「B型肝炎といえば膜性腎症」と学生時代に教わるだろうが、私は実はその経験がない。溶連菌後の腎炎も典型的なものは経験がない。ワクチンと抗生物質のおかげか、衛生と行政が改善したおかげか(行政の話は、ここでは触れない)。時代とともに病気も変わり、DAAの登場でいずれHCV関連腎症なども診なくなるのだろうか。
そんなB型肝炎だが、まだ問題になる場面がいくつかある。そのひとつはB型肝炎慢性感染の透析患者さんのマネジメントだ(参考文献はJ Trans Int Med 2015 3 93)。B型肝炎はcccDNA(covalently closed circular DNA)が肝細胞の核内に残るので完全には消せないことがおおい。それで、慢性感染HBVの治療閾値はDNA量、ALT値、肝生検所見などで判断する(各地域のガイドラインもまとめた日本のB型肝炎治療ガイドラインはこちら)。
それは透析を受けている受けていないに関わらず一緒だが、透析患者さんではいろいろあってALTが抑制されていることがおおいそうで、通常の閾値がALT正常上限の2倍以上のところを1.5倍にしたり、ALTが正常でも感染による肝障害が疑われるなら肝生検をしたり(安全に行えるならば)、を奨める人もいる(厚労省は透析かどうかにかかわらず31U/l以上としているが)。
いっぽうDNA量については、米国の透析ガイドブックや前掲文献はLog10で4-5を閾値にするのが慣例と記載がある。これについて透析学会の推奨を探しているが、透析と関係ない前掲ガイドラインはLog10で3.3(2000コピー/mm3)以上としている。
というのも、治療の奏効率があまりよくなくて薬の副作用がむしろ問題になるからだ。なので、治療にはさまざまな薬があるが、透析患者さんへの第一選択は逆転写酵素阻害薬ヌクレオシドのエンテカビル(ラミブジン不応がない場合の用量は0.5mg週1回)、耐性があればヌクレオ「チ」ド(ヌクレオシドにリン酸基がついたもの)テノフォビルとしている。
腎臓内科とB型肝炎、もう少し話をつづけます(写真はB型肝炎ウイルスを発見しワクチンを開発した故Baruch Samuel Blumberg先生、wikipedia提供。1976年にノーベル医学生理学賞を受賞されました。冥福をお祈り申し上げます)。