2017年12月10日日曜日

IgA腎症と妊娠

今回、上記話題を挙げたのは外来での会話からである。
自分をT、患者さんをPとする。


P 「IgA腎症治療のステロイド療法も終了し、蛋白尿の悪化も無くて安定しました。先生がステロイド減量後に妊娠許可してくれて、早速なんですけど妊娠しました」


M 「本当ですか!?とてもうれしいです!!おめでとうございます!」


P 「でも、先生。妊娠してIgA腎症ってどうなるんですか?必ず悪くなるんですか?」


M 「そうですね、免疫も関連してますし悪くなる人もいますし、悪くならない人もいます(曖昧な回答。。。)」

自分の中でしっかりとした解釈ができていなかった。患者さんがこれからどういう転帰をたどるにせよ、しっかりと自分のなかの答えをもつようにしなくちゃ。ということで今回の話題である。

ちなみに以前、IgAと妊娠について成立するまでの話を書いた。


今回、AJKD2017にとってもいい論文が載っていた。これをもとに考えてみる。


IgA腎症は世界的に見てももっとも頻度が高い腎症であり、IgA腎症の好発年齢は10代後半から30代前半と言われており、女性であれば妊娠との関連性が非常に高い腎炎である。


妊娠とIgA腎症に関しては報告もまちまちな事が多い。
 ●ある報告では妊娠はIgA腎症の経過を変化させない(AJKD2010AJN2010
 
 ●ある報告では中等度から重度CKDの患者では腎機能低下の進行が非常に早くなる(23%-43%の割合)(NEJM1997


と言われている。


AJKDの論文の詳細は割愛はするが、この研究では413人の患者がenrollされ、そのうち妊娠をした人が104人で妊娠をしなかった人が309人であった。
今回の研究のcharacterは下記になる。





パッと見た感じは違いは意外に妊娠群で治療していない人が多く、ステロイド治療をした人が少なかったという印象である。

患者をCKD別に分けた表が下記になる。
これの印象としては、やはり腎機能悪化している症例ほど、蛋白尿は多く、血圧は軽度髙い傾向にあると感じた。

結果としては
★腎疾患の予後
CKD stage1 or 2:妊娠にともない腎疾患の増悪は見られなかった。

CKD stage3 or 4 :妊娠にともない腎機能の低下がみられた。(eGFR≧60以上の人に比べると数倍以上)

★妊娠・子供への影響
CKD stage3 or 4 :出産に伴う胎児の生存割合が55%程度に低下。

今回の研究ではCKDstage3以降の人数は少ないこと、選択バイアス(フォロー中に妊娠になった人のみ拾っている)、出産のリスクになる蛋白尿の評価が不十分という点はあるが、
IgA腎症でCKD stage1-2程度の人であれば、特に問題を起こす可能性は低いが、
CKD stage3以降の人であれば、腎機能障害や胎児影響などを引き起こす可能性がある。

そのため、しっかりと患者に情報を伝達する事は重要である。

ちなみにCKDはやはり進行とともに妊娠の成功率は悪くなる(下図)。


なので、我々としては腎機能障害をおこさせないように早期介入が非常に重要であることを感じた。

ちなみに最初の患者さんはCKD stage1であり、妊娠もそのまま継続としたし、このようなお話しもしっかりして納得して外来フォローとなっている。

ただ、医師として患者さんの子供ができることは非常にうれしいことで、その日はほっこりとした気分になった。