今回は、面白いJournal Clubをする事ができた。おそらくトピックがよかった。また、通常30分のトークを、たまたま他に話す人がいないので内容と時間を増量することができたのもよかった。Academic positionを目指すなら、どこに行こうとも面接とレクチャがセットになっているので、こういうチャンスを逃さずに長いトークの練習をすることが大切だ。
さて今回取り上げた論文は、"Efficacy and Tolerance of Urea Compared with Vaptans for Long-Term Treatment of Patients with SIADH"(CJASN 2012 7 742)だ。ユリア(urea、尿素)もバプタン(vaptan、バソプレシン受容体拮抗薬)もうちの病院では滅多に使わない。とくにユリアはもはや米国ではすたれた診療で、簡単には手に入らない。
慢性で中等度のSIADHに外来でバプタンを処方すれば患者さんに莫大なお金がかかる。それで、利尿剤と水分制限と塩でなんとかやるわけだが、ベルギーのグループは米国では忘れられたユリアを使い続けており、今こそそれを再び世界に問う時期だとこの論文を発表した。CJASNのeditorialまで付いた注目記事だ。
ベルギーのある病院では、バプタン登場とともに慢性SIADHの患者さんをSALT-2などの治験に参加させていたのが、治験が終わると製薬会社が薬をくれなくなり困っていた。そこで、バプタンとユリア、どちらが有効なのか比べてみようと始まったのがこのスタディだ。13人の患者さんに、1年間バプタンを試し、約一週間バプタンを止め、Naレベルが下がってから1年間ユリアを試した。
結果は、基本的にNaの上昇率に差はなかった。バプタン治療は一人が口渇が強すぎてやめてしまったが、ユリアは全員が中止せずに飲み続けた。血中尿素窒素(BUN)は人によって100mg/dlを越えたが、ユリア自体は尿毒物質ではないので何も起こらなかった。ユリア内服中の一人、89歳の男性が肺炎に掛かってNa 155mEq/lになったが、Naは何事もなく下がり、肺炎治療後にユリアの内服を再開した。つづく。