2016/02/24

Organ Cryopreservation

 漫画Black Jackで難病の患者を治療法が見つかる未来まで凍結保存しておく話があったが、臓器を移植のために凍結保存する研究はほんとうに進んでいる(The Economist誌2016年2月6日付)。いま臓器、例えば腎臓は取り出されたあと氷冷されレシピエントのもとに運ばれる(HTKなどの灌流液をポンプで流すこともある)が、凍結保存することはできない。水は凍らせると結晶し容積も拡張するので組織が破壊されるからだ。それでcryoprotectant(糖など)を用いて温度を下げても結晶しないガラス相になるよう工夫したり、復温が均一かつ急速にできるように(そうしないとガラス相からとけた水が結晶したり、復温の程度差によりヒビが入ったりするので)磁性体をまぜて磁場をかけたり、いろいろ工夫している。研究者がお手本にしているのは氷点下を生きる動物や植物で、彼らが水の結晶化をふせぐために合成している蛋白や遺伝子を応用できないか試している。
 米防衛省、各種財団も積極的に投資しておりベンチャー企業もたくさんあるから、1946年に設立されたアイバンクから70年、近い将来に腎臓バンクができるかもしれない。ちなみにアイバンクは、一層の角膜内皮細胞が一定の密度でシート状に生きていればいいのだが、やっぱり組織が損傷するのでごくまれな場合を除き凍らせることはない。日本やアメリカでは4℃(水がもっともガラス相に近いとされる)で4−7日保存できる。銀行というからもっと長いかと思っていた。欧州では28−34℃で培養しながら7−28日保存する(が感染の恐れが大きいので培地に抗菌薬と抗真菌薬をいれる)。2つの方法でアウトカムはあまり変わらないそうだ(Transfus Med Hemother 2011 38 143)。