2011/07/23

Na+/H+ exchanger

 回腸導管(膀胱を摘出した患者さんのために、膀胱の代わりに尿管を回腸の一部につないだもの)の患者さんで尿電解質は役に立つか。回腸導管のある人は、回腸のCl-/HCO3- exchangerのためにnon-anion gap acidosisをきたすことが知られている。しかし、それと別に回腸にはNa+/H+ exchangerもあるのだという。だとすると尿Naは回腸導管内で変化するだろうか?
 同じexchangerは近位尿細管にもあるので、まずこれについて考えよう。これはexchangerなので濃度勾配によりイオンが流れる(勾配に逆らって汲みだすポンプではない)。尿細管内腔はNa濃度が高く、尿細管細胞内は低いので自然とNaが尿細管細胞に流れ、交換にH+が内腔に流れる仕組みだ(そのあと細胞から間質にNa+はポンプによって汲みだされる)。
 では近位尿細管を通過した原尿のNa+濃度は、通過前と比べて低いかというと、そんなことはない。それはなぜかというと、近位尿細管は非常にleakyで濃度勾配を維持する様に設計されていないからだ。再吸収されたNa+はtight junction(名ばかりでダダ漏れ)を通じていくらでも戻ることができるという。ただ別の本では、「Na+と一緒に水が透過して再吸収されるために等調性再吸収が起こる」と書かれている。
 Anyway、近位尿細管では尿は希釈も濃縮もされないということだ。それならば、尿管から回腸導管まで運ばれた尿のNa+濃度は、導管を通る間に希釈も濃縮もされず維持されるように思われる。しかし、先生が言うには「回腸導管の患者さんでは、尿電解質は全く予想できず解釈は不可能」という。本当のところはどうなのか、誰かが研究しているだろうから調べてみよう。