2017年12月20日水曜日

We're MYRED!(MYREスタディ)

 骨髄腫のcast nephropathyに対してヨーロッパで進行していたHCO-HDのRCTのひとつ(こちらこちらにも言及あり)、MYREの結果がJAMAにでた。もう読んだ方もおおいかもしれないが、結果はなんと?

 立場によっていろんな解釈ができるものだった!

 …そもそもMYREという名前からして、mire(「泥沼にはまる」の意味、写真)に寄せていることが私には疑問だったが。

 とにかく、どうしてこう歯切れ悪く婉曲的なのかをみてみよう。

 スタディは、以前にCKDがなく、骨髄腫で、AKIになり、腎生検でcast nephropathyが確認され、透析適応になった94人の患者(平均68歳、45%が女性)が対象だ。

 患者はランダム化され、それぞれがHCO-HD膜(Gambro社のTheralite®、2.1m2)、通常のhigh-flux膜で10日間に8回の透析を受けた。血液流量は250ml/min以上、透析液流量は500ml/min以上、1回の透析は5時間。Albが2.5g/dl以下のときにはアルブミン補充した。

 骨髄腫に対しては、両者ともボルテゾミブとステロイドのレジメンを受け、反応不良の場合サイクロフォスファミドが追加でき、6ヶ月以降は治療を選べた(腎機能が戻り65歳未満なら幹細胞移植も)。

 結果だが、プライマリ・エンドポイントである3ヶ月後の透析離脱率がHCO-HD群で41%、通常透析群で33%、群間差8%(95%CIは-12%から27%)だった。なので、まあこのスタディで華々しくHCO-HDが広がることは考えにくい。

 ただ、このように力を入れてやったスタディだし、どうして結果がでなかったのか、どういう部分は有効なのかという総括が必要だ。まずはサンプル数の少なさだ。サイズをあげれば有意差が出るかもしれない。またランダム化については、HCO-HD群の透析開始時Cr濃度が通常群よりも低かった点に疑問が残る。

 HCO-HDはfree light chainを十分に減らせたのだろうか?軽鎖濃度の減少率はHCO-HD群のほうが有意に大きい(3回透析後で70%減、対照群は30%減)。しかし、軽鎖濃度50mg/dl以下までさげた患者の割合には有意差が出ず、それぞれ43%と31%だった。

 この数字はプライマリ・エンドポイントのそれと酷似しているので、軽鎖濃度を50mg/dlまで下げれば透析離脱できるのかもしれない。しかしそのためには、すでに化学療法という軽鎖産生を抑える根治的な治療がある。HCO-HDに追加の利益があるのか?

 透析離脱について今回のスタディでは、残念ながら有意差が出なかった。ただ3ヶ月時点の寛解率(部分寛解、「とてもよい」部分寛解、完全寛解)でHCO-HD群で89%、対照群で62%と有意差がでて、17.5ヶ月のフォローアップで生存患者数にも有意差が出た(HCO-HD群で19人、対照群で13人、HR 0.76)。

 この差にHCO-HD群の何が効いているのか、あるいは交絡があるのか(アルブミン輸液が多かったとか)。興味深いところだ。

 十分な根拠がなくても用いられる治療は世の中にたくさんある(注)し、EuLITEスタディの結果もあわせ、HCO-HDも今後の動向に注目だ。



 
 [注]これに関連して、ICUブックの著者マリノ先生はAKI章の冒頭で以下のような言葉を皮肉をこめて書いてもいる。

The inability of hemodialysis to curb the mortality rate in acute renal failure has apparently escaped the notice of the "evidence-based medicine" junkies, who preach that an intervation should be discarded if it does not improve mortality.