SIADH(水分再吸収を促進するホルモンが過剰になる病気)で尿酸値が下がることは知っていたが、その機序は知らなかった。先生によれば、近位尿細管でvasopressin receptor (V1R)を介して尿酸排泄が増えるためだという。尿酸専用のトランスポーターがあるらしい。
なぜADH分泌が増えると尿酸排泄が増えるのだろうか。ADHが成し遂げたい目標はただ一つ、水分を体内にとどめることである。しかし腎臓には尿素を排泄するという義務がある。それでADHは尿を限界まで濃縮して水分の喪失を抑えようとする(逆に、ADHが病的に過剰だと水分が体内にたまってしまい、低ナトリウム血症などが起こる)。
ここで考えられるのは、尿酸を排泄することで、相対的に尿素の量が減り尿量を減らせるのではないかという仮説だ。たとえば一日尿素排泄が500mOsmとすると、最大濃縮(1200mOsm/kg)しても500/1200 = 400mLの尿が必要だ。これが尿酸排泄が増えて尿素が300mOsmになれば、300/1200 = 250mLの尿さえあればよく、150mLの水が節約できる。