その際に、報告書がIgA腎症の書き間違いじゃないのかな?と思った方もいるのではないか(僕もそうだった..)?
IgM腎症自体は1970年代に報告された。
報告例(Cohen, Bhasin)は血尿とネフローゼレベルの蛋白尿をもって、メサンギウム領域のIgM沈着があったものである。
頻度としては2-5%程度と言われている(Indian J 2013)。
・IgM腎症の臨床像としては、ネフローゼ症候群をメインとしており微小変化群やFSGSの亜型と表現されることも多い。しかし、最新の論文では大人ではネフローゼ症候群を呈さないことの方が多いとしている。
MCDの鑑別として、FSGS、IgM腎症、C1q腎症、CNS(congenital nephrotic syndrome)は鑑別に上がってくる。
・IgM腎症は定義上は、メサンギウム領域・基質の拡大があり、IgMと補体が非常に多くびまん性に沈着しているものである。
簡単に言うと下の写真のように糸球体の変化自体はなく、メサンギウム細胞の増大があり蛍光免疫染色でIgMが染まるものである。
しかし、悩ましいのはIgMの沈着が特異的所見でなく見られる場合も多いと言うことである。なので、IgM腎症の診断の際に、ある診断医は免疫染色でIgMの沈着が2/3以上見られ、電顕でのメサンギウム沈着所見が見られることを基準としていると言っている。
*ここで脱線であるが、
では、メサンギウム増殖をきたす腎炎にはどのようなものがあるか(原発性糸球体腎炎)?
・感染後糸球体腎炎の回復期
・IgA腎症
・IgM腎症
・C1q腎症
などが代表的なものである。
・では、IgM腎症であった場合に何が治療や予後の点で変わるのか?
→ある研究では、女性や血尿を伴っている症例の方が予後はいいとしている。
IgM腎症でメサンギウム増殖の程度や免疫染色での予後予測は困難。ステロイドの抵抗性を持つものに関しては腎予後は非常に悪くなる。
腎生存率は5年で70%と言われる。
一つの腎予後が悪い理由として、再生検をしてみるとIgM腎症がFSGSに進行していることが報告されている。IgM腎症の症例では再生検をした方が予後がいいと言う報告もある。ただ、初回の生検でこの症例は再生検をした方がいいと言う指標はないのが現状である(AJKD 2003)。
微小変化群でもIgM沈着を伴っているものではステロイドの抵抗性がつよく治療反応性は悪い。
まだ、いまだにわかっていないことの多い領域であるが、疾患概念などを理解してもらえれば幸いである。