2016/02/02

Hemorrhagic risk of kidney biopsy

 超音波を使う前は透視下に腎生検していた。しかしIVPであれretrograde pyelographyであれ腎下極の皮質からサンプルを取るのはほとんどブラインドで大変そうだなとおもう(写真、Urol J 2007 4 251)。いまでも中東では透視下でやっているという噂をきいたことがあるが、調べてみるとたしかにやっていた(前掲論文、イラン;ただ超音波ガイド下が何らかの理由で失敗した場合の選択肢だった)。



 今の腎生検はまず超音波ガイド下で、針もよくなって確実性と安全性は高まったけれど、それでもリスクフリーではない。そしてリスクをどのようにヘッジするかについての基準はあいまいだ。たとえば「出血傾向」「感染症」「高血圧」などが禁忌事項に挙げられているが、具体的な数字や記載はガイドラインにも書かれていない。リスクと必要性をよく考えてケースバイケースに判断するということだろう。

 だからたとえば「血小板は何万以上」とか一概にいうことはできないのだが、何かないかとおもって調べるとレビュー(というかフランスのガイドライン作りのために現存する論文を見直したもの;World J Nephrol 2014 3 287)と血小板数と出血リスクについて調べた一施設スタディ(Lupus 2012 21 848、Johns Hopkins;SLE症例)があって、前者は「一般的にmajor surgeryは5万/mm3以上といわれるが多くの腎臓内科医は10万/mm3以下を禁忌と考える」、後者は「15万/mm3以下(5万/mm3以上)の群では以上の群に比べて高い、私達は10万/mm3以上を慣習にしている」とあった。

 血小板低下時にどうしても腎生検しなければならない時はどうするかも、こうしなさいというのは余りない。まずなにより、血小板減少の原因にもよるからだ。私は血小板減少の原疾患を治療するのが本筋と思う。血小板輸血が禁忌でない場合でも、輸血で10万/mm3を周術期に維持する(腎生検直前だけ上げても仕方ないと思われ)というのは現実的ではなさそうだ。経内頚静脈アプローチもあるが、やっている施設が限られると思われる。

 血圧は収縮期血圧160mmHg以上と以下の群・拡張期血圧100mmHg以上と以下の群で合併症に差があったというスタディと、140/90mmHgがよいのではないかと推奨する論文と、術直前の血圧に関わらず、高血圧の既往がある症例は細動脈が硝子化して出血に反応して収縮できないためリスクがあるという論文もある、と書かれていた。World J Nephrol 2014 3 287は、他にも術後安静時間の比較などいろいろ調べてくれていて参考になった。ただ尿路感染症についての記載がないので、それは別に調べなければならない。