2017/12/28

あなたのネフロンを数えましょう 1

 小柳ゆきさんの『あなたのキスを数えましょう』(1999年)では、好きだった相手とのキスを数え、一つ一つを思い出す。釈尊が愛別離苦を四苦八苦のひとつに挙げているように、忘れようとしても、嫌いになって楽になろうとしても、そう簡単に別れの悲しみは消えない。

 だからこその名曲なのだろう。

 同じように、腎臓内科の世界にはネフロンを数えようとする人たちがいる。といっても一個一個数えることはできないので、腎生検をして単位体積の皮質あたり糸球体が何個あるかを数え、造影CTで推定した皮質体積に掛け算して求める。

 そうして得られた腎臓1個あたりのネフロン数は、以下のようになる(NEJM 2017 376 2349の表2より、示したのは平均値)

18-29歳 97万
30-39歳 93万
40-49歳 85万
50-59歳 81万
60-64歳 75万
65-69歳 72万
70-75歳 48万




 数を数えただけで有名雑誌に載るのか?!と思うかもしれないが、さすがに世の中そんなに甘くはない。この論文はシングル・ネフロンGFRについて調べたものであり、さらにその背景には「ネフロン・エンダウメント」という(私の印象では、腎臓内科の裏テーマというか、あまり表に出てこない)概念がある。

 これらについて少し書いてみたい(写真は2004年の"Officially missing you"という曲で知られるカナダR&BシンガーTamia)。