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2017/08/22

少しアフェレシスと透析について。さらにさらに続き。

では、続いては少しメジャーなコンサルトではなくなるかもしれないが吸着(adsorption)の話に移行したいと思う。

吸着療法はコンサルトされる割合はどうであろうか?
個人的な印象ではかなり少ないかもしれない。一つには吸着療法を使う場面がわからず、コンサルトがかからない。コンサルトされる側もよくわからないというのは一つあるのではないかと考える。

今回、少し吸着療法になじみをもっていただいて、コンサルトされたときに胸を張ってできるようになれればと思う。

吸着に関しては取り除く場所によって二つに分かれる。
①血液吸着療法(HA:Hemoadsorption)
②血漿吸着療法(PA:Plasma adsorption)
に分かれる。

今回、まずは①のHAに関して述べたい。
まず、HAの回路に関しては下記のような回路になっている。
http://www.eonet.ne.jp/~hidarite/ce/touseki07.htmlより引用
回路自体はこのようになっているが、いつもの血液透析とは回路に違和感はないであろうか?
基本的にHAに関しては補充液や透析液などは必要がない。そのため、回路は少なくなっている。


血液吸着というからには、すべての血液(血球+血漿)の吸着をしているかというとそうでは無く、血漿の一部を吸着している(もちろん血漿吸着とは異なる)。


ここで、重要なのはやはり吸着剤である。この吸着剤によって何が吸着されるかが異なる。

①活性炭(DHP-1、ヘモソーバ、ヘモカラム)
②ポリミキシンB固定化吸着剤(トレミキシン)
③ヘキサデシル基固定化セルロースビーズ(リクセル)


この膜の名前を聞くとあーっと言われる方も多いと思う。意外と身近には存在する。


①活性炭吸着
活性炭表面の微細孔に被吸着物質が入り込むことによってなされ、分子量5,000程度の物質の可逆的な吸着で物理的な吸着法である。

ちなみにイオン交換樹脂などをもちいて吸着を行う方法を化学吸着法という。


活性炭吸着器は
・ヘモソーバTM CHS-350(旭化成メディカル)

旭化成メディカルより引用

・ メディソーバDHP(川澄化学工業)
川澄化学工業より引用
・血流量:100~200mL/minでの管理

・重要なのは吸着カラム内で凝固を起こすのを認知する事が重要
⇒吸着のカラム入口圧と出口圧の差圧をモニタリングする。(入口圧が40kPa(300mmHg)を超える場合にはカラム内凝固を疑う。)

・抗凝固薬:ヘパリンを使用。ナファモスタットメシル酸塩は吸着されるため、使用できない。

・治療時間:3~4時間を目安とする。

利点:回路が単純である点。

欠点:分子量が100未満のものや10000より大きいものは吸着されにくい。また、ブドウ糖も若干吸収するため血糖値に注意する。

・保険適応:薬物中毒、肝性昏睡

・薬物中毒で考慮するもの:
これについては以前に書いた。
バルビタールやフェニトインやアマニチンやパラコートの中毒は考慮する。

今回HAについて書こうと思ったが、活性炭で長くなってしまった。
また、次回続きは記載しようと思う。






2016/10/26

薬物中毒について考える(各論):リチウム中毒について

では、今回は各論のリチウムについて記載する。

リチウムは主に双極性障害に用いられる治療薬で、気分の波を抑える作用を持つ薬で有名である。今回はこのリチウムをたくさん飲んだ時の中毒についてお話をしようと思う。


まず、リチウムに関しては腎臓に対してはどんな影響があるのだろう?
①腎性尿崩症の原因になる(20-40%)
②尿細管アシドーシスの原因(type1 acidosisの原因に)
③ネフローゼ症候群(微小変化群が治療開始後1.5-10ヶ月で起こりうる)
④慢性間質性腎炎(軽度から中等度タンパク尿と慢性腎機能障害を起こす)
⑤高カルシウム血症(カルシウムの細胞膜貫通の阻害、PTH分泌上昇)
が言われている。

