M 「とても大事な疑問ですね。やはり、実際に机上の話だけでは臨床の応用はできないので、今日はしっかりと実践にもつながる事を含めて話しましょう!」
★腎嚢胞穿刺吸引について
前提として、腎嚢胞穿刺吸引によって腎機能が保たれたりするエビデンスは現時点では認めていない。そのため、無症状の患者に腎機能を良くするために穿刺吸引を行う事はすすめられない。
基本的に適応になるのは、症候性(嚢胞に伴う慢性疼痛。腹部圧迫症状)の改善のための一つの手段として使用される(J Endo 2013)。
海外のものでは、吸引ドレナージにはなるが感染性嚢胞で抗菌薬治療に奏功しない場合には適応となっている
下記はADPKD2014のガイドラインにある、Flemingらの症候性ADPKDの治療アルゴリズムである。
ADPKD ガイドラインより抜粋 |
エコー下経皮的腎嚢胞穿刺吸引療法が使用されている。
通常の単純嚢胞であれば穿刺して、縮小効果を維持するためにエタノールなどの硬化剤を使用する事が多い。
しかし、ADPKDなどであれば、基本的には全ての嚢胞へのアプローチはできないため安全性を考慮して、疼痛を来たしていると考えられる、1つないし少数の大きな嚢胞をターゲットとして治療する事が多い。
合併症は嚢胞出血・血尿・嚢胞感染・気胸などがあるため、注意する!
★トルバプタンの具体方法
トルバプタンの使用適応
①両側総腎容積が750ml以上
②腎容積増大速度が概ね5%/年以上
では、腎容積に関してはどのように測定するのがいいのか?
検査機械のmodarityは基本はMRIやCTを用いて検索する。測定に関しては下記のように計算をして腎容積をもとめる。
杏林大学ページより引用 |
なので、腎臓の容積をもとめ、年毎の増大速度を計算する。
そこから、年齢・両側総腎容積・腎増大速度/年をもちいて患者の腎機能低下を予測する(下図:大塚製薬資料より)。
大塚製薬資料より引用
大塚製薬資料より引用
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80歳の高齢者に腎予後をのばす事を目標としてトルバプタンの導入をすることは個人的には、適応は無いと考える。
もし、患者さんがトルバプタンの導入をしようと思った場合には原則は入院加療でおこなうべきである。用法・用量に関しては、色々とあるが一例としては、
①1日60mgを2回(朝45mg、夕方15mg)で投与開始。
③最高用量を1日120mg(朝90mg、夕30mg)とし1週間以上の間隔を空けて段階的に増量する。
※最高用量は1日120mgまで
入院中の指導として大事なのは尿量が非常に増えるため、水分補給をしっかりとして頂くことが重要となる。また、肝機能障害の有無に関しては検査をする必要がある。
また、本邦ではADPKDに対するトルバプタンの処方にあたっては、高用量であり大塚製薬のe-learningを受講する必要があり、その受講後にもらえるサムスカカードが重要になる。
(e-learningの受講は担当MRに確認してください。)
また、大事なのは難病申請である。
難病申請を行う事で自己負担の軽減につながる。下図のように所得によってことなるが、自己負担額が3割→2割になり、軽減される。
大塚ホームページより |
単純計算で(1か月を28日とした場合)
3割負担で67200円、2割負担で44800円となる。
そのうえで、上限が下図のようになる。そのため、難病申請は患者負担という意味では非常に重要である。
大塚ホームページより |
T 「ありがとうございます!長々と話していただいてすみませんでした。腎嚢胞の穿刺吸引のこと、ADPKDの周囲の状況などよくわかりました。」
M 「日常の臨床では、患者さんの病態のこと周囲の保険のことの把握も非常に大事です!なので、患者さんの常に視点にたって医療をできるようにしましょう!」