2011/07/23

membranous nephropathy

 レクチャで膜性腎症の話になった。この病気は謎の抗原と、それに対する抗体の複合体が膜(基底膜)にひっつく病気なのであるが、その順番は、①抗原と抗体がくっついたものが何処からかやって来る、②抗原がもともと膜にあって、それに抗体がひっつく、③まず抗原がどこからかやってきて、次に抗体がやってくる、というように諸説あるらしい。

 現在では③が有力(とくに二次性の膜性腎症は)らしいが、こんなものどうやって証明するのかまったく謎だ。まるで昔話で桃太郎と一緒に桃が流れ来たのか、桃太郎は最初からいてそれから桃が来たのか、みたいな話だ。ともあれ一旦これらがひっつくと、MAC(membrane-attacking complex)という補体C5b-9が動き出して基底膜や足突起を破壊し始める。

 抗原については定かではないが、二年前には、M-type phospholipase A2 receptor (PLA2R)とIgG4が関連しているという報告がNew England Journal of Medicineに載った。そして先月、bovine albumin(ウシ由来のタンパク質)が子供の膜性腎症患者で有意に高かったという報告がNew England Journal of Medicineに載った(NEJM 2011 364 2101)。

 「bovine albuminなんて、牛乳がいけないってこと?」と思うのも無理はない。それで論文を読んでみた。大学に入るおかげで家からでも大学図書館のウェブサイトにログインして論文を入手できて便利だ。どうやら筆者は、疫学研究で食品を色々調べたら牛乳や牛肉(エキスなども含む)が怪しいかもということになりこの研究を始めたらしい。

 いずれにしても、これは原発性膜性腎症の抗原についてであり、しかも子供の話だ(大人でもこの抗原とそれに対する抗体はみられたが、コントロールと比べての有意差がでなかった)。一般的には膜性腎症はいまだ感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患、毒素や薬物といったものに惹起された免疫反応が機序と考えられている。