クロールに関しては、血中クロールの記事を以前に書いている。
しかし、尿のクロールに関しては注目しているだろうか??
多くの読者は首を横に振ると思う。この文章から少しでも注目してもらえれば嬉しい。
UCLやFECLなどはNaと同様に有効循環血液量の推測の間接的なマーカーとして用いられる。UNaとUCLを共に用いることは、特に酸塩基平衡異常を伴う場合には有効循環血液量の推測に有用とされている(AJM 2017)。
一番多く知られているのが、尿中Clは代謝性アルカローシスの際にCl含有の輸液に対して反応性かどうかを判断する材料となり、それによって原因の推測ができるツールである。
−尿中Cl<15〜20mEq/Lであれば輸液反応性で、嘔吐、胃液吸引などを考える。上記記載の抗生物質使用も頭の片隅には置いていただきたい。
−尿中Cl>15〜20mEq/Lであれば輸液反応不良で、Bartter症候群やGitelman症候群やミネラルコルチコイドが上がる病態、甘草などの使用を考える。
今度は、基本的には尿中Naと尿中Clは同じ動きをするが、例外を見ていこう。
・例えば、尿中Naが多く尿中Cl低下があり、循環血液量減少がある場合にはどう考えるだろうか?
→尿細管で再吸収できない陰イオンが存在することを考える。
この陰イオンが何かであるが、尿中pHを確認する。
→尿中pHが7や8であれば再吸収されていない陰イオンは重炭酸イオンと推測され、大量嘔吐や胃管チューブからの胃液の大量排液で、まず水素イオン喪失が生じる。また、NaHCO3が大量に濾過し近位尿細管での再吸収能を超え、遠位尿細管に到達する。
遠位尿細管で、胃液喪失で循環血漿量が低下していることでアルドステロンが働き、Na再吸収が生じ、K尿中排泄が生じる。そのため、低K血症を生じる。尿中ClはNaと同様に動き再吸収されるため尿中Clは低下する(下表C)。尿中Naは再吸収できないNaHCO3の形で排泄され増加する。このようなケースでは、尿中Na/Cl>1.6となる。
→尿中pH<6であれば、他の再吸収できない陰イオンの存在を考える。ketoanion、チカシリンクラブラン酸、ピペラシリンタゾバクタム、カルベニシリン二ナトリウムなどの抗生物質などを考える。循環血液量が減少している場合に、これらの薬物を投与すると再吸収できない陰イオンとして働き、Naとくっついて遠位尿細管に到達する。循環血液量が低下しており、アルドステロンが働き、Kの尿中排泄が増加する。そして、間在細胞で水素イオンの排泄が生じ尿中pHは低下する。この場合も低K血症を生じる(下表D)。
CJASN 2019 |
では、尿中Clが高くて尿中Naが低い逆の場合はどうか?
→これは、下痢の場面で見かける場合が多い。下痢によって、重炭酸イオンやカリウムが排泄され循環血液量減少、代謝性アシドーシス、低カリウム血症になる。アシデミアになるため尿は陽イオンを排出しようとして、アンモニウムイオンを排泄する。それと同時に尿中Clも排泄され、尿中Clは高くなるという現象が生じる。尿中Naは循環血液量維持のためになるべく再吸収され少なくなる。この場合は、尿中Na/Cl<0.76となっていることが多い。
少し、細かな話で難しくなってしまったかもであるが少しでも理解の助けになれば嬉しい。