「MGRSについて書いてみたので、見てくれませんか?」
名前の通り複数のブロガーが参加している本ブログであるが、ブロガーどうしが会うことは稀で、記載中に内容について話し合うこともあまりない。しかし、この分野について書くなら、おそらく筆者も相談しただろう。
もしかしたら読者のなかにも、MGRS(monoclonal gammopathy of renal significance)という概念に苦手意識を持つ方がおられるかもしれない。筆者の分析では、その原因は少なくとも4つある。
1つ目には、歴史が浅い。MGRSという概念がIKMG(international kidney and monoclonal gammopathy research group)によって提唱されたのは、2012年(Blood 2012 130 4292)。まだ10年も経っていない。
2つ目は、腎病理と血液内科が中心になっている。MRGS関連腎症のなかには、腎病理で特殊な染色をしたり、電子顕微鏡を使わなければ診断がつきにくいものが多い。また、モノクローナルな免疫グロブリンをどこでどんな細胞のクローンが作っているか(そして、それらをどうやって治療するか)は、血液内科の領域だ。
3つ目には、欧米が中心になっている。IgG4関連疾患が正式に命名されたのも2012年(Modern Rheumatology 2012 22 1)だが、こちらは日本が「本場」であり、詳しい方も周りに多いだろう。すでに難病指定され、日本語の診断手引きや治療規約も充実している。
そして4つ目は、発音しにくい。MGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)が「エムガス」と呼びやすいのに対し、MGRSはそのまま読むしかない(筆者は、MRGSとつづりを間違えることもしばしばだ!)。米国では2018年に破産したTOYS"Я"USのように、「エムガラス」と発音するのも一案ではあるが(下図は、TOYSRUSのロゴ・フォントを使って筆者が作成)。
そんなMGRSの苦手意識を払拭するには、どうしたらいいか?
やはり、一から学ぶに限る(写真は、筆者が研修医時代に指導医に言われた「馬に乗れるようになるには、馬に乗るのが一番」をイメージしたもの)。
幸い、MGRS提唱者であるIKMGによる文献は診断(Nat Rev Nephrol 2019 15 45)・治療(Blood 2013 122 3583)ともにオープン・アクセスだ。そこで、これらを参照しながら、ブロガーどうしコラボして、MGRSについてまとめてみることにした。
といっても、「僕たちの」まとめが全てだと言うつもりは毛頭ない。さらに知りたい方は、すでに出されている:
『多発性骨髄腫の腎病変とMGRS』
2016年の日本内科学会誌の特集
(Nihon Naika Gakkai Zasshi 2017 5 947)
『パラプロテイン関連腎症:新しい疾患概念MGRSと関連疾患像をとらえる』
2018年のHOSPITALIST誌
(HOSPITALIST 2018 腎疾患2 コラム11)
などの極めて秀逸なレビューも、ぜひご参照いただきたい。
では稿を改めて、まずMGRSという概念が生まれた歴史を解説する。そしてそのあと定義、分類、病理像、診断、治療なども概述する予定だ。乞うご期待!