2018/09/01

ナットクラッカー症候群(Nutcracker syndrome)

ある日外来をしているときにこんな患者が来たとする。

30歳の女性で、繰り返す肉眼的血尿のエピソードと左背部痛を認めている。
女性は特に体液過剰はなさそうである。
検査ではGFRは正常で尿中蛋白定量・アルブミン定量でも正常範囲。
レントゲンなどの画像所見でもはっきりしない。
膀胱鏡で検査をすると左の尿管からの血液の流出がある。

診断はなんだろうか?


まず、左からのみということで腎炎で血尿を生じうるようなIgA腎症やTBM(Thin basement membrane)などは鑑別からは除外されてくる。
年齢が高齢であれば、尿管癌などの悪性腫瘍の可能性は非常に高くはなるが、この症例は30歳であり可能性は低い。

診断は、Nutcracker症候群(通称:くるみ割り症候群)である。

まず、これについてであるが下の図がわかりやすい。
Annals of vascular surgery
通常であれば、上腸間膜動脈(SMA)と腹部大動脈によって左腎静脈は挟まれないが、
①左腎静脈の圧迫が生じる
②左腎静脈圧の上昇をきたし、血尿や腰部痛の原因となる。
③男性では精巣静脈瘤、女性では骨盤血流鬱滞や月経困難症や性行時痛の原因となりうる。
頻度は女性に多い。

診断には
・カラードップラー
・CTやMRIでの静脈造影
・膀胱鏡で左尿管からの血尿の確認
・静脈造影

などを行うが、まずは侵襲性の少ないものから大きなものにする必要がある。
下記にCTでの画像を提示する。左腎静脈の拡張が確認できる。
Mayo 2010より
Mayo 2010より

これは、2017年度の論文でNutcracker症候群の診断の基準や管理がUpdateされましたよという論文からの診断アルゴリズムである。
これも、重要なこととしては非侵襲的なものから詰めていくという形になっている。

Eur J Vasc 2017より

では、治療であるが経過を見ることがまずは多い。中等度の血尿や耐えられる症状であれば経過観察をする場合が多い。
特に、18歳未満の子では基本的にはSMAの発達もしてきて、その過程で圧迫が解除される可能性があり経過を見ることが多い。また、側副血行路も発達し改善をする場合も多い。

だが、外科的な適応になる場合もある。
重度の血尿・腹痛や貧血などの重度な症状・腎機能障害・持続する起立性蛋白尿などは手術適応に考えられる。
また、経過を見ていた場合でも18歳未満であれば2年間様子を見ても改善しない場合、それ以上の年齢では半年経過を見ても改善しない場合は手術適応になる。

手術は開腹手術・腹腔鏡手術・ステント留置などがあるがここでは詳細は割愛する。

とても、血尿診断では大事なのでマスターしよう。