2011/07/23

塩の換算

 いまだに混乱するのが食塩とナトリウムの関係だ。食品の栄養成分表にはたいていナトリウムがmg表示で記されているが、私たちはたいてい体内のナトリウムをmEqで考え、食品の場合は食塩何gで考えるので、単位がバラバラだ。

 分かりやすい基準は、生理食塩水1Lに9gの食塩が入っており、それはNa 154mEq、Cl 154mEqだということだ。そして原子量の違いから、9グラムの食塩は約4グラムのNaと約5グラムのClからなる。これで換算できるはずだ。

 たとえば醤油大さじ1杯には940mgのNaが含まれている。これは940 x 9/4 = 約2グラムの食塩に相当し、2 x 154/9 = 約36mEqのNaとClに相当する。また生理食塩水を125ml/hで輔液した場合、一日に0.125 x 24 x 9 = 27グラムもの食塩を身体に入れることになる。


ポテトトングで塩分摂取


[2019年1月追記]カルシウムのmEq/l、mmol/l、mg/dlの変換も追加する。カルシウムの原子量は40、そしてイオンは2価イオンだ。だから計算しやすい10mg/dl(100mg/l)は、2.5mmol/l。そして1mmolのカルシウムは2mEq分荷電しているので、2.5mmol/lは5mEq/lになる。

 ただし、「イオン化カルシウム」は血中総カルシウムの約半分。実験では39.5%が蛋白結合、46.9%がイオン化し、13.6%がdiffusible calcium complexes(その間の、細胞膜などを透過できる状態)だった(JCI 1970 49 318)。それで、血中総Caが10mg/dlの患者さんでイオン化カルシウムだけをはかると、2.5の半分で1.25mmol/l程度になる。

 なお、血中カルシウムの一部が半透膜を透過しない(蛋白結合しているからだが)ことを1911年に初めて発表した論文(Biochem Z 1911 31 336)の第二著者、D. Takahashi博士は日本人と思われる。

 東大柏キャンパス図書館まで原著論文を閲覧しに行った筆者だが、「D」は原著にもイニシャルしか書かれていなかった・・。東京大学農芸化学科発酵学教室・第二代教授の高橋禎造博士のことかとも推察したが、確証はない。


頭文字Dを探して


[2020年6月4日追記]マグネシウムは原子量24、2価イオンであるから、1mmol/lは2mEq/l(2倍)、2.4mg/dl(24÷10の2.4倍)となる。したがって、SI単位系の血中Mg正常値である0.7-1.0mmol/lは、1.7-2.4mg/dlだ。

 また、混乱しやすい各種Mg製剤の単位も、いちど整理する。

 MgSO4・7水和物の分子量は約240。よって硫酸マグネシウム製剤1グラムには約4mmol(1000÷240)、8mEq(2倍)、100mg(24倍)のマグネシウムが含まれる。逆に、Mg20mEq含有のMgSO4製剤1アンプルは、2.5グラム(20÷8)に相当する。

 MgOの分子量は約40。よって酸化マグネシウム製剤1グラムには約25mmol、50mEq(2倍)、600mg(24倍)のマグネシウムが含まれる。ただし、剤形や腸の状態などによって吸収率に大きな差がでることに注意が必要だ(Nutrients 2019 11 1663)。

 ささいなことだが、単位を間違えると事故の元である。