DPP4阻害薬、GLP-1受容体アゴニスト(以下GLP1アゴニスト)はEXAMINE、SAVOR-TIMI53、TECOS、ELIXAなどのスタディがいずれも心血管リスクで有意差がでず、今週になってGLP-1アゴニストのLiraglutideで有意差を示したLEADERスタディがでた(DOI: 10.1056/NEJMoa1603827、心血管死に有意差あり、non-fatal MIとstrokeと心不全入院に有意差なし)。
スタディが組まれすぎて、同じクラスのなかでEmpagliflozinとLiraglutideは特別よい薬なのか、このクラスが特別よいのかはわからない。スタディごと心血管リスクの定義やリクルートするA1cの閾値などが微妙に違うようだ。もちろん私は全ては読んでいないが、editorialによれば(DOI: 10.1056/NEJMe1607413)LEADERスタディは心疾患が比較的軽症だがA1cは高め(8.5%以上)の群を対象にしているらしい。一方EMPA-REG OUTCOMEスタディのサブ解析ではA1c 8.5%以下の群はリスク減に有意差があって以上の群には有意差がなかった。
ただ直感で思うのは、GLP1アゴニストとSGLT2阻害薬はどちらも体重が減る(前者は食欲と身体活動性に関係し米国では2014年に肥満症の適応も受けている、後者は糖排泄と浸透圧利尿を起こす)ことだ。ADAの2016年ガイドラインでメトフォルミンに1剤追加する目安の表にも書いてある(Ann Int Med 2016 164 542、「効果」についてはDiabetes Care 2015 38 140を参照)。
SU
効果:High
低血糖リスク:Moderate
体重:Gain
副作用:低血糖
薬価:Low
TZD
効果:High
低血糖リスク:Low
体重:Gain
副作用:浮腫、心不全、骨折
薬価:Low
DPP4阻害薬
効果:Intermediate
低血糖リスク:Low
体重:Neutral
副作用:まれ
薬価:High
低血糖リスク:Low
体重:Neutral
副作用:まれ
薬価:High
SGLT2阻害薬
効果:Intermediate
低血糖リスク:Low
体重:Loss
副作用:生殖泌尿器感染、脱水
薬価:High
低血糖リスク:Low
体重:Loss
副作用:生殖泌尿器感染、脱水
薬価:High
GLP1アゴニスト
効果:High
低血糖リスク:Low
体重:Loss
副作用:胃腸症状
薬価:High
低血糖リスク:Low
体重:Loss
副作用:胃腸症状
薬価:High
Basal insulin
効果:Highest
低血糖リスク:High
体重:Gain
副作用:低血糖
薬価:Variable
低血糖リスク:High
体重:Gain
副作用:低血糖
薬価:Variable
さらに、Empagliflozinについては同じ号でEMPA−REG OUTCOMEスタディ(MDRD eGFR 30ml/min/1.73m2以上)のpost hoc解析で腎症進行を抑制すると発表された(DOI: 10.1056/NEJMoa1515920)。具体的には顕性アルブミン尿への進行、eGFRの低下、透析導入など。興味深いのは介入群でeGFRがスタディ数カ月以内に一度3-4ml/min/1.73m2さがりそのあと維持されることだ。最初は腎血流低下を反映し、以後は未知の腎保護機序が効いているのだろうか。
EMPA−REG OUTCOMEは日本も参加したスタディだ。また新しいためか同じクラスのなかではまだAKI・PADの嫌疑がかかっていないから、Empagliflozinは売り時かもしれない。Liraglutideも日本で認可されているが、LEADERスタディに日本は参加していない(アジアでは中国、台湾、韓国、インドなどが参加している)。SecretogogueのなかではDPP4阻害薬にくらべてシェアの小さいGLP1アゴニストだが、LEADERスタディを受けて日本でもLEADER-Jみたいなのが組まれるかもしれない。なおLiraglutideは腎機能低下例に禁忌ではない(慎重投与)だからLEADERの除外基準にもeGFRは入っていないが、心血管保護が有意にみられたのはeGFRが30−60ml/min/1.73m2の群だった。