話を中毒に戻すと薬物中毒の総論でも述べたように、透析を考える際には①タンパク結合率、②薬剤の分布容積、③分子量が重要となる。

今回、「リチウム製剤をたくさん飲んだ人がいます。透析を回してくれませんか?」と言われたとする。

まず、上記3点は確認する。①タンパク結合率:ほとんど結合しない。②薬剤の分布:0.7-0.9L/kgで低い。③分子量は7ダルトンの小分子の陽イオンである。

ここから考えると血液透析は効果が良さそうである。ただ、やはり常に透析の効果がある=透析をやるではいけない。患者さんが元気であれば行う必要はないかもしれない。

リチウム中毒は急性、慢性的に飲んでいる人の急性発症、慢性に分かれる。
症状自体(不整脈:致死的なものは稀でQT延長、消化器症状:嘔吐・下痢、神経・精神:昏迷、錯乱、ミオクローヌスなど)は大きな差はないが、慢性では腎性尿崩症、腎機能障害、内分泌障害が生じやすい。

リチウムの治療の治療域の血中濃度は0.8~1.2mEq/Lである。
論文や報告にもよるが、血中濃度が6mEq/L以上であれば透析を推奨、2.5~4mEq/Lであれば重度の神経症状、腎不全や不安定な血行動態であれば透析を推奨となっている。

ただ、問題点としては血中濃度はすぐにはわからないことである。なので、血中濃度は参考にせず始めてしまうことが多い。
また、常に透析を終わった後のリバウンドは考える必要がある。これは細胞内から出てくるためである。


リチウム中毒ではAGが陰性になることがある。これはリチウム中毒により陽イオン増加によるものである。他にAGが陰性になるものとしてはHAMBLEと覚えるといい。
HA(hypo albuminemia):低アルブミン血症
M(myeloma):多発性骨髄腫
B(Bromide):臭素
L(Lithium):リチウム
その他に高カルシウムや高マグネシウム血症も原因になる。

やはり、このようなに中毒の治療や原理を考えながら診療に当たれるのは腎臓内科の醍醐味なのかもしれないと思う今日この頃である。



2016/10/25

薬物中毒について考えてみる(総論)

今日は少し中毒に関して触れてみたいです。
中毒は腎臓内科にとって必要な知識です。

急に集中治療領域に薬物中毒で入院した人に透析をやってくれない?と言われて、しっかりと状況の判断ややる適応があるのかを考えることは非常に重要です。

透析をやるということは、患者さんに透析カテーテルを留置しなくてはならないし、それに付随する合併症も危惧しなくてはならない。なので、必要であればやる!必要ならやらない重要な判断になります。

中毒に関しては透析を考える上で重要な項目が3つあります。
1つが「分布容積」です。分布容積は低いもののほうが除去に向いています。つまり、組織よりも血液や細胞外液に分布しやすいものには有効です。

分布容積は[血中濃度]分の[体重当たりの体内の薬物総量]です。均等に分布していれば1です。血液に多く分布していれば相対的に分母が大きくなるから、1より小さくなります。
分布容積が1より小さいものには血液浄化法が有効な可能性があります。
逆に、分布容積が1より大きく、血液の方にあまり分布していなければ意味がないです。
 
半減期があまり短くても意味がありません。血液浄化法は数時間かけて実施されます。極端に言えば、半減期が数分なものを何時間もかけてやっても意味がありません。

中毒で用いる血液透析方法は血液吸着法と血液透析法があります。
血液吸着法で用いられているカラムの中には先ほど出てきた活性炭がビーズ状になって詰まっています。活性炭が吸着剤で、薬毒物が吸着されて血液はきれいになります。

2つ目はたんぱく結合率です。
たんぱく質に結合している薬や毒物でも吸着剤と接触するとはぎ取られます。
血液吸着法の場合は分子量やたんぱく結合率の影響をあまり受けません。たんぱく結合率が95%以内であればだいたい大丈夫と言われています。分子量の影響を受けず、半減期がある程度長くて、分布容積が小さくてより血液や細胞外液に分布しているものが有効です。国際的に適応があるとされているのは、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトリン、テオフィリンです。
血液透析法は血液吸着と異なりタンパク結合率の影響を受けます。剥ぎ取れないので。

3つ目は分子量が小さい、1000ダルトン未満の物質です
国際的に適応があるとされているのは、メタノール、エチレングリコール、アスピリン、リチウムです。いずれも分子量が小さく、半減期はある程度長い。分布容積は小さくて、タンパク結合率はほとんどのものがゼロです。活性炭に吸着されないものがほとんどです。

中毒に関しては
覚え方として「青魚入りのキャット・ミール(CAT-MEAL)で血がサラサラ(浄化)」と覚えるといいです。

血液吸着法の適応がある薬毒物は「CAT」で覚えます。
C」はカルバマゼピン、
「A」は抗けいれん薬(anticonvulsants)です。フェノバルビタール、フェニトリンです。カルバマゼピンも含まれます。
「T」はテオフィリンです。
Cの中にカフェインも書いていますが、これはあまり今のところ文献的なエビデンスはありません。しかしながら、テオフィリンとカフェインは同じキサンチン誘導体で、構造式も薬物動態もとても似ています。カフェインも恐らく効くだろうと考えています。

血液透析法の適応がある薬毒物は「MEAL」で覚えます。「M」はメタノール、「E」はエチレングリコール、「A」はアスピリン、「L」はリチウムです

今回リチウム中毒について書こうと思ったら、総論で終わっていましました。。

腎臓内科は本当に幅広い領域をカバーしますね。本当に楽しい分野だと思いますが、日々勉強ですね。。。

下記は熊本大学の資料を添付させていただいてます。とてもわかりやすいです。
HA:血液吸着、HD:血液透析です。


2015/12/01

Salicylamide

 PL顆粒はover-the-counterの総合感冒薬PyLon®を医療用にしたとき名前を残したからPLというそうだが、PyとLonがなんの略かは分からない(おそらくPyは解熱剤のantipyreticsを意味するのだろうが)。ところでこの中にはアセトアミノフェンとカフェインと抗ヒスタミン剤とサリチルアミドが入っている。サリチルアミドはサリチル酸にアミノ基がついたエステル(図:Conceptual Pharmacology by P. Jagadish Prasad, Universities Press, 2010)で、弱いがCOXを阻害するからNSAIDsはNSAIDsであり、あなどれない。

 NSAIDsだから輸入細動脈を締めてAKIを起こしたり、慢性使用で鎮痛剤腎症(以前に勉強した)を起こしたりはする。しかしoverdoseで教科書的に有名なサリチル酸中毒(嘔吐、意識障害、血小板減少、AG開大アシドーシス、呼吸性アルカローシス、腎機能低下)を起こすという報告はないようだ。サリチル酸中毒なら意識低下、乏尿、血中濃度100mg/dl以上などがあれば緊急透析適応になるから一安心。そもそも、サリチル酸濃度をオーダーしてもサリチルアミド濃度は測れない(「総サリチルアミド」というのが添付文書に書いてあるが)。


2015/05/14

Toluene and the kidney

 トルエンといえば揮発した蒸気に曝露されて、脂溶性のため脳血管バリアを越えて中枢神経系に達し、さまざまな神経伝達物質受容体に作用して精神神経症状がでる(J Drug Alcohol Res 2014 3 235840)。それから心毒性、それから胎盤を通過して胎児にfetal solvent syndrome(fetal alcohol spectrum disorderのような)を起こすことも知られている。

 しかしそれだけではなく、トルエンといえば遠位尿細管アシドーシスと低カリウム血症を起こす。ここで注意すべきは、トルエンは馬尿酸(hippuric acid←hippoって馬じゃなくてカバだと思うけど…ギリシャ語で「馬」らしい;ラテン語はequus)になって、酸を放出すると共に馬尿酸イオン(hippurate)がunmeasured anionになって残るのでAG開大アシドーシスをきたすことと、尿中に大量のunmeasured anionがあるため尿AG(UAG)が当てにならないことだ。

 尿AGは[尿Na+] + [尿K+] + [尿unmeasured cation] = [尿Cl-] + [尿unmeasured anion]をひっくり返して[尿Na+] + [尿K+] - [尿Cl-] = [unmeasured anion] - [unmeasured cation]にしたものだから、RTAの場合unmeasured cationであるNH4+が減って尿AGはプラスになる。しかし、トルエン中毒ではunmeasured anionであるhippurateが多いので尿AGが当てにならないこともある。

 だから尿浸透圧ギャップを測定する。尿浸透圧ギャップは、実測尿浸透圧から計算浸透圧を引いたもので、計算浸透圧は2 x ([尿Na+] + [尿K+]) + [尿UN] / 2.8 + [尿糖] / 18だ(尿糖はなければ無視してよいが)。しかしちょっと考えれば、こうして得られたギャップはNH4+の浸透圧とそれが引き連れる陰イオン(例えばhippurate)どちらも測っていることが分かる。だからギャップの半分がNH4+だと考えることが出来る(CJASN 2014 9 1132)。

 なお、トルエン曝露時の救急対応についてはCDCのATSDR(Agency for toxic substance and disease registry)が詳細なウェブサイトを公開しているので参照されたい。




2012/10/11

起死回生

 こんな風になりたいな、と思うスタッフの言葉があった。Renal Grand Roundでのこと。テーマはMARS(Molecular Absorbent Recirculating System、俗に言う"肝臓透析"の一つ)。テクノロジーについて解説した前編と代わり、後編は質の低い臨床データと結論のないメタアナリシスをさんざん見せられ、しかもみな欧州のスタディ(米国では薬物中毒にのみ適用)だ。

 演者の声も暗く単調だし、みんな退屈した。さらに「こんなデータもないものを実験的に使うんじゃない」「ECMOと一緒だ、2~3の生存例があるだけで、それが有効性の証拠になり、以後効いているか効いていないか分からないのに使われ続けている」と不満を口にする人も。私も「今日は収穫なかったな、うたた寝すればよかった」と思っていた。

 すると、一人のスタッフが「Amanita(テングタケの一種)の治療にはMARSの他にもあるよね、Milk Thistle(マリアアザミ)の種から抽出した、あれなんだっけ?」と発言した。演者も「ありますね、えっとあれは…」と名前を思い出そうとした。先生によればこの薬はキノコ毒素(amatoxin)による肝障害を予防する効果があるという。あとで調べるとSibilininと分かった。

 キノコ摂取から24時間以内までOK。米国では治験を行っているPI(primary investigator)に電話するとまるでマジックのように(FEDEXよりも速く)届けてくれるらしい。そこで少し笑いが起き、さらに別の先生が「tubing systemでもあるのかな?」と冗談をいい、みんな大笑いしてお開きとなった。私も、会の内容がイマイチで雰囲気が悪くても、さりげなく学びを提供し、笑いを取りたいものだ。


2011/11/11

慢性鉛中毒

最近は教科書に書いていない経験的な診療のpearlsを学ぶことと、またスタッフとしてどの様にレジデントと接し教育するかという観点から学ぶことが主だ。だから「この論文にこう書いてある」というような勉強は相対的に少ないが、そのうちの一つを紹介する。

 ひとつは高血圧、腎不全、高尿酸血症をみたら(適切な症例で)慢性鉛中毒を疑えという事。といっても高血圧と腎不全と高尿酸血症を持つ人はとてもたくさんいるから、鉛曝露をうたがう病歴(弾丸が身体に入っている、弾丸を自分で作る、鉛ペンキ、古い水道管、有鉛ガソリン、バッテリー工場勤務など)、腎外症状(消化器、貧血、神経症状など)がヒントになる。

 慢性鉛中毒が腎障害をおこす機序はよく分かっていない(Am J Med Sci 2004 327 341)が、直接尿細管障害を起こし線維化や炎症を惹起すると考えられている。高血圧や高尿酸血症を介して間接的に腎障害をおこしているかもしれない。

 さて疑ったらどんな検査をするか。血中鉛濃度は急性中毒には有効だが、鉛は血中からすぐに骨や組織に移り蓄積されるので慢性中毒の診断には有用でない。free erythrocyte protoporphyrinも、過去90日以内の曝露を調べるには有効だがlifetime body burdenを計ることはできない。それでEDTA lead mobilization testというのが行われる。

 このテストはchelating agentを投与し、骨や組織からmobilizeされて尿中に排泄される鉛を測定するものだ。EDTAは1g静注と2g筋注、尿中鉛の測定は24時間蓄尿と72時間蓄尿などさまざまなやりかたがある。いまのボスによれば、EDTA1g静注後に24時間蓄尿したので十分らしい(筋中は痛く、最初の24時間で90%程度のmobilizable leadが排泄される)。

 さて鉛のbody burdenが見つかったらどうするか。元来600mcg/72-hr urineが腎不全を起こすのに必要なburdenと言われていたが、80-600mcgでも腎不全を起こしているかもしれないという論文もある(NEJM 2003 348 277)。Chelationが全ての鉛中毒で行われるべきと言い切るevidenceはないが、この論文は、chelation therapy(1g EDTA/week)で鉛burdenが80-600mcg/72-hr urineの腎不全患者群のGFRが改善した(placeboでは悪化した)ことを示した。

2011/09/09

リチウム中毒

 リチウム中毒の患者さんを初めて診療して、リチウムについて勉強した。リチウムは双極性障害に用いられる薬だが、副作用も多い。使いはじめた初期には約30%の患者さんにnephrogenic DIをおこす。リチウムは遠位尿細管のprincipal cellにENaC(ナトリウムチャネル)を通じてナトリウムに紛れて入りこみ、Glycogen synthese kinase-3 betaの障害などにより尿細管細胞をADH不応にする。リチウムはナトリウムよりも数倍ENaCへの親和性が高いのだ。初期であればamilorideでENaCをブロックすることでリチウムの尿細管細胞への流入を防ぐことができる。

 他にも、副甲状腺機能亢進症による高カルシウム血症(機序は不明)、慢性間質性腎炎なども起こす。またリチウムはunmeasured cationなので、リチウム中毒の患者ではanion gap(= unmeasured anion - unmeasured cation)が低下する。anion gapが低下するのは他に、hypoalbuminemia、paraproteinemia(paraproteinはプラス電荷なのだ)、hypermagnesemiaなどがある。

 リチウムはvolume of distributionはそこまで大きくない(0.6-0.9L/kg)ので透析には適しているが、長期間リチウムを服用していれば身体中にリチウムがいっぱいだ。だから、いくら透析して血中・細胞外液からリチウムを除いても除き切れるものではない。今度の例でも、透析前に4mEq/lだった血中濃度は、透析を開始して2時間後に1.1になったが、透析をやめて数時間後には1.7にもどった。

 リチウムはほとんどが腎で排泄される。NSAIDs、ACEIなどGFRを下げる薬を飲んでいると、排泄が不十分になり血中濃度があがる。脱水や利尿剤(体液量が減ってしまう)などもリスク因子だ。リチウム中毒では消化管症状(嘔吐や下痢)が起こるので、これが脱水をきたし悪循環になる。だから十分に輔液して腎からのリチウム排泄を促す必要がある。

 リチウム中毒による神経症状は、透析などの手段でリチウム濃度を下げることによって回復するか。回復する場合が多いが、SILENT(the syndrome of irreversible lithium-effectuated neurotoxicity)という症候群もあって小脳症状、錐体外路症状などが残ることもある。そんなわけでリチウムは厄介な薬だが、mood stabilizerとしてvalproic acidなどと並びいまだに良く使われているので、中毒の治療には慣れておかなければならない。

[2013年3月追加]リチウムによる腎障害に特徴的な画像所見として、punctate echogenecityやmicrocystic calcificationが提案されている(J Ultrasound Med 2012 31 637)。GSK3β障害がAQP2をdownregulateする機序の一つにCOX2-PGE2経路のupregulationが示唆されている(Am J Physiol Cell Physiol 2012 302 C131)。