2016/06/01

AKI and nutritional support

 AKIの栄養管理についてはESPENが2009、ASPENが2010、KDIGOが2012年にガイドラインを出しているがどれも予後にもっとも関わるprotein energy wastingを予防することを主眼に置いている。KDIGOでは透析を遅らせるためにたんぱく制限することを推奨しない、異化亢進のないRRT依存のないAKIでたんぱく質0.8g/kg/d、RRT依存のAKIで1.0-1.5g/kg/d、異化亢進があるまたはCRRT依存のAKIでは1.7g/kg/dまで、中心静脈栄養よりは経腸栄養を、と書いてある。
 AKIは多臓器不全の一部として起こることが多く、またAKIにkidney-centered systemic inflammatory syndromeとしての面があって(図、KI 2012 81 942)、いずれにしても消耗疾患なのでカロリーは十分に投与したほうが良いとされる(20以上、25−30以下kcal/kg/d)。またCRRTではアミノ酸やたんぱく質が失われることも考慮する。AKIの場合体液バランスの変動がはげしくどの体重を使うかでoverfeeding、underfeedingになる可能性があるが、慣例では家族にきいた「普段の体重」または(肥満の場合)理想体重を用いる。
 ただしAKIがheterogeneityのつよい疾患なこともありスタディがほとんどないので、エビデンスレベルは弱い。たんぱく質摂取量の推奨は異化を推定したデータから来ている。ただし実際にはこれでは窒素バランスはプラスにならないらしい(2.5g/kg/d近くのたんぱく質が必要)。Prescribed doseとreceived doseに差があるのはよくある話だが、そこまでたんぱく質を投与すれば尿毒症や体液過剰の悪化がおこるかもしれない。最初からもりもり栄養をあげて問題になればearly RRTをしたほうが予後がいいのかどうかは、スタディがないのでわからない。Early RRTについては、最近の(JAMA 2016 315 2190)も含めて数限りなくスタディがでているが。
 中心静脈栄養より経腸栄養が予後良好というのはわかるが、必要な栄養が経腸でとれないなら、透析中の静脈栄養などで補充してもよいとこの分野でレビューを多く書く(Curr Opin Clin Nutr Metab Care 2013 16 217、J Ren Nutr 2013 23 255)Dr. Enrico Fiaccadoriは言い、根拠のひとつにTICACOSスタディ(Intensive Care Med 2011 37 601)を挙げている。これは内科・外科・外傷ICUで経腸・中心静脈栄養を使って2000kcal/d・76g/kg/dたんぱく質を維持したら1400kcal/d・53g/kg/dタンパク質の群に比較してhospital mortalityが良かったという一施設スタディだが、入院期間や挿管期間は悪かった。AKI発症に有意差はなかった。
 AKIが全身炎症疾患という側面から、抗炎症の栄養素についての研究もされている。Glutamineは免疫細胞や増殖の速い細胞の基質で、heat-shock protein 70やglutathione合成を通じてHigh Mobility Group Box-1 related mediatorsのdown-regulationや酸化ストレスの緩和によって実験動物では腎保護効果をもたらすと言われている。ICU患者において0.2g/kg/d相当のglutamineが感染合併症を減らすかもしれないということで、透析でアミノ酸が失われるAKIではさらに投与するとよいかもしれない(ただし少量ではあるが尿毒素になる)。同様にω−3脂肪酸も酸化ストレスを緩和するとされている。