・ACE-I /ARB
この薬に関してはCKD患者の高血圧治療において主力の薬である。
既知のようにACE-IはAngiotensin Ⅰ→Angiotensin Ⅱへの変換を阻害し、ARBはAngiotensin Ⅱ受容体阻害としてはたらく。Angiotensin Ⅱは血管収縮作用がある。
最終的にはAldosteron分泌を減らし末梢血管抵抗の減少をもたらし、収縮期血圧低下に効果がある。
また、腎臓にとってAngiotensin Ⅱの阻害が糸球体輸出細動脈の拡張をもたらし糸球体内圧を低下させ、腎臓に保護的に働いている。
これらの薬は、
・蛋白尿を伴うCKD患者(AJKD 2007)
・HFrEF(Heart Failure with reduction Ejection Fraction)、急性心筋梗塞患者(NEJM 2003)
に対して確立している治療であり重要な薬となっている。
腎臓の話題を中心に進めるが、下記のことは疑問に多く生じるのではないか。
・最新の状況としてはどのくらい推奨されているか?
・ACE-IとARBの両者を一緒に使うのはどうなのか?
・末期腎不全の患者には使用していいのか?
・最新の状況としてどれくらい推奨されているのか?
JNC8(Joint National Committee 8):腎予後改善の点で全てのCKD患者における高血圧治療で第一選択、もしくは第二選択以降の追加薬剤としてACE-IやARBの使用を推奨(JAMA 2014)。
AHA/ACC(American Heart Association and American College of Cardiology):CKD stage3以降、もしくはCKD stage Ⅰ・Ⅱでアルブミン尿が300mg/day以上 or 300mg/g Cre以上の場合には使用が推奨されている(JACC 2018:下図)。
JACC 2018より引用 |
両者の適応でCKD stageⅠ、Ⅱの時の蛋白尿の部分での推奨の違いがあるが、これはエビデンスが様々あり、不確実な部分も多いため異なっている。
・ACE-IとARBの両者を一緒に使うのはどうなのか?
一時期これは話題になったが、現在は高血圧治療においての推奨はされていない。この根拠としては、Veterans Affairs Nephropathy in Diabetes Trial(NEJM 2014)の結果がある。この研究では糖尿病性腎症患者に対しての両薬剤の併用により副作用リスク(高カリウム血症、AKI)の増加が認められ早期に中断された。ここに関しては、今後の研究も待たれるところである。
・末期腎不全の患者には使用していいのか?
末期腎不全患者に対するACE-IやARBの投与はメタアナリシスの結果で、左心室の拡張を減少させたことが示されている。しかし、統計学的に心血管・非心血管死亡を明確に減らしたということは言えてはない(CJASN 2010)。
血液透析患者に対して薬剤の使用をする際に、ACE-Iは透析で抜ける薬が多いことは知っておく必要があり、透析後に内服・週3回内服で中等度高血圧の改善に寄与している報告も多い。コンプライアンスの点で、ACE-Iを透析が終了し医療従事者が目の前で見ているときに内服をするというのも一つの選択肢ではある。下図はNKF Guideleineの表。ARBと比較してACE-Iの透析性を理解することができる。
NKF Guidelineより引用 |
今回はACE-I/ARBに関してお話しした。
次回以降に他の降圧薬についても触れていってみる。続く。