WAKはminiaturized, dual-channel, battery-operated, pulsatile pumpでカテーテルからの脱送血と透析液の回転を行い(拍動があるほうがconvectionの効率が上がるらしい)、透析液は上述のカラムで再生して何度も使い、カラムは1日1回交換する。抗凝固にはヘパリンを使う。いまはまだ10lbs(4.5kg)くらいの機材を腰に巻き付けなければならない(図)が、LVADも昔は大きかったけれどHeart Mate IITMくらいに進化するとだいぶんコンパクトになったからそれは技術の問題だ。
今回はproof of concept研究だから理論の実用化が可能かどうかだが、n=6(7人目は回路異常でCO2気泡が血中に漏れて8時間で中止になった)の結果をみると1−2人は24時間一定して血液流量、透析液流量、各種溶質クリアランスを維持できた。他は16時間たつとだんだんへたってきて、またバッテリーが切れたり回路がキンクしたりいろいろout of whackになってしまったので改良しなければならない。あと長く使えばカテーテル、透析液、回路がエンドトキシンや細菌で汚れてくるだろうからそれも解決しなければならない。
このような体外型人工腎臓は持ち運びが面倒(それでも被験者は透析より快適で、人にも勧めるとアンケートに回答しているが)だし汚れるが、何かあったらすぐ交換修理できる。それに対して体内埋込み式の腎アシストデバイス(iRAD)を開発しているのがUCSFを中心とするグループだ。体外式RADは透析膜内腔に尿細管細胞を植えたもので、CRRTにタンデムで付けるとICUの生存率があがるというスタディがある(JASN 2008 19 1034)。
埋込み式RADは箱型をしていて、移植腎のように腸骨動静脈につなげ、「尿」をつないだ膀胱に捨てる(図)。箱にはポンプなしで原尿をろ過できるヘモフィルターユニットと、再吸収能をもつ尿細管細胞のバイオリアクターユニットが入っていて、フィルターはmicroelectromechanical systemというナノテクノロジーで作ったシリコンナノポア膜を用いる。ファウリング(膜表面に汚物が付着すること)を防ぐためにslippery liquid-infused porous surfaces(SLIPS)というコーティング技術を用いている(これはpitcher plant、食虫植物ウツボカズラのポット内がツルツルなのを参考にしている)。こちらもproof of conceptは終わって臨床応用前の技術改良をしているらしい。
なおSLIPSはほとんどどんなものでも寄せ付けないツルツルコーティング技術だが、これを開発したのはハーバードのトランスレーショナル研究機関Wyss Institute(ヴィースと発音するらしい)だそうで、彼らがさらに進化したTethered–Liquid Perfluorocarbon surface(TLP;テフロンの応用)を開発したと2014年に発表した。これを透析やECMOに使えばバイオファウリングだけでなく回路内凝固も防げ抗凝固薬も必要なくなるかもしれない、というがその後どうなったか気になる。あまり血液をrepelし過ぎると疎水性が強くて透析には困るかもしれない(インターフェイスとの相互作用が必要ないカテーテルとかチュービング、シリンジなどにはいいかもしれない)。
もうひとつのHVSだが、この会社はCreatiVascという名前からわかるようにHVSだけでなくFistulaFinderTMというシャント同定と固定・穿刺を容易にするプラスチックのデバイスを開発したりブラッドアクセスについての研究をしている。Hemoaccess Valve SystemTMは人工血管を透析使用時に血液が流れ、使わない時には血液が流れない(生食でフラッシュして充填できる)ようにするシステムらしい(図)。人工血管による血行動態の変化を少なくし、ひいては人工血管内の凝固閉塞を予防することを意図しているそうだ。