腎臓内科を始めてからリン(phosphorus)に注意を払うようになった。というのも腎臓が悪くなるとリンが排泄できなくなるからだ。リンはDNA、RNAなどの骨格に含まれるほか、細胞膜(リン脂質)の主成分でもあり、いたるところに存在している。だからリンは大体の食品に含まれているわけだが、こちらでは牛乳やチーズなどの乳製品をとくに避けるよう指導している。マメ類にも多いが、いまの先生によれば野菜類に含まれるリンは体内に吸収されないらしい。
体内におけるリンの代謝とその制御はとても複雑で、正直腎臓内科を選ぶときに「こんなの判るようになるのかな」と心配したほどだが、少しずつ理解している。低リン血症で入院になった患者さんがいて、カルシウムもPTHもVitamin Dも何も問題ないのにリン濃度だけが補っても補っても下がる。こういう場合は、腎臓がリンをどんどん捨てているわけで、そのシグナルを送っているのはFGF-23を最も考えるらしい。まれだがFGF-23 secreting tumorと言うのがあるそうだ。