2016/06/24

Playing with Intestinal Ion Channels

 透析患者さんで便秘に対して小腸のClC2阻害薬Lubiprostone(アミティーザ®)を使ってから体重の増えが減ってリンも下がってきたという人がいて、まあ理にかなっていると思う(動物実験もあった)。これからは腸管のイオンチャネルも調べる時代か。尿細管が使えないんじゃ腸管を使うしかない。

 というわけでせっかくネフロン各セグメントのイオンハンドリングをたくさん覚えたところで、こんどは消化管各セグメントのイオンハンドリングの勉強だ。ちょっと調べてもカリウムについてのレビューだけで63ページあって(Physiol Rev 2008 88 1119)、2回膜貫通・4回膜貫通・6回膜貫通・7回膜貫通チャネルなどきりがない。

 さて、その消化管イオンチャネルと遊ぶ新薬Tenapanor(AZD1722、RDX5791とも)はLubiprostoneが便秘や機能性胃腸症に使われるように便秘型過敏性腸症候群用に開発され治験中の非吸収性NH3(Na+/H+ exchanger)阻害薬だ。透析患者の高リン酸血症に対してPhase 2bが進行中だ。薬は腸管のリン吸収チャネルNPT2bじたいには作用しない(NPTa、NPTcは腎にありKlotho/FGF23の支配をうける)が、下痢を起こしてリンを下げるとみられる。

 最近、この薬が透析患者のΔDWを緩和するかを調べるproof-of-conceptスタディがCJASNにでた(doi: 10.2215/​CJN.09050815)。製薬会社がおこなったスタディだ。体重3%以上かつ2kg以上増える無尿の透析患者88人(外来、入院)で介入群には45mg 2x/dで開始し忍容性に応じて5mg 2x/dまで減量可とし4週間フォローした。食事はちゃんとしてくださいねと言っておいた(入院患者はNa 2g/d食)。

 結果、便の量と便中Na排泄量は有意に増えたがΔDWや血圧は変わらなかった(プラセボ群と比べて有意差がないだけでなく、介入前の値が95%信頼区間に含まれている)。計算が合わないようにも思えるが、便の量は群間で80g/d程度しか変わらないので大した効果がなかったのかもしれない。薬は下痢にもかかわらずmeanで32mg 2x/dのまれていた。飲水量は管理していないがアンケートで介入群に口渇は多くなかった。

 なおNH3は腎ではNH4+の排泄とHCO3-の再吸収をしているが、腸でNH3をブロックするとH+の排泄ができなくなりアシドーシスが緩和されるかと思いきや(スタディでもアシドーシス悪化を懸念してHCO3- 20mEq/l以下を除外している)、介入群でHCO3-値の変化に有意差はなかった。

 腸管NHE3の発現はRSK2、LPA(lysophosphatidic acid)5の支配下にあり、CFTR(Cl-チャネル)、DRA(down-regulated in adenoma;Cl-/OH- exchanger)はLPA2の支配下にあるらしい(図、Cell Physiology 2015 309 C11)。NHE3をブロックして代償的にNHE3がupregulateされるかは知らない。腸の利尿剤?のようにもっと効果的に水を引き込むチャネルターゲットがあるのかもしれない。ClC3などは実はそうなのかもしれない。CFTRはどうだろう。