血液腫瘍の患者さんの腎機能低下を診たときに、腫瘍融解症候群(tumor lysis syndrome)と名づけるのはたやすいが、そこでキチンと病態を鑑定するのが腎臓内科の役目だ。尿酸腎症(urate nephropathy)、nephrocalcinosis(リンとカルシウムの濃度積、biproductが上がり腎に結晶が沈着する)、腫瘍自体の浸潤、リンパ節腫大による尿管閉塞など、考えることはたくさんある。
いまの先生は、たとえ患者さんの尿酸値が13mg/dlと高値であっても「尿に尿酸結晶が見られないから確実に(尿酸腎症と)は言えない」と慎重だ。それで腎臓超音波検査をすることになった。さておき尿酸腎症は単なる尿酸結晶の沈着ではなく、それにより惹起される炎症反応による間質性腎炎と学んだ。
さらに、この患者さんにステロイドが投与されるうち血清リン濃度が上昇した時にも、単に「ステロイドでblastが融けたんでしょう」とは考えない。言われてみると確かに血中のblastの数は減っていない(どころか増えている)。結局ステロイドによる食欲増進によりリン摂取が(低下した腎機能に比して)過多になったことが原因とわかり、phosphate binderを開始することにした。
と、これを議論している同じ日にべつのコンサルトが入ってきて、やはり腫瘍をもつ患者さんの腎不全という。こちらは尿に大量のurate crystalが見られ、血清尿酸濃度を調べると19mg/dlと極めて高値で尿酸腎症の診断に至った。rasburicase(urate oxydate enzyme)で立ちどころに血清尿酸値はほぼゼロになり、尿酸に伴う炎症反応も早期に消退するとよいが。