で測る25OH Vitamin Dと一緒)の徐放剤、Rayaldee®がCKD3-4期の二次性副甲状腺機能亢進症をともなうビタミンD欠乏症の治療薬としてFDAに認可された。社長は「CKDにおけるいままでのVitamin D補充療法はFDA認可されていないし安全性も効果も確認されていない」というが、たしかにKDIGOガイドラインに補充レジメンは書いてあるがFDA的にはoff-labelなうえD3は市販薬だ。