で、何を今更という気もするがヨーロッパ各国の透析患者コホートを炎症(CRP 1mg/dl以上 and/or Alb 3.5g/dl以下)の要素で分け3年フォローすると炎症群にobesity paradoxがみられ非炎症群ではobesity paradoxが消えた(JASN 2016 27 1479)。いままで調べられていなかったのだろうか。
MICSの指標として、一般的なSGA(subject global assessment)と透析患者用のDMS(dialysis malnutrition score)を参照した10項目30点満点のMIS(malnutrition inflammation score)がつくられた(AJKD 2001 38 1251)。その後validateされ(AJKD 2009 53 298)MISはいまでもスタンダードとされているので簡単にあげると(カッコ内は順に0点、1点、2点、3点)、
①体重減少
(3−6ヶ月に0.5kg以内、1kg以内、体重5%以内、体重5%以上)
②食事摂取
(変化なし、軽度低下、中等度低下〜流動食、カロリー不足〜飢餓)
③消化器症状
(なし、食思不振〜悪心、たまの嘔吐〜中等度症状、頻回の下痢や嘔吐・重度の食思不振)
④身体機能
(異常なし、たまの歩行障害〜頻回のだるさ、ADL半介助、ADLほぼ介助)
⑤合併症・透析年数
(合併症なし+透析1年以下、MCC*以外の軽度合併症または透析1−4年、MCC1個ないし中等の合併症または透析4年以上、MCC2個以上ないし重度合併症)
*major comorbid conditions:重度心不全、重症AIDS、重症冠動脈疾患、中等〜重症COPD、重度神経合併症、転移がん、化学療法後
⑥脂肪減少←脂肪貯蔵量、目の下・三頭筋・二頭筋・胸部の皮下脂肪
(正常、軽度、中等度、重度)
⑦筋肉消耗←こめかみ・鎖骨まわり・肩甲骨まわり・肋間・四頭筋・膝まわり・手の骨間筋
(正常、軽度、中等度、重度)
⑧BMI
(20kg/m2以上、18以上、16以上、16未満)
⑨アルブミン
(4g/dl以上、3.5以上、3以上、3未満)
⑩TIBC
(250mg/dl以上、200以上、150以上、150未満)
このときすでにCRP(ただし10ng/ml以上の増加だから高感度か)も入れてはどうかという議論があったが、アルブミンに換えていれるよりはよい、とか11個にしても変わらない、いう話でたとえばTIBCと換えるという話はなかった(というのも、TIBCのほうが先に研究されていたから;AJKD 1998 31 263)。
ところでMISはSGAをひきずっているので脂肪減少や筋肉消耗の評価に少しの経験を要するし、10項目は多い。それで簡便なものはないかと日本の医師と栄養学の研究者の先生方がお調べになって(Am J Clin Nutr 2008 87 106)、フランスうまれのGNRI(geriatric nutritional risk index)が透析患者でMISによく相関するとわかった。これは体重(透析後体重すなわちDW)と理想体重(BMI 22で計算)とアルブミンしか使わない簡便な下式で、体重と理想体重の比が1以上のときは1とする。GNRIは91.2以下で低栄養をよくスクリーニングする。
1.489 x albumin (g/dl) + 41.7 x 体重 / 理想体重
これを出すには本当は透析後Crと次回透析前Crがほしいのだが、その手間を省くためクレアチニンのKt/Vを応用したりして計算式を追加している。また内因性クレアチニン産生をみるためには外因性クレアチニン(食事由来)の分を差し引く必要があり、それにnPCR(normalized protein catabolic ratio;本来はBUNをもとにたんぱく摂取量を推定するもの)を応用した式を使う。Logがたくさん出てきたりかなり複雑な式だから、ソフトを導入するなど積極的に取り組んでいる施設で用いられている印象だ。