2017/12/30

より安全な腎生検を考えてみる。

 日々感じる疑問のうちの1つを考えてみようと思う。

 このブログを見ている方の中で腎生検を知らない人はいないだろう。腎生検は診断の助けだけでなく腎臓の予後自体も推定できるのではないかと言われている。手段としては大きく分けて、腎臓内科医が行う経皮的生検と外科医に依頼する開放生検がある。
 
 ただ侵襲的な手技であるため、高齢者の場合など、「生検の適応があっても実行はされない。」という状況が起きてしまうため、ジレンマを感じたことがある人も少なからずいるだろう。

 さてそんな腎生検だが、これまで医学生時代から含めていくつかの施設を見てきたが「病院毎にやり方(入院期間、高血圧の管理、抗血小板薬の扱いなど)が異なるのは何故?」と素朴に思っていた。腎生検に関しての解釈などの教科書、レビューなどはたくさんあるが、管理の話に関してはあまり知らないなと思っていた時に出会ったのがこれ(CJASN 2016 11 354)。

 特に面白かったのが、biopsy protocol(筆者たちの考えかもしれないが)、出血、いつ出血が起こるのかの3点である。

1 実施前にCBC、凝固能、Cr、T&Sを行う。
2 薬剤歴は必ず確認し出血リスクを助長するものは本人と確認し調整する。
3 IVラインをとる。
4 超音波ガイド下で16Gで穿刺する。
5 実施後は6時間ベット上安静とする。
6 バイタルは最初の2時間は15分毎、次の4時間は30分毎、その後は時間単位で観察する。
7 腎生検後6から8時間後にCBCを1回評価する。
8 退院前に尿検査を提出し新規の尿潜血がないか確認する。

 腎生検後の出血に関して、出血のリスクをあげる要因として、14Gの穿刺針の使用、Cr>2.0mg/dl、女性、AKI患者、Hb<12g/dlがある。他の報告では40歳以上、SBP>130mmHgなども考えられるようだ。
 
 合併症が起こるタイミングとしては、67%の重大な出血合併症は8時間以内に起こり、24時間以内で91%になるという。ただ10%ほどの24時間以降に発症した人もいるのが悩ましい。

 みなさんの施設ではどうしているだろうか?

 これからも時折、当たり前のテーマを少し深く考えていこうと思う。

 ここで重要なことは、「施設Aはこうだ、施設Bはこうだ、だからダメだ。」という議論ではなく「標準とは何か」を知った上でより安全に腎生検を実施する姿勢だと思う。
 
 全ては患者さんのために

 (写真)とても美しい標本 黒矢印は糸球体