各論で新たに学んだことを忘れぬように書いておく。各論一、高カルシウム尿(hypercalciuria、男性>300mg/d、女性>250mg/d)。腸管が悪い(過吸収)のか、腎臓が悪いのか(Ca wasting)などで分類しようと長いこと試みられてきたが、最近はあまり分類にはこだわらないようになったという(NEJM 2010 363 954)。
高カルシウム尿を悪化させるものに1,25-OH vitamin D、高ナトリウム摂取、グルコース大量摂取、animal protein(酸の摂取)などがある。1,25-OH vitamin Dに関しては、尿細管でのリン再吸収障害→低リン血症→1,25-OH vitamin D高値→腸管からのCa/P吸収亢進→idiopathic hypercalciuriaと考えられており、尿細管タンパク質の遺伝子異常(NPT2a、NPT2c、PDZK1、NHERF1)が見つかっている(NEJM 2008 359 1171)。
各論二、高シュウ酸尿(hyperoxaluria、>40mg/d)。enteric hyperoxaluriaについては前にも学んだが、Oxalobacter formigenesがいかにシュウ酸をエネルギー源にしているかが興味深かった。この細菌はoxalateを取りこんで代わりにformate(蟻酸)を放出するが、その際に差引きH+が一個細胞外にでる。これを繰り返すうちに細胞膜内外に電位差ができ、それにより生じるproton motive forceをATPに変換しているという。
高シュウ酸尿の改善に高カルシウムな食事がよいというのは良く知られているが、この分野の第一人者はハーバード大のDr. Curhanだ(最初の論文はNEJM 1993 328 833)。カルシウムは食事から摂取するのがよく、600mg/d以上で効果が出始める。しかしカルシウム製剤では却って結石リスクが上がるらしい(Women's Health Initiative、NEJM 2006 354 1102)。
各論三、低クエン酸尿(hypocitraturia、男性>450mg/d、女性>550mg/d)。先生はまず「クエン酸はどこで再吸収される?(近位尿細管)」と聞き、「低クエン酸尿は近位尿細管細胞内が酸性になる状況で起こる」と言う。すなわち①アシドーシス、②低カリウム血症(Kが細胞から出てHが細胞に入ってくるから)、③動物タンパクの大量摂取(ヒトの酸摂取のほとんどは動物タンパク由来だから)。
各論四、高尿酸尿(hyperuricosuria、男性>800mg/d、女性>750mg/d)。urate + H ⇔ uric acid、電離定数pKaは5.5だから、酸性尿でこの電離平衡は右に傾き(水溶性の低い)尿酸が析出しやすくなる。前述のように高尿酸尿がある人は尿酸が核となってシュウ酸カルシウム結石の形成を助けるので尿をアルカリ性にしたり(クエン酸カリウムを高用量、20-30mEq 2x/d)、尿酸生成を抑えたり(allopurinol)する必要がある。
おまけの各論五、シスチン結石。この病気の問題は近位尿細管におけるアミノ酸再吸収障害で、さまざまなアミノ酸が尿中に漏れるが特にシステインは水溶性が低いので石になる。治療は水分摂取と尿pHをアルカリ性にするのが基本だが、システイン二分子のdisulfilum結合を解くtioproninも用いられる。また通例struviteと言っているurea-splitting organismによる石の化学式はMgNH4PO4